「おたる政(まさ)寿司」は、1938年の創業。「小樽寿司屋通り」にある、小樽を代表する寿司店だ。小樽は今でこそ日本屈指の寿司の街として知られているが、一足飛びに知名度を獲得したわけではない。同店2代目が呼びかけ、近隣の寿司屋が集って小樽寿司通りを立ち上げたり、北海道物産展に参加したりするなどし、「寿司の街・小樽」の名を広めていった。
江戸前寿司は、伝統的に「酢や塩で締める」「タレに漬ける」などしてネタを保存する技術を発展させたが、冷涼な気候の北海道の「蝦夷前寿司」は、手をほとんど加えずに新鮮なネタのうまさを引き出すのが、真骨頂。鮮魚店を自社で経営する同店では、独自ルートで小樽をはじめ道内の朝採れの食材を直に仕入れることで、東京の市場ではめったに出回らない貴重な食材も提供できる。店名に掲げられた「おたる」の名に、そのプライドが現れている。
四季折々の旬のネタを用いた寿司はもちろんのこと、「あわびステーキ」やウニと卵黄を溶いたつゆで食べる「元祖名物いかそうめん」などの一品メニューもぜひ試してほしい。