やんばるアートフェスティバルでしかできない5のこと

テキスト:
Shiori Kotaki
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2017年12月9日(土)から2018年1月8日(月)にかけて、「やんばる」の名で親しまれる沖縄県の北部地域を舞台に芸術祭が開催される。手つかずの森やサンゴ礁、希少な動植物が息づくこのエリアで芸術祭が開催されるのは今回が初。那覇市からは、沖縄自動車道を使っても2時間ほどかかるが、アート作品や古来から受け継がれてきた伝統、文化などに大自然の中で触れられるとあれば、そんなことは全く苦にならないだろう。ここでは『やんばるアートフェスティバルでしかできない5のこと』として、同フェスティバルの注目ポイントや、ぜひ訪ねてほしいスポットを紹介する。

1. 海に浮かぶ小学校でアート観賞する。

同フェスティバルのメイン会場となるのは、大宜味村立旧塩屋小学校。塩屋湾に面した小学校で、まるで海に浮かんでいるようだ。学校自体は、2016年3月に廃校となってしまったが、今回はこの廃校舎を全面活用して、アートの展示やクラフトの展示販売、ワークショップ、音楽ライブなどを行う。当たり前のことだが、廃校となった小学校では、子供の声も聞こえなければチャイムも鳴らない。校舎も遊具もまだまだ使える状態で現役を退いてしまった姿にどこか寂しさを感じたが、芸術祭の期間中、メイン会場としてどう息を吹き返すのか楽しみにしたい。

体育館はオーシャンビュー。満潮になるとギリギリのところまで波が来るという

2. アンチテーゼな関係性を見る。

会場の1つである海洋博公園は、1975年に開催された沖縄国際海洋博覧会を記念し、1976年の9月に博覧会跡地に設置された国営公園だ。沖縄美ら海水族館などを有し、今や人気の観光スポットとして定着しているが、海を潰して作ったという過去を持つ公園でもある。そんな海洋博公園に作品を展示予定なのが、岡山県の宇野港に常設展示されている作品『宇野のチヌ』で広く知られるアーティスト、淀川テクニックだ。淀川テクニックの特徴は、赴いた土地に落ちているゴミや漂流物などを使い、元の姿からは想像もつかないような造形物を制作すること。自然を潰して作られた公園に、淀川テクニックの作品が展示されるというアンチテーゼな関係性がどのようなものを生み出すのか。期待せずにはいられない。

淀川テクニック『宇野のチヌ』

3. 伝統工芸に触れる。

城間びんがた

沖縄県の北部地域に根付く伝統技術に触れられるのも『やんばるアートフェスティバル』ならでは。期間中は、重要無形文化財にも指定されている喜如嘉の芭蕉布や、沖縄の伝統的な焼き物「やちむん」の技法を用いて作られた陶器、色鮮やかな琉球びんがたなど、この地に受け継がれてきた伝統工芸品が展示販売される。メイン会場では、喜如嘉の芭蕉布で作った着物を身に纏(まと)ったモデルを写真家の藤代冥砂が撮影した写真の展示も行われる。

喜如嘉の芭蕉布の原料となる糸芭蕉。原料として使える大きさに育つまで約3年かかるそう

4. やんばるの日常を垣間見る。

12月8日(金)~9日(土)と12月16日(土)~17日(日)の計2回、アドバイザーとして携わっている『美術手帖』プロデュースのツアーも企画されている。アート作品の展示会場だけに限らず、建築や食文化など、やんばるのカルチャーに触れられるスポットを回れるというツアーだ。様々な場所が組み込まれているが、なかでも注目なのが与那集落でのランチだ。与那集落は、人口が200人ほどしかいない小さな集落。取材時もほとんど住人に会わず、のんびりとした時間の流れるエリアだった。ここで味わえるのが、国頭村(くにがみそん)の山と海の幸を使った手料理。地元の人々と会話を楽しんだり、時には一緒に踊りながら食べるランチは、彼らの日常が垣間見える特別なものとなるだろう。いずれのツアーも限定36人なので、気になる人は早めに申し込みをしておこう。

写真はイノシシ肉や野草の天ぷら、トビイカとパパイヤの炒め物など。普段からこの地域で食べられている家庭料理は、シンプルながらも温かみのある味わいだった

5. 合掌犬と拝む。

アートフェスティバルを一通り楽しんだあと、那覇空港に向かう人も多いだろう。その際、途中でぜひ立ち寄ってほしいのが、首里観音堂の名で親しまれている慈眼院だ。ここには、住職と一緒に手を合わせることで有名な合掌犬、コナンがいるのである。一生懸命に前足を合わせて合掌する姿は、ただただ愛くるしい。しかし、餌を持たずにむやみに近づくと、この可愛らしさからは想像もつかないくらいに吠えられるので要注意である。首里観音堂が位置するのはやんばるエリアではないが、芸術祭の期間中は本堂にもアート作品が飾られるとのことだ。 

コナンと住職

『やんばるアートフェスティバル』の詳しい情報はこちら

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