買い手のつかない魚介を味な一品に、「豊洲もったいないプロジェクト」2号店がオープン

豊洲プロジェクト

5月に参議院本会議で「食品ロス削減推進法」が可決されるなど、近年、日本でもまだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」の問題に大きな関心が寄せられている。

日本の年間食品廃棄量は約2759万トン。そのうち、本来食べられるはずの食品は643万トンにも及ぶ(参照)。これは毎日、全国民が茶碗1杯分のご飯を捨てているのと同じだ(参照)。

この状況に「もったいない!」と腰を上げたのが、東京を中心に十数店の飲食店を展開するMUGEN2015年、食味に問題がないにも関わらず買い手がつかない食材をおいしく調理して提供する「もったいないプロジェクト」を立ち上げ、同年に海鮮居酒屋、築地もったいないプロジェクト魚治を有楽町で開店。そして、201961日、2号店となる豊洲もったいないプロジェクト魚治 中目黒(以下魚治 中目黒)をオープンした。

豊洲もったいないプロジェクト魚治 中目黒

「見たことのない魚が食べられる」と話題に

 

MUGENと共に「もったいないプロジェクト」を始動させたのは、飲食店のプロモーションを行うエードットと、豊洲市場の仲卸、山治(やまはる)だ。エードット代表の伊達晃洋が、当時築地市場の仲卸に携わっていた山治代表の山崎康弘から、「味に問題がないのに、サイズが規格外だったり流通の過程で傷がついてしまったりといった理由で買い手がつかない素材が毎日5%は出てしまう」と聞いたことがきっかけだった。

傷のある魚やサイズの大きな魚は消費者から「味が落ちるのでは」と先入観を持たれ、小さな魚や珍しい魚は、「どう調理すればいいか分からない」と避けられてしまう。しかし、味は普通の魚と何ら変わらない。

「それならば」と、伊達と山崎が相談したのがMUGEN代表取締役の内山正宏だった。築地に直接買い付けに行き、自社の飲食店で提供しているMUGENなら、規格外の魚や珍しい魚も扱えるだろうと考えたからだ。

その読みは当たり、MUGEN、山治、エードットが協力して開店した有楽町の「築地もったいないプロジェクト魚治」は、「ほかでは見たことのない珍しい魚が出てきて面白い」「おいしく食品ロス削減に貢献できるし、食材にも詳しくなれる」と、連日満席になるほどの人気店となった。中目黒店では新たな仲卸と提携しておりメニューは異なるが、買い手のつかない「もったいない食材」を生かす姿勢は同じだ。

メニューはその日の食材で決める

 

しかし、買い手のつかない食材は、毎日決まったものが決まった量で手に入るわけではない。どのような仕組みで運営しているのだろうか。魚治 中目黒で料理長を務める櫻田雄士に聞いた。

「通常のセリは朝7時ごろからですが、傷物や規定のサイズ外の食材のセリは10時ごろから始まります。そこでは、15万円ほどする魚が、大きすぎるという理由だけで3万円になることもあるんです。それでも買い手がつかないものが出ますから、僕らはそういった素材を『もったいない食材』として仕入れているんです」(櫻田)。 

何が仕入れられるかは日によって変わるため、櫻田は店に戻ってから開店までの間に、その日のメニューを考える。

「普段扱わない魚も多くて手間がかかりますし、慣れるまでは大変でした。でも、以前から積極的に市場や産地を訪れ、多様な魚に触れてきたことが力になりました。どんな魚も一度は見たことがあるし、身質を見ればどう調理したらおいしいかが分かるので、慌てずにメニューを組めるんです」(櫻田)。 

看板メニューは『おこげサンド』と『てま天』だ。写真は、大きさが通常の3倍ほどあったため買い手がつなかったハモを天ぷらにして、米のおこげに挟んだ『ハモ天おこげサンド』。 

櫻田は「もともとハモは骨切りという作業が大変なんですが、大きいと骨も強くなるので余計力がいるし、取り除くのにも時間がかかります。でも、手間を惜しまなければ身はふわっとしていておいしいんです」と話す。

 その言葉通り、おこげや天ぷらのザクザク感と、ふんわりした身の食感の違いが絶妙だった。

『てま天』は、のりの天ぷらで、米とその日の「もったいない食材」を包んだ手巻き寿司。写真のウニは、搬送中に形が崩れ商品価値がなくなったものだが、味は濃厚で通常のウニと比べて全く遜色がない。

たっぷりと厚みがあり、まろやかなサワラ、カツオ、ホウボウの刺身。顔や腹に傷があり買い手がつかなかったというが、刺し身にしてしまえば分からない。 

同店では、旬で獲れすぎたために市場で余ってしまう食材も「余りの福こそ恵の宝」を合言葉に積極的に活用している。写真は今年豊漁だったホタルイカを使った南蛮漬けだ。

形が崩れていたり、量が少ないなどの理由で刺し身や煮付けにはできなかった食材を数種合わせた『魚メンチ』。この日は「下処理が難しそう」というイメージから敬遠されがちなモウカザメの身を主に使用していた。

ほかにも、魚のアラや大根をおろしたときの絞り汁をうま味たっぷりのあら汁にしたり、魚の骨もパリッと揚げてせんべいにするなど、食材の細かい部位まで余すところなく活用し、店での廃棄も極力減らすように意識している。

中目黒店独自の試みとして、料理のテイクアウトのほか、その日豊洲市場から仕入れた新鮮な「もったいない食材」の店頭販売も行っている。今後は各食材の背景やおすすめの調理法を紹介し、家庭内での「もったいない食材」の活用も促したいという。

食料自給率が40%に満たないほど低く世界中から食料を輸入する一方で、その多くを廃棄している日本。今後ますますこの問題は注目されていくことが予想される。魚治 中目黒を訪れ、おいしい「もったいない食材」に舌鼓を打ちながら、フードロスについて考えてみるのはどうだろうか。

豊洲もったいないプロジェクト魚治 中目黒の詳細はこちら

テキスト:飛田恵美子(公式HP 言祝ぐ)
写真:中村悠希
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