「DEATH NOTE」新作読み切りも初公開!「小畑健展 NEVER COMPLETE」レポート

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写真:中村悠希 

『ヒカルの碁』『DEATH NOTE』『バクマン。』などの大ヒット漫画の作画で知られる漫画家、小畑健(おばた・たけし)の画業30周年を記念した展覧会『画業30周年記 小畑健展 NEVER COMPLETE』が、7月13日(土)からアーツ千代田3331で開催される。

漫画に詳しくない人でも実写映画化やアニメ化もされた『DEATH NOTE』や『バクマン。』など、タイトルぐらいは聞いたことがある人が多いだろう。小畑のその圧倒的な画力で描かれた作品は、海外にもファンが多いほど人気だ。

今回は1万5千枚を超えるアーカイブの中から厳選した、約500枚に及ぶ原画や資料を展示。小畑が手がけた美しい原画の数々を、至近距離で見ることができる貴重な機会となっている。その大規模な展覧会の全貌が、開始前日となる7月12日(金)に、いち早くプレス向けに公開された。小畑本人も登場した内覧会の様子をレポートする。

 

小畑健の過去・現在・未来を提示

会場は、ZONE1~3の3つのエリアに分かれ、さまざまな角度から彼の作品世界を見つめられるようになっている。

まずはZONE1「Manga」。彼の代表作といえる『ヒカルの碁』『DEATH NOTE』『バクマン。』からストーリーを象徴する名場面や、作画技術がより際立つシーンの原稿を厳選。多くの少年少女を魅了した有名作品の生原稿が数多く展示されており、繊細かつダイナミックなタッチを細部まで見ることができる。

色あせた紙が本物の原稿であることを証明している

描きこまれていながらも、キャラクターの動きや表情がはっきりわかるのは、画力はもちろん、キャラクターや背景を合わせたときの空間遣いのうまさもあるのだとわかる。

碁石を持つ指先までも美しい

小畑作品には、死神やドラゴン、パワードスーツなど、非現実的な要素を含む作品も多い。誰も見たことがない想像の産物を具現化する小畑の想像力の高さも伺える。 

 続いての、ZONE2「Illustration」では、漫画作品の扉ページや、単行本カバー、他作品とのコラボレーションイラストなどのカラー作品を展示。展覧会向けに制作されたキービジュアルの原画もここで見ることができる。 

鮮やかな色が加わることで、キャラクターに命が吹き込まれ、さらに生き生きとした表情を見せているから不思議だ。塗りの細やかさ、丁寧さも見て取れる。

小畑健のデビュー作『CYBORGじいちゃんG』のカバーイラスト

PEACH-PITの漫画『ローゼンメイデン』のトリビュートピンナップとして制作された作品も公開

そして、ZONE3「Never Complete」では、デジタル作画を取り入れ精密な描写で作り上げる最新作『プラチナエンド』の制作過程を公開している。キャラクターの設定資料からネーム、そして、実際の原稿が横並びに散りばめられ、一つの作品が私たちの元に届くまでの苦労も感じられる。

エリアの最後には、展覧会のタイトルにもなっている作品『Never Complete』を展示。棺に閉じ込められた天使のような作品は、小畑の画力が遺憾無く発揮されており、妖しくも美しい存在感を放っている。

描き下ろし作品『NEVER COMPLETE』

なお、この作品は線画で色が付いておらず、その理由についてジャンプスクエア副編集長 吉田幸司(よしだ・こうじ)は「小畑先生は、作品が完成するまでに何度も書き直しをしており、それが小畑先生の特徴でもある。それならば『いつまでも描き続けられる作品を』ということで、今回の作品を描いていただくことになった」と語った。

 

「素晴らしい原作に出会えたことが大きかった。」

今回の内覧会では、めったにメディアに登場することがない小畑健本人が登場し、記者会見も行われた。小畑は記者の前で次のように挨拶した。

「うまくいかなくて当たり前という覚悟で飛び込んだ世界。結果を出し続けなければいけない少年ジャンプという雑誌で、これだけ長く続けられたのは想定していなかった。原稿が完成する過程も展示されているが、書き損じや間違いも多く、漫画家として見せたくない部分でもあります。しかし、来てくれた方には、そういう部分も楽しんでもらいたい。今までやってきた作業を振り返ることはあまりしないが、今回の展覧会がとてもいい機会になった。自分の絵は個性がなく、マンガ的ではないと、ずっとコンプレックスがあった。でも逆に主張しすぎない絵だからこそ、素晴らしい原作に出会えたと思っている」

記者の前で挨拶する小畑健

記者発表の後には、小畑の作業場を再現したというスペースで、作画する様子も公開された。

下絵にコピック(イラストで用いられる高品質のカラーマーカー)で色付けをする手つきは、とても細やかで、ひと塗りひと塗りの所作が美しく丁寧であることがわかった。このようにして大ヒット作が生まれているのかと想像すると、ファンは興奮せずにはいられないだろう。

挑戦し、進化し続ける「未来」 

今回、記者発表の中で大きなサプライズがあった。本展にて「DEATH NOTE」の新作読み切りの冒頭10ページが初公開されることが発表されたのだ。

DEATH NOTE」の読み切りが描かれるのは2008年以来のこと。その読み切りは、この後続く、新潟や大阪での開催ごとにページが追加されていく予定なのだとか。

なお、この読み切りのネーム全編が7月13日(土)午前0時(7月12日 24時)に、漫画アプリ『少年ジャンプ+』で公開されることもアナウンスされた。

また公式ショップでは、今回の展覧会の図録や複製原画、ポスター、ポストカードなどが販売されている。

 

漫画の枠を超え一つ一つの作品として成立している原稿や原画は、じっくりと見ているとあっという間に時間が過ぎてしまった。それでも「NEVER CONPLETE(まだ完成しない)」だという小畑健。その進化の過程を体感できる展覧会だろう。

『小畑健展 NEVER COMPLETE』の詳しい情報はこちら

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ライタープロフィール

八木志芳  ラジオDJ、ナレーター

大学卒業後、IT企業・レコード会社を経て、ラジオ福島にてアナウンサー、ディレクターとしてのキャリアをスタート。Tokyo FmグループのMUSIC BIRDを経て現在は関東を拠点にフリーのラジオパーソナリティー・ナレーターとして活動。FM FUJI『SUNDAY PUNCH』レポーター、千葉テレビ ナレーションなどを担当。漫画とラジオと音楽が好きな人。

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カメラマンプロフィール

中村悠希

東京を拠点に活動。フェアやグループ展に参加するほか、2017年には個展を開催。

http://yukinakamura.org

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