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インバウンドから考える、ガイドブックの未来

世界目線ラウンジ3

20164月で7周年を迎えたタイムアウトカフェ&ダイナー。そのスペシャルイベントの一貫として、タイムアウト東京が主催し、毎回様々な分野のエキスパートを招くトークイベント『世界目線で考える。』のスペシャルバージョン、『世界目線ラウンジ』が開催。初回は、『世界目線ラウンジベストガイドサミット vol.1』と題し、『地球の歩き方』を発行するダイヤモンド・ビッグ社代表取締役社長の藤岡比左志と、KADOKAWA『ウォーカー』総編集長でエリアウォーカー部部長、ウォーカー街づくり総研理事長を兼ねる玉置泰紀、タイムアウト東京代表取締役の伏谷博之の3名が登壇。個性豊かなガイドブランドを展開する3者のトークは玉置の乾杯の音頭から始まった。

世界目線ラウンジ1

 

国民性にあったガイドブックを作る

1979年に創刊された『地球の歩き方』。その誕生までの流れは、まさに今日のメディアが目指すものと言える。当時就活情報誌を出版していたダイヤモンド・ビック社。そこへ、就活を終えた大学4年生を飛行機代が安い1~3月ごろに海外へ行かせようというプロジェクトが持ち込まれる。今日の「卒業旅行」の萌芽だ。「ダイヤモンドステューデントツアー」と銘打たれてスタートし、参加者にはインセンティブとして前年の参加者の体験談が載ったガリ版刷りのガイドが配られた。学生だけで海外旅行に行くことは珍しかった当時は、ガイドブックといえば出張やツアー用しかなかったのだ。その後、そのガイドは『地球の歩き方』として市販されるようになる。「世の中にない情報を形にする」ことが、日本を代表するガイドブック『地球の歩き方』の原点だと藤岡は語った。

「飛行場から市内へ無事たどり着けるか」「時期的に何を着ていけばいいか」など、『地球の歩き方』の編集部には読者から多くの相談が寄せられるという。天気、簡単なフレーズ、交通手段などありとあらゆる情報を掲載し、時に「過保護なガイドブック」と称されることも。しかし藤岡は「国民性に合ったガイドブック」を作っているのだという。それは「分からなければ聞けばいい」と考えている外国人に対し、心配性の日本人には需要があるのだ。

国民性という話題のなかでもう1つ日本人の特徴としてあげられたのが「選択が苦手」ということだった。タイムアウト東京では、「東京、ナポリタン5選」といったまとめ記事が人気だ。しかし、他の都市では50選、100選などが上位になる。レストランでいえば、膨大なメニューのなかから選択するフレンチや中華に対し、鮨屋では「おまかせ」こそが一流と考える。ランキング好きと言われる日本人だが、あまりに選択肢が多過ぎても選べなくなってしまう、取捨選択が苦手な国民性なのだ。 

世界目線ラウンジ

アジアを呼び込む

日本ファンが多いと言われる台湾だが、尖閣諸島問題や3.11の時の日本離れは顕著だった。1999年に創刊された『台北ウォーカー』など多言語化する『ウォーカー』ブランドを手がける玉置は事態を冷静に見つめ、インバウンドの話が盛んにされるようになったときもあまり期待していなかったという。しかし、日本とアジア諸国との政治的関係が冷え込んでいる間にも、円安、SNSの普及、アジア諸国の経済成長、ビザの緩和などインバウンドにつながる様々なことが起きていた。次第にアジアの人々の「日本=物価が高い」というイメージが「日本=安い、安全、行きやすい」に変わっていったのだ。実際に『台北ウォーカー』では、日本の特集記事が別冊の付録になり、さらに独立し月刊誌として創刊するにいたった。

インバウンドを考えるうえで、日本が手本にすべきはフランスだと藤岡は言う。人口約6600万に対し、フランスには年間8000万人以上の外国人観光客が訪れる。そしてそのうちのほとんどがヨーロッパから来ているのだ。戦後から人口が増え続け、内需だけで十分成長を続けてこれた日本だが、少子高齢化と人口減少が待ち受けているこれからはフランス同様、周辺諸国、つまりアジアの国々から人を呼び込むことが必要になるだろう。

世界目線ラウンジ2

 

これからのガイドの役割

「これからのガイドの役割とは」という問いに対し、藤岡は「知っていること」と「知らないこと」を伝えることだと言う。誰もが知っているメジャーなスポットの情報を載せることも大事だが、同時に旅行者も地元の人が知らないような現地の魅力を発見することもまた編集の仕事。知識の有無で重みがまったく変わってしまう旅の魅力に気づく手助けができれば、と語った。

一方、雑誌という立場から、玉置はオンタイムの情報を提供することが役割だと言う。検索でヒットする情報が最新とは限らないウェブに対し、雑誌はオンタイムでないと世に出せない、古い情報ではダメなのだ。しかし、玉置はウェブを否定しているわけでもなければ、紙とウェブを別物として考えているわけでもない。隔週、月刊、ウェブなど様々な形態でコンテンツを発信し続けるためには、持っているコンテンツを適切な形で供給することが大切だと語った。

ターゲットも違えば発信する情報もまったく異なる3媒体だが、目指すものは同じなのかもしれない。駆け出しの編集者には偉大すぎる先輩たちの2時間に及ぶ対談はこうして幕を閉じた。

次回の『世界目線ラウンジ ガイドは動画にする。』は4月21日(木)にタイムアウトカフェ&ダイナーにて開催。ゲストは、2016年2月に動画ガイド『PLAY▶TOKYO』を3社共同で立ち上げた博報堂ケトルの嶋浩一郎、TUGBOATの川口清勝、タイムアウト東京の伏谷博之の3人がパネラーとして登壇し、動画を活用したガイドの可能性について本音トークを繰り広げる。限定50席となるこの貴重な機会に、ぜひ参加してほしい。

 

 

藤岡比左志
ダイヤモンド・ビッグ社 代表取締役社長
1957年東京都生まれ。立教大学法学部法学科卒業後、ダイヤモンド社入社。雑誌編集、書籍編集を経て、ベンチャー企業家を組織したダイヤモンド経営者倶楽部などを担当。マネー誌「ダイヤモンド・ザイ」創刊編集長、金融情報局長、経営企画本部長等を経て取締役。2003年より、「地球の歩き方」発行元のダイヤモンド・ビッグ社代表取締役専務を兼任。2008年、同社代表取締役社長に就任する。日本ペンクラブ会員。

 

玉置泰紀
KADOKAWA ウォーカー総編集長。ウォーカーブランド統括事業統括部長、ウォーカー街づくり総研理事長。京都市埋蔵文化財研究所理事。大阪府おおさかカンヴァス審査員。
枚方市生まれ。同志社大学卒。産経新聞神戸支局・大阪本社社会部と7年間記者(最後は大阪府警本部捜査1課担当)~福武書店(ベネッセ)月刊女性誌編集~角川書店グループ(現KADOKAWA)入社後、編集長4誌担当などの後、現職に。

 

世界目線ラウンジ4

 

「サミット」とかけて参加者には伊勢うどんが振る舞われた

 

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