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生活を愛おしむ歌を。新宿で聖児のシャンソンライブを聴いて

生活を愛おしむ歌を。新宿で聖児のシャンソンライブを聴いて

さる9月26日、新宿御苑前駅近くのバーtoiletにて、シャンソニエ(フランス語で、歌を作り唄う人の意)の聖児によるシャンソンライブが行われた。8月から12月まで毎月開催されている『Le Monde de Seiji ~聖児の世界~』の2度目のステージだ。聖児は、国内はもとより、本場パリでもホール、劇場公演を成功させてきた実力派である。いわゆるシャンソン界のみならず、ピチカート・ファイヴの高浪慶太郎や野宮真貴、ムーンライダーズの武川雅寛、ピエール・バルーら幅広いアーティストたちがレコーディングに参加してきた。また、女優の松田美由紀や、寺山修司の演劇実験室「天井桟敷」出身の蘭妖子など、強烈な個性との共演でも注目を集めている。

 

聖児

この日、ピアノソロで始まったライブは、続くガーシュウィンの『アイ・ガット・リズム』で華やかに幕を開ける。シャンソンライブでいきなりジャズのスタンダードナンバーと、面食らう向きもあるかもしれないが、本来「シャンソン」とはフランス語で「歌」全般を指す。フランス以外でシャンソンと言われる場合にも、特に音楽ジャンルとしての決まった形式があるわけではない。事実、ボブ・ディランの『風に吹かれて』なども、聖児の得意とする名曲の1つだ。強いて言うならばフランスで、ときに世界中で愛された歌であればみな、シャンソンと呼ばれ得るのだろう。歌である以上、音楽と同様に歌詞にも重点が置かれるシャンソンは、それゆえに万人が奥底で共感できるような人生の悲喜こもごもを唄い上げるものが多くなる。

 

 

右はピアニスト松本哲平

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日も唄われた『ばら色の人生』や『愛の讃歌』なども、シャンソンを象徴する大歌手エディット・ピアフが、自らの愛や悲哀を託した代表曲だ。ピアフとマルセル・セルダンのエピソードをはじめ、その歌に込められた想いや唄われた時代の空気などを、1曲1曲丁寧に、しばしば笑いも誘いながら解説する聖児からは、その類希なる表現力が、シャンソンへの鋭い理解と深い熱情に裏打ちされているものだと分かる。多くの小説読みを魅了してやまない文学者、堀江敏幸が「甘やかにざらつく」と賞したとおり、澄み切っている美声というよりは倍音を多く含む変化に富んだ豊穣な声音で、人の生の喜びや美しさだけでなく、苦しみや醜ささえをも、この歌手は厳然と現出させる。そういうとき、会場はにわかに湿度を高め、観客の目に溢れてくるものが耳や目ではなく肌で感じられる。

 

聖児

 

 

 

 

 

 

 

 

多くの聴衆にとりわけ強い印象を残したであろう歌に、『祖国と女達』があった。言うまでもなく、美輪明宏が慰安婦を唄ったものだ。8月に行われた前回のライブでも披露した同曲を、今回のライブで唄うつもりは最初はなかったと聖児は言う。今の時勢に思うところがあったのだろう。たとえ慰安婦が強制連行だったかどうかについては意見が分かれたとしても、戦争とは普通の人々の生活を蹂躙するものだという、しごく当然のことを厳しくもこの歌は示している。『祖国と女達』に限らず、もっと言えばいわゆる反戦歌ではなくとも、戦争が生活を蹂躙するものである以上、人生の素晴らしさ愛おしさを唄うシャンソンとは、そもそもが力強い反戦歌であるとさえ言えるのかもしれない。きな臭い空気が蔓延するこの国で、耳にするのが軍靴の音などではなく、いつまでも歌であることを切に願う。

8月には時期がら反戦歌が多く選ばれ、9月はアメリカの曲が多く唄われた。次回10月17日(土)は、シャンソン中のシャンソンというべき代表的なものが中心になるという。秋らしい夕べを歌とともに過ごしてほしい。なお、毎回即完売となるので注意されたい。

※好評につき11月29日(日)、12月25日(金)の追加公演決定

 

 

『Le Monde de Seiji ~聖児の世界~』の詳しい情報はこちら

 

Le Monde de Seiji ~聖児の世界~
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