精肉店の新しい形となるか。和牛専門店のTOKYO COWBOY

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Time Out Tokyo Editors
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世田谷区、用賀の閑静な住宅街にある新進気鋭の和牛専門店、TOKYO COWBOY。2015年のオープン以来、遠くからも多くのファンが通う。元々ヴィンテージの英国車を扱う会社が入っていた、レンガ調の建物の1階に店を構える。アメリカ西海岸をイメージさせるような、カジュアルで清潔感のある店内は、従来の精肉店とは全く違ったイメージだ。

オーナーの上野と、31歳の若さにして牛肉に携わって15年超にもなるというミートコンシェルジュの二宮がタッグを組んだ。TOKYO COWBOYが取り扱うのは、黒毛和牛の雌のみ。日本全国からTOKYO COWBOY基準の和牛を仕入れており、かたくなに特定の産地や銘柄にこだわることなくセレクトしている。あえて特定の牧場と契約することなどはせず、30ヶ月程度の月齢の雌を中心に、TOKYO COWBOYが独自に設定した基準に合う個体を全国から仕入れる。仕入れ元が持ち込んだ個体でも、二宮が状態を見て仕入れを断ることもあるという。

肉が好きな客にとっても、驚くべきはその品揃え。サーロインやシャトーブリアンなどの人気の部位はもちろん、一般的に精肉店では部位を分けて並べることがあまりないトウガラシ、カメノコ、マキ、ミスジなどといった希少部位も取り揃える。もちろん、ブロックでの販売だけでなくグラム単位での購入もできる。綺麗にライトアップされて陳列されている塊の牛肉を、オーダーに応じて二宮がカットする。ブロックで購入した牛肉は一般家庭での保存はなかなか難しいという悩みに答えるのが、ミートキープというサービス。温度管理が徹底された店内のショーケース内で保管しておき、必要なとき受け取るスタイルだ。また、すべて手切りでミンチにした和牛のハンバーグや、複数の部位を盛り込んだ焼肉食べ比べセットなどもあり、近所に住む人々からも人気だ。シックなギフトボックスに入ったローストビーフがあるほか、輸入物のカッティングボードやフライパン、和牛とも相性抜群のオリーブオイルや塩なども並んでいる。

「Wagyu」という言葉は世界中で知られているが、やはり日本で購入したいというニーズは高く、外国人客も多い。外資系金融機関で働いていたこともある上野は英語も堪能。日本在住の外国人だけでなく、香港、シンガポール、アメリカなど各国の旅行者からのリクエストにも細かく応える。「ブランド牛だけが和牛ではない。それ以外にも美味しい和牛はたくさんあるので、もっとディープな和牛を知ってほしい」と上野は話す。

店を訪れると、「なぜ、駅から少し歩くこの立地に?」とも思えるが、現在の立地は上野が足で探し、あえて繁華街ではなく家族層が多いエリアを選んだ。「今日の夕ご飯は何?」「それならこの肉がおすすめだよ」。そんなコミュニケーションをなくしたくないとの気持ちから、ミートコンシェルジュのいる対面式の店にした。古くからある精肉店のイメージとはまったく違うと言いつつも、対面で会話をしながらの購入スタイルは、昔ながらの精肉店に通じるものがある。ネットショッピングや大型スーパーに押されて、従来の精肉店の経営は厳しくなってきている。そのなかでこのTOKYO COWBOYは、時代に合った新しい精肉店の形かもしれない。

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