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本は楽しく眠るためのツール。池袋に「泊まれる本屋」が誕生

本は楽しく眠るためのツール。池袋に「泊まれる本屋」が誕生

2015年11月5日(木)、池袋駅近くに「泊まれる本屋」をコンセプトにした注目のホステル、BOOK AND BED TOKYOがオープンする。

夢中で本を読むうちに、いつの間にかまぶたが重くなり、気づいたら朝を迎えていた──そんな経験はないだろうか。同ホステルは、そうした「最高に幸せな、眠りに落ちる瞬間を味わえる宿があったら」というシンプルなアイデアから誕生した。

手がけるのは、東京近郊の物件を独自の視点から紹介している不動産会社のR-STORE。これまで多くの賃貸住宅を扱ってきたが、宿泊施設を作るのは初めてだという。コラボレーターとして、建築家の谷尻誠と吉田愛率いるSUPPOSE DESIGN OFFICEがデザインを、渋谷区神山町の書店SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(SPBS)が選書を担当。

タイムアウト東京編集部は一足早く、気になるその空間を訪ねて、仕掛人たちに話を聞いてきた。

 

同ホステルがあるのは、JR池袋駅西口から歩いてすぐの西口五差路前。大きな交差点を望む、雑居ビルの7階にある。小さなレセプションを過ぎて、メインルームに足を踏み入れると、細長い空間の片壁一面に本棚が広がる。大きく開かれた窓からは明るい光が差し込み、本棚の奥にベッドルームが見え隠れする。藍色のソファベッドと打ちっぱなしのコンクリート、天井からぶら下がる本たち。まるで繁華街の中空に浮かぶ、秘密の図書室だ。

 

 窓際の一番奥のソファ席。多くの人が行き交う交差点と大きなモミの木を見下ろせる

 天井を見上げると、つり下げられた本たちがそれぞれの表紙を見せている

 

「泊まれる本屋」をコンセプトに掲げているが、並ぶ本はすべて閲覧用なので、正確には「泊まれるライブラリー」と言った方がいいだろう。ただ、多くのライブラリーとは異なり、持ち込みでの飲食が許されているため、ここでは「巨大な本棚の前でビールを飲みながらゴロゴロする」という夢が叶えられる。一方で、あくまで宿なので、気ままに居眠りしたり、書棚の本を片手にベッドで休んだりできるのが、ブックカフェとは違うところだ。それでは、おしゃれな漫画喫茶や美しい図書室のあるホテルとは何が違うのだろう? 仕掛人であるR-STOREに話を聞いてみた。

 「実際のところ、巷の漫画喫茶や図書室のあるホテルとは、似ているようでまったく違うものになると思います。体験をベースにしたBOOK AND BED TOKYOでは、あくまで素敵な眠りのためのツールとして本がある。眠りがオプションとしてあるのではなく、予約して泊まることのできる宿というのがスタート地点ですから、漫画喫茶とはそもそもの入り口が違うんです。並ぶ本も、心地よい眠りや楽しい夜更かしをテーマに選ばれたもの。夏目漱石のような文学から、漫画、美しい写真集まで、ジャンルを横断した本が並びます」(R-STORE代表 浅井)

「友達の家を訪ねて、本棚を眺めたり、わいわい過ごすのって楽しいですよね。BOOK AND BED TOKYOも、そんな友達の家のような場所にしたいんです。本棚の前でウトウトしてもいいし、本について語らったり、奥の静かな個室で物思いに耽ったりしてもいい。この場所をホテルではなく、ホステルという形にしたのも、フランクでありたいから。仰々しくせず、かといってベタベタもしない、適度な距離感でお客さんとコミュニケーションを取り、来てくださる方と一緒に魅力を作っていけたら。外国人旅行者の方にも特別なことはせず、国籍を問わずに普段の姿を見せることで、日本や東京の日常を感じられる場所にしたいと考えています」(R-STORE広報 力丸)

 

