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流浪の割り箸ピアニスト、サミエルに会ってきた

 

 

彼を初めて観たのは、2014年2月の下北沢だった。駅の改札を出る手前から、音は聴こえていた。何の楽器の音なのか、そもそも生演奏なのか、スピーカーから流れる音楽なのか、一聴では判別できなかった。北口の駅前、日頃からよくストリートミュージシャンが演奏している路上の一角に、彼はいた。近くでその楽器を見ても、やはり何をどう演奏しているのか分からない。どうやら、「割り箸ピアノ」という自作楽器らしい。足下では、簡易的なシンバル、スネア、キックを操り、オリエンタルなチンドンといった趣もある。寒空の下、切れ目なく延々と続く演奏は、即興なのか、既成曲なのか判別できない。立ち尽くして見入るうちに、その幻想的で豊かな音色と、どこか大陸的な響きの音楽に、すっかり心を奪われた。
後日、再会を願って下北沢を再訪したのだがその姿はなく、ネット上で情報を探しても、正確なライブ情報は手に入らなかった。目撃者は多いのだが、誰も詳しいことは知らない。神出鬼没ぶりに舌を巻いていた頃、彼のホームページに記されたEメールアドレスへ送っていた何度目かのメールに、返事が来た。
「メールありがとうございます☆シドニーの旅から帰ったらいつでも大丈夫ですよ」。すぐさま取材の約束を取り付けた。

 

 

 

 

彼の名前はサミエル(Sami Elu)。ボストン生まれでアメリカの音大を卒業後、日本に来たのは2006年9月のことで、以来、東京を拠点に、ストリートやライブハウスで活動してきた。この日は、高円寺のイベントスペースGrainのステージに立っていた。
「いくつかアーティストネームも名乗ってたけど、違和感があったから最近は本名にした」どうりで足取りが掴めない訳だ。
昔から様々なバンドで鍵盤弾きとして活動してきた彼は、現在もジャマイカ人とレゲエバンドをやっているという。バンドも好きだが、1人で完結するスタイルを模索するうちに開発されたのが、「割り箸ピアノ」だった。

 

 

 

 

テーブルトップ式で、ピアノ線をハープのように張り、割り箸を組み合わせた鍵盤が組まれている。演奏は、基本的には左手でベース、右手でメロディーを奏でる。右手には鉛筆のように削った割り箸を握り、先端で直接弦を弾く。オートハープ用のピックアップが付いているので、音はアンプスピーカーから出る。足下には廃材を駆使して作ったシンバル、スネア、キックのセットがあり、こちらもピックアップで音を拾っている。

 

 

 

現在使っている割り箸ピアノは4台目。製作には結構金がかかるそうで、5台目にむけて貯金をしているが、クラウンドファンディングで資金を募ることも計画しているという。素材に割り箸を選んだ理由については、音が気に入ったこと以外は特に深い理由はないようで、とにかく持ち運びのできる大きさで、メロディーと伴奏、リズムがオールインワンになったスタイルの楽器を完成させたかったということだ。海外での活動も頻繁に行っている彼いわく、色々な楽器の折衷的な形状をしたこの楽器は、どの国の人々の目にも親しみ深く映るという。伝統楽器的な生々しい音の響きにも、普遍的な魅力がある。

 

最近は自作曲を基本に即興を織り交ぜる演奏スタイルが主で、曲も溜まってきたので正式なレコーディングを行って、音楽レーベルのniceness musicから作品をリリースする予定だと言う。ライブハウスやクラブでのライブも増えており、徐々に活動が活発化しているようだ。気になった人は足を運んでみるといい。


サミエル(Sami Elu)の詳しい情報はこちら

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