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オリパラまでの1000日で取り組むべき課題とは。「OPEN TOKYO Talk」が開催

オリパラまでの1000日で取り組むべき課題とは。「OPEN TOKYO Talk」が開催

『日経マガジンFUTURECITY セミナー OPEN TOKYO Talk 「あと1000日でできること」』(日本経済新聞社クロスメディア営業局、タイムアウト東京主催)がこのほど、渋谷ヒカリエで開催され、登壇者が将来に向けた東京の街づくりやバリアフリーの取り組みのあり方などについて意見を交わした。

同マガジンの第2号の発刊を記念したセミナーで、『超福祉展』(11月7〜13日)内のトークセッションとして2部制で行った。フリーアナウンサーの柴田玲と、タイムアウト東京代表の伏谷博之の司会の下、第1部では、バリアフリーな住環境整備などに取り組むNPO法人アクセシブル・ラボ代表理事の大塚訓平と、パラリンピック競技を疑似体験できるデジタルゲーム開発などを行うワン・トゥー・テン・ホールディングス代表取締役社長の澤邊芳明の2人が登壇。第2部では、ヨコハマ・パラトリエンナーレなどを手がけたNPO法人スローレーベルディレクターの栗栖良依(くりす よしえ)と、建築家で東京藝術大学准教授の藤村龍至がステージに上がった。

第1部では、8年前に不慮の事故で下半身不随となって以来、障がい者にとって快適な環境の実現に力を注いできた大塚と、18歳でバイク事故で車いす生活となってから「現実を一切受け入れずアウトローに生きてやる」と決めたという澤邊がトークを展開。日本のバリアフリー環境について、2人が口をそろえたのが、障がい者向け機器や住宅などのデザインが画一的であること。大塚が「障がい当事者になって、バリアフリー商品を見てみると『かっこいいものは選べないんだな』と感じた。安全性や機能性を重視し、デザインが後から乗っかっているのだと思う」と話すと、澤邊も「『あれば良いでしょ』という状態になっている」と苦言。「日本は『こういう機能があればいいはず』と決めたがってしまう。選択肢を増やすのがより成熟した都市の姿だと思う」と続けた。

 

福祉機器などのデザイン性について考えを語る大塚訓平

 

 

 

 

街づくりにおける障がい者目線の欠如についても話は及んだ。澤邊が「バリアフリーの前に『バリアを作るなよ』と思ってしまう。例えば東京駅の前に2段の階段があるのだけど、何のために必要なのか。ちょっと視点を変えればできることはいっぱいある」と問題提起すると、大塚も、「コンサルタント事業をする中で、事業者から『(バリアフリー設計になっているかどうか)答え合わせをしてくれ』と頼まれることがあったのだが、トイレの入口にゴミ箱が置いてあった」と苦笑いを浮かべた。

 

日本社会に根強く残る様々なバリアを指摘する澤邊芳明

 

 

 

 

トークの最後、大塚は「障がいなど、違いがある人に対してバリアを感じる人もいるかもしれないが、気づきのアンテナを高くして、レディーファーストの英国紳士のようにすれば大丈夫」と聴衆に対してアドバイス。澤邊は「パラリンピアンが将来100メートルを9秒3で走れるようになった時、社会はどう感じるのか。何かしらのパラダイムシフトが起きるはず。未来のダイバーシティを考える際には、社会を俯瞰(ふかん)し、柔軟に考えることが大切」と語りかけ、第1部が終了した。 

 

超満員の会場

 

 

第2部では、障がい者とアートをつなぐ活動をする栗栖と、高齢化や空き家問題などに悩む都市の再生に取り組む藤村が登壇した。一見すると全く異なる2人の仕事だが、伏谷は両者が「結果」よりも「プロセス」に価値を見出していることを共通点として指摘。「藤村さんがテレビで新国立競技場の(デザインに当初採用された)ザハ・ハディドの話をしていた。藤村さんは『ザハの建築を作ることで、日本の建築技術がワンステップ、ツーステップ進化していたかもしれない』と言っていた」と振り返ると、藤村は「あれは難しい建築で、要求も難しかった。でも、世界ではザハのデザインを建てることで、建築レベルが上がっていた。日本はその機会を逃したのかもしれない」と答えた。

 

 

 

 

モデレーターの柴田玲(右)と伏谷博之

 

 

伏谷が、「今まではレガシーと言えば観光などの話をしていたが、テクノロジーや技術の面でも次世代の財産になるものがあったのかもしれない」と言うと、藤村は「昔はお金を使うだけだったが、今は投資という考え方ができている」とし、「日本は(金を使うことに)ちょっと心配し過ぎな感じがする」と述べた。リオ大会の閉会式でステージアドバイザーを務めた栗栖は「開閉会式もすごくお金がかかり、3000人くらいの人が1つの式に出場する。お金を出して終わるのではなく、彼らをどう育てるかが大切。障がいがある人だけじゃなく、周りの支援人材も育ち、彼らがセレモニー後、各地元に帰れば、地域の様々な活動をインクルーシブにしていく推進力になってくれる」と指摘。「セレモニーの成功が目的ではなく、そのプロセスでどんな技術、どんな人を残していくのかが大事」と力を込めた。

 

未来を見据えた投資の意義を語る藤村龍至(右)

 

 

柴田が2人に対し、もどかしく感じていることはないかと質問すると、栗栖は「周りにはダイバーシティに関わることをやりたいという人も増えているが、テレビを見ていると、移民問題など、壁を立てるという大きな流れもある気がし、実は危機感を感じている。2020年に向け、そうした流れに抗いながらアクションを進めていかないと、飲み込まれてしまうのではと思う」と思いを吐露。「皆さんも1000日を無駄にせず、前向きに日々を過ごしてほしい」と呼びかけた。藤村も、「街づくりもそうだが、困難から何を学ぶかということがすごく大事だなと思う。前回の東京大会で何を学んだのか、今大会は何を学ぶのかを問い続けている限りにおいては、人間社会は必ず成長できる。そういう姿勢を維持したい」と学び続けることの大切さを訴え、3時間以上に及ぶトークセッションが終了した。

 

「壁を立てるという大きな流れに危機感を感じている」と語る栗栖良依

 

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