R-STOREの2人のおすすめは『AKIRA』と『ヒップホップ家系図』

 

個室のタイプは、書棚と一体となったベッドルームと、奥の部屋に並ぶカプセルルームから選べる。後者はカーテンを下ろせば、完全な暗闇に包まれる。瞑想したい人にはうってつけのコクーンだ。宿泊料は、個室のサイズにより、1泊3,500円と4,500円。

 本棚の奥で眠るという不思議な体験が味わえる

 

 個室にはカーテンが付く予定。想像以上に奥行きがあり、マットの奥にはゆったりと荷物が置ける

 

多くの人が行き交うJR池袋駅前という立地も、大きな特徴だろう。
「池袋は、北側のごちゃごちゃとしたカオスと、南や西側の落ち着いた文教地区がクロスする面白い場所。近くには、24時間営業の立ち食い蕎麦から多国籍レストランまで、飲食店も多いので、このホステルに食堂はありませんが、食事の選択肢はたっぷりあります」(浅井)

 窓からはJR池袋駅の西口が見える

選書を依頼したSPBSには、東京中の書店を見て回るなかで出会ったのだという。「唯一ビビッと来たのがSPBSだったんです。SPBSの印象は、入り口の書店。柔らかい本も堅い本も隔てなく置かれていて、とても入りやすい。フランクで感覚的。感性やビジョンの近さを感じました」(浅井)

 

 

SPBSと言葉を交わしながら、まずは核となる20冊を選び、そこから約2000冊へと広げていったそうだ。その20冊のラインナップは下記の通り。本好きなら、ここから本棚が想像できるかもしれない。

BOOK AND BED TOKYOをめぐる20冊
『シュナの旅』『ヨーロッパ退屈日記』『世界のシティ・ガイド CITI×60 東京』『1分間ピケティ』『こころ』『1Q84』『劇画 ヒットラー』『恐竜人間』『TOmag 中野区特集』『ステーキを下町で』『お絵かき辞典』『THE BOOKS green 365人の本屋さんが中高生に心から推す「この一冊」』『7日でできる思考のダイエット』『人類の歴史を変えた8つのできごと II』『ヘウレーカ』『仕事。』『AKIRA』『エハイク紀行』『ヒップホップ家系図』『週刊少年ジャンプ』

この20粒の種をもとに、SPBSが選んだ本は、大きく分けて「ワクワク本」と「スヤスヤ本」の2つ。本は、時に人の目を爛々と輝かせ、夜更かしさせることもあれば、まどろみの世界へと誘う、眠りの友にもなる。たとえば、前者の小テーマは「明日のヒント」「Comic Paradise」「Midnight Adventure」、後者は「今にも寝るときに」「夜食本」「家が恋しいとき」といった具合だ。選書のエピソードをSPBSに尋ねてみた。

 「最初の20冊は、R-STOREのメンバー4人と、『AKIRA』とかマストだよね、なんて話しながら、ワーッと選んでいきました。そうして書棚に並んだたくさんの本は、決まった位置を定めず、宿泊者が自由に動かすことができます。旅人であるお客さんとの関わりから棚が変化していくことで、漫画喫茶ともブックカフェとも違った本の場が生まれるのでは。こうしたコラボレーションは、SPBSにとっても初めてのことなので、楽しみにしています」(SPBS店長 鈴木)

 書棚には「募金」ならぬ「募本」コーナーもある

この秘密基地のようなホステルを訪ねて受けた印象は、潔さと遊び心だ。幸福な眠りとは何か。それをもたらすのは、果たしてふかふかの高級寝具だけなのか? ここには、そうした問いへのシンプルな回答と提案がある。

好奇心に満ちた時間を過ごしたい旅人にも、気分を変えて読書の夜や交流を楽しみたい東京人にも、この不思議な「ブックホステル」は、魅力的な選択肢となりそうだ。

BOOK AND BED TOKYOの詳しい情報はこちら

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