イスラム教徒として初の市長になったサディク・カーンにインタビュー

テキスト:
Time Out Tokyo Editors
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インタビュー:Guy Parsons

2016年5月7日(土)に英国統一地方選が行われ、ロンドン市長には、サディク・カーンが当選した。イスラム教徒の市長が誕生したのは、EU加盟国首都のなかでも初めてのことである。市長選は、12人の候補者のなかから、バス運転手を父に持つ労働党のサディク・カーンと、資産家を父に持つ保守党のザック・ゴールドスミスの一騎打ちとなり、最終的にカーンが選ばれた。タイムアウトロンドンでは、市長選に先立ち、現在ロンドンが抱える住宅問題などについてどう考えているのか、立候補の動機などをインタビューした。

ー現在、家賃の高騰や、数多くの音楽関連の店が閉鎖するなどし、これらが原因で若者が街から離れていっていますが、ロンドンはその本質が失われてきていると思いますか。

簡単に答えれば「イエス」です。ロンドンは世界で最も素晴らしい都市ですが、変化もしており、しかも悪い方向に変わってきていると思います。ロンドンが素晴らしい都市であるのは、昔からの伝統もひとつの要因です。デベロッパーに対して、「ある程度の住宅を建設することは可能だが、その半数が純粋に手の届く価格になるようにしなければならないこと。そして、アートスタジオ、コミュニティーセンター、音楽スポット、そして家庭医制度をより重視してもらいたい」と伝えたいと思っています。そうすることで、ロンドンはコミュニティーを維持することができると考えています。また、ロンドナーがこの街にいる限り、ロンドンがその本質を失うことはないとでしょう。

ー人々に退去してもらったり、音楽スポットを強制的に閉鎖することなく、住宅を建設することは可能でしょうか。また、多額の投資を前にして、実際に何か手を打つことができるのでしょうか。

ロンドンへの投資に「ノー」と言うべきではありません。 私が「ノー」と言いたいのは、住宅を無計画に海外投資家向けに販売することです。デベロッパーには、「優先権はまずロンドナーに」と伝えたいのです。

ー素敵なアイデアですね。実際に、ロンドンにおける賃貸の現実を変えることはできるのでしょうか。

これは大きな問題で、賃貸料金を引き下げる必要があります。まず、ロンドン中に非営利の賃貸住宅エージェントを設立するつもりです。賃借人が希望すれば、3年間の賃借をすることができます。その3年間で、賃貸料金は物価上昇率分しか上がりません。そして、平均的なロンドンの所得の3分の1で借りることのできる「London Living Rent」を設立するつもりです。これは賃貸マーケットの安定化に寄与することができるでしょう。

 ーあなたに対する攻撃の多くは民族性や宗教に基づくものとなっています。これについては驚いていますか。

残念に感じています。私はこの町で生まれ育ちました。その町を見て私が思うのは、誰もが複数のバックグラウンドを持っているということです。私はロンドナーであり、英国人であり、ヨーロッパ人であり、イスラムを信仰する、アジア系です。私を定義しているのは、ひとつの要素ではありません。しかし、私が残念だと思ったのはザック・ゴールドスミスです。彼は少し変わり者ではありますが、私は彼のことが好きで、過去6年にわたる議会での彼に対する私の印象は肯定的です。彼であれば、もっと上手くできるであろうと思っていました。

ーザックのキャンペーンはかなり個人攻撃的でしたが、それに傷つきましたか。

いいえ、私は面の皮が厚いので。それで傷ついたのは、私の家族や友人です。私の選挙キャンペーンを手伝ってくれているのは、ユダヤ教徒、イスラム教徒、シク教徒、ヒンズー教徒、キリスト教徒など様々です。ゲイやレズビアン、黒人や白人、老人や若者がいます。ヨークシャー出身の人たちもいます。基本的にあらゆる人がいるのです。彼らは私への攻撃を目にして、それを自分のことのように受け止めているので、申し訳なく思っています。相手は、我々がリードしていることを分かっているので絶望的なのでしょう。この問題については、我々が勝つことが1番の解決方法だと考えています。

ーバスの運転手の息子であることを前面に押し出していますが、実際のところ、仕事に対して父親はどの程度影響を及ぼしましたか。

私が自分の生い立ちについて話す理由は、それがロンドン市長になりたいという動機になるからです。私の祖父母はインドからパキスタンに移住し、両親はパキスタンからロンドンに移住してきました。私はカーン家3世代で、初めて移住をしていません。ロンドンは私の街です。ロンドンは家族に可能性を開花させるチャンスをくれました。家族について話すのは、他人との比較や対照ではなく、動機です。それにロンドン以外の場所に住みたいと思わないからです。

ーつまり、社会的なバックグラウンドが、ザックよりも好ましい市長候補にさせているということですか。

いいえ、私は彼のバックグランドについては、話をしたことがありません。ザック氏のバックグランドについて批判することはありません。両親がどんな人物かについては、私たちに責任はないのです。

ーもし、私が公立学校出身なら、あなたは懸命に働いて今の地位を手に入れたけれども、私はそうしなかったと言われているように感じます。

そういうことを申し上げているのではありません。私は、すべてのロンドナーのための市長になりたいのです。ロンドンで生活する喜びを、ともに共有することができると考えています。それは、私が公立学校に通っていたとしても、そうでなくとも関係ないのです。私たちは、密接に生活をしています。それがロンドンの素晴らしさです。

『Sadiq Khan: the Time Out interview』原文はこちら 

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