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梅澤高明に聞くクールジャパンのすべて

梅澤高明に聞くクールジャパンのすべて
Originally posted March 6 2015

 


「クールジャパン」とは、よく耳にするけれど、そもそも何なのだろう。その趣旨とこれまでの足取り、そして今後の展望は? クールジャパンをテーマに、2014年11月から全4回のシリーズとして開催してきた、タイムアウト東京主宰のトークイベント『世界目線で考える。クールジャパン編』が、2015年2月27日(金)に最終回を迎えた。ゲストは、ATカーニー日本法人会長の梅澤高明。テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』のコメンテーターとして知る人も多いかもしれない。彼こそ、クールジャパン戦略の策定やクールジャパン機構設立において政府を支援し、現在内閣官房「クールジャパン戦略推進会議」委員を務める、いわばクールジャパンのすべてを知る最重要人物だ。

第1部は、ゲストによるトークライブ。

「クールジャパンとは何か」という話から講義は始まった。クールジャパンとは「一言で言えば、日本のPR戦略であり、さらにPRの域を超えて、日本の美意識やライフスタイルを発信しながら、世界市場で稼げるクリエイティブ産業を育成していく経済政策」だという。

 

 

続いて、梅澤自身が注目する「クール」なコンテンツの数々が紹介された。海外から多くの客を迎え、彼らにおすすめを訊かれることも多いという梅澤の最新リストだ。ここにはすべてを挙げきれないが、たとえば、ニューヨークに進出したラーメン店の一風堂や、滑稽なまでのバラエティを誇る日本限定の『キットカット』。ディテールにこだわった東洋の感性を見せる『sacai』や『mame』などのファッションブランド。現在、1億2,000万円でAmazonでも販売されている、アートピースとしてのロボット『KURATAS』や、革新的なビジネスモデルとしても注目を集める『初音ミク』など。食、ファッション、アニメ&漫画、音楽の4分野が、その多くを占める。

梅澤のトークは、様々な実例を取り上げながら、日本の歴史的背景や世界の時流を俯瞰し、時にミクロに時にマクロに展開を見せた。『キットカット』や『KURATAS』からは、ガラパゴスでしか出てこない強烈なコンテンツや、非凡な才能を持つ人がビジネス度外視で馬鹿馬鹿しいことに本気で取り組む、日本の特異性を考察。『初音ミク』が『Luis Vuitton』の衣装を纏って登場する未来型オペラ『The END』の話題からは、カテゴリー横断や異質のコラボレーションによる展開の可能性が語られた。

 

 

「日本文化のほとんどは混ぜものだ」と梅澤は言う。遣唐使や明治の文明開化に代表されるように、日本人は長い歴史の中で様々な異文化を輸入し、咀嚼した上で自分たちのものに作り替えてきた。階級の別なく文化コンテンツに親しみ、大衆の美意識や文化レベルが高い。そうした土壌が育てた「質の高いロングテイル」ともいうべき、積み重ねてきたものの豊潤さこそが、日本の武器になるという。

日本のクリエイティブ産業は今、2020年に900兆円に達すると言われる巨大な世界市場を前に、内需中心からの転換を図ろうとしている。個々の企業の努力だけでなく、サプライチェーンごと、あるいは複数の業界が連携して海外展開することで、発信力や事業の効率を飛躍的に向上しようという戦略だ。「日本好きの外国人や和僑を含む“拡大ジャパン”とも呼ぶべき文化圏を拡大し、多様な異文化との交配をさらに進めることが追い風になる」と梅澤は言う。「日本のものを海外に持って行けば、それだけで人が殺到するというのは幻想」としながらも、その頃には東京や京都が世界的な文化ハブになっているだろうというのが彼の予想だ。

 

 

第2部は、タイムアウト東京代表の伏谷博之が聞き手として参加し、参加者も交えたトークセッションを行った。参加者にはクールジャパンに携わる者も多く、質疑応答は熱気を帯びた。

 

「せっかくやってきた旅行者が、様々な面白いことを知らないままで帰ってしまう現状があり、非常にもったいないと感じている。日本文化の伝道者となりうるインバウンド客をもっと上手く活用しなければ」と発言したのは、東京を拠点に旅行会社を営む外国人経営者。また、元経済産業省職員からは「クールジャパン機構は、毎年数字を追いかけているのか。何をもってプロジェクトの達成とするのか」という質問が出た。また「クールジャパンを仕事としない多くの人が、クールジャパンのためにできることは何か」といった質問も。

梅澤は、クールジャパンが10年単位の時間軸で取り組むべきプロジェクトであることを強調。また、官庁と異なり、幹部の定期異動や年次予算に縛られず、競争力の高い特定企業の成長を重点的に後押しできる仕掛けとして、クールジャパン機構が設立されたこと、設立から1年強で既に10件の投資決定が行われたことが語られた。

 

2020年には、オリンピックがやってくる。「今、そしてこの5年で何をするかが、その先10年を決める」と語る梅澤。予定時間を大幅に延長した『世界目線で考える。クールジャパン編』最終回は、大海に乗り出す日本の航路を見据え、今後の課題と可能性について大きな視点から考える機会になったように思う。

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