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江口宏志が手がけた、元薬草園を改修した注目の蒸留所とは

江口宏志が手がけた、元薬草園を改修した注目の蒸留所とは

テキスト:間庭典子

千葉県大多喜市にある薬草園跡地を引き継ぎ、2018年の夏にクラウドファンディングにより設立されたmitosaya(みとさや)薬草園蒸留所を知っているだろうか。

蒸留所では、1万6000平方メートルの敷地に栽培された約500種類もの薬草植物の果実などを原料に、日本製のボタニカル(植物性の)ブランデーを製造している。敷地内での薬草の中から選定する一方、野生種や市場外の果物なども積極的に用い、日本各地の生産者と連携するなどその取り組みが注目されている。

立役者はブックショップユトレヒト(UTRECHT)の元代表、江口宏志。「本」から「蒸留」の分野へ、植物の可能性に挑み蒸留家に転身した

江口は『オー・ド・ヴィー』(フルーツやハーブを用いて作る蒸留酒)の本場、南ドイツの蒸留所スティーレミューレ(Stählemühle)で蒸留家クリストフ・ケラーに師事した。偶然にもケラーのバックグランドも出版業。出版社の権利を譲り、蒸留所を立ち上げた人物だ。ケラーが世に送り出しているブランデーは味はもちろん、ボトルデザインやネーミングにも優れ、そのまま棚に飾りたくなる存在感を放っている。「酒は開封して飲んでみないと評価できない。でもその前に手に取ってもらわないと伝わらない」と江口は話す。

mitosaya蒸留所で作られたシロップ

かつての師匠は目標となり、今はライバルという立場に変わった。「人が編み出す本と、自然の恵みから蒸留するブランデーという違いがあるものの、出版と蒸留には共通することが多いんです」と江口は語る。じっくり読み込む本よりも、受け手の反応がダイレクトに伝わるのが酒の醍醐味だという。

薬草園の建造物は温室を試飲もできるテイスティングルームに。建築家の中山秀之によりリフォームされ、そのまま活用している

資料館だった建物が蒸留所になった

mitosayaではユズの果実や皮、次郎柿など日本古来から親しまれた植物を発酵させた醸造酒を連続式蒸留機によりじわじわと蒸留。熟成されたボタニカルブランデーは来年、出荷予定だ。酒の製造のみではなく、ハーブティやコスメ、キクやゼラニウム、レモングラスが原料の虫よけハーブウォーターなど幅広い植物由来製品を開発している。

この夏には園内の養蜂場でハチミツも製造した

クラウドファンディングは、当初の目標額をすぐに達成し、さらには700万円も上回る約1700万円が集まった。賛同者も700人近くになるなど、その可能性には多くの人の期待が集まった

現在、月1回の蒸留所案内も開催。薬草園を自由に散策し、リースづくりなどのイベントや販売会が催され、植物と親しみ、触れ合える1日を過ごせる(次回開催は、12月16日)。「植物の持つ魅力を凝縮し、世に伝えたい」と語る江口の農園に足を運んでみてほしい。

mitosaya薬草園蒸留所の詳細はこちら

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