アートギャラリーが示す都市の状況

東京で最もアート好きを気取れるエリア、六本木と天王洲アイルを探索
Terrada Art Complex | Time Out Tokyo
作成者: Yusuf Huysal |
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けばけばしいクラブやブティック、高いバーなどが並ぶ六本木だが、意外にも東京のアートの拠点という一面も持っている。「ハイタッチタウン」として知られた、この東京で最も有名な娯楽の街は、数々の小さなギャラリーや大きな美術館を誇る。これは、この10年続いたジェントリフィケーションの取り組みによる文化的な遺産だ。

一方、南東へと目を向けて、天王洲アイルも芸術あるいは技術と無関係ではない。実際、この人口の島は、1920年代から30年代に埋め立て技術を使用して、文字通り東京湾から掘り返された。最近では、従来の静かな倉庫街にウォーターフロントの開発計画が垣間見え、アートギャラリーやヒップなホテル、高層オフィスビルや運河沿いのカフェを備えた、壁画に彩られた街として再び注目を集めている。

六本木

Tomio Koyama

2016年、小山登美夫ギャラリー、シュウゴアーツ、タカ・イシイギャラリーという3つの影響力あるギャラリーが入居するcomplex665の誕生とともに六本木におけるアートの評価は新たな高みへ到達した。騒々しい六本木の大通りから隠れるようにして建っているビルだが、壁面に描かれた走り書きのようなマークがあるために見落とすことはないだろう。このシンボルはアーティスト田中義久がcomplex665のためにデザインしたロゴで、665という名前の架空のアーティストによる署名というアイデアに基づいている。

東京のアートシーンのメジャープレイヤーである小山登美夫ギャラリーは、千駄ヶ谷からこのビルの2階へと移転してきた。展示室2部屋のデザインは、若手建築家の村山徹と加藤亜矢子からなるムトカ建築事務所が手がけた。同ギャラリーでは、若き天才写真家ライアン・マッギンレーや、アメリカを代表するポストミニマリストのリチャード・タトル、そしてオノ・ヨーコなど、素晴らしいアーティストたちを紹介している。

同じく2階のシュウゴアーツは、1980年代半ばより日本の前衛芸術家たちを支えてきた。ギャラリーをデザインしたのは、銀座のルイ・ヴィトンの美しいファサードでも有名な青木淳だ。同ビルの他ギャラリーとは異なり、シュウゴアーツは日曜日もオープンしている。

タカ・イシイ


最上階を手にしたのは、エルムグリーン&ドラッグセットや荒木経惟、森山大道、トーマス・デマンドなど大物アーティストを擁するタカ・イシイだ。同ビルの1階にショールームを構えるインテリア界の先導者『broadbean』が、このスマートな画廊にデザインで参加しており、緑の多いテラスから巧みに自然光を取り込んでいる。

21_21 DESIGN SIGHT


一度に多くの作品を楽しむことに味をしめたら、近くのピラミデビルに向かうといい。オオタファインアーツWAKO WORKS OF ARTなどが入居している。そのほか森美術館21_21 DESIGN SIGHT国立新美術館サントリー美術館も六本木では外せない。また同じく2016年には、スヌーピーミュージアムもオープンした。

天王洲アイル

tennozu isle mural

東京人の荷物を預かるような単なる倉庫業にはもはや留まらない事業を行う寺田倉庫は、天王洲に新たに建築倉庫ミュージアムを誕生させた。ここでは、隈研吾や坂茂、山本理顕など日本のスター建築家たちの建築模型が展示されている。実際、展示されている倉庫自体には目を見張るものがある一方で、実在には至らなかったプロジェクトも含む模型の数々はまるで「ヴンダーカンマー(驚異の部屋)」のミニチュア版といった具合にきらめいている。同ミュージアムを訪れた後では、しばしば執拗なまでに騒がしく思える、親愛なる我らが東京の街を歩くときにも、美しいビル群へ感謝の念を抱くことになるだろう。

建築倉庫ミュージアムから文字通り石を投げて届く距離にある画材ラボPIGMENT(ピグモン)は、隈研吾が「竹」の見た目や質感からインスピレーションを得て設計した。ラボの名にふさわしく4500以上もの顔料、50種もの膠、そして200ものアンティーク万年筆を含む伝統的な上質画材の数々を揃えている。スタッフたちもこの複雑なプロダクトについて精通しており、喜んで使い方を説明してくれる。
天王洲アイル
TERRADA Art Complexの3階では、六本木で紹介したコンプレックスと同じように4つのギャラリーが互いに身を寄せ合うことを決めた。そのカルテットは、若手アーティストの久保ガエタンなどの展示を行う児玉画廊、2017年の『ヴェネチア・ビエンナーレ』で日本代表となった岩崎貴宏を擁するURANO、伝説的な先駆者リチャード・セラなどを扱う山本現代、カンディダ・ヘーファーとホセ・パルラのコラボレーションで名高いYUKA TSURUNO GALLERYによって構成されている。業務用エレベーターで入場する、本物の倉庫の中にいるということさえ忘れてしまうほど、有意義な鑑賞体験ができる。

ロンドンのショーディッチやニューヨークのブルックリンの住民たちが伝えるように、ジェントリフィケーションは新しいもののために古いものを犠牲にするもろ刃の刃だ。サードウェーブコーヒーと昔ながらの喫茶店のいずれを選ぶかはともかく、アートギャラリーの件数や密度は、しばしばそのエリアの状況を知るためのリトマス紙になる。30分以内の距離にある六本木と天王洲アイルは、東京の都市計画が与える社会文化的な影響に関する、興味深い2つのケーススタディをもたらしてくれる。もちろん、難しいことは考えず純粋にアート鑑賞を楽しむこともできる。

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