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スマートフォン時代の観光案内所のあり方

スマートフォン時代の観光案内所のあり方

2019年9月12日に豊島区観光セミナー『世界目線で考える。〜インバウンド先進都市「としま」を目指して〜』が開催された。今回は、観光案内所の活用がテーマ。ゲストスピーカーには、豊島区、豊島区観光協会とパートナーシップ協定を締結しているタイムアウト東京代表の伏谷博之、日本最大級の観光案内所である東京シティアイや中央区の観光案内所など数多くの観光案内所の企画運営を担う、JTBコミュニケーションデザインの大町智美、そしてトリップアドバイザー代表の牧野友衛の3名が登壇した。参加者には豊島区の文化観光課をはじめ豊島区観光協会、JR東日本などの鉄道関連会社、サンシャインシティなどの各社が集まった。

セミナーでは、最初に区長の高野之夫が挨拶。
「2020年に向けて豊島区は、国際アートプログラムの展開、庁舎跡地を民間事業へ貸出し周辺施設とともに8つの劇場でにぎわう文化拠点を作るなど、さまざまな取組みへ挑戦している。
直近の2019年11月には、複合型の商業施設ハレザ(Hareza)池袋のオープンとともに、11カ月にわたってさまざまな舞台芸術を上演する『こけら落としシリーズ』、またアニメ界のトップ企業とも連携を組む『池袋アニメタウンフェスティバル』も開催する。アニメや伝統芸能など、世界的にも人気のあるテーマを扱い、インバウンドに力を入れたプロジェクトを進めている」と話した。


高野之夫(豊島区長)


豊島区観光振興プランでは、国内外からの多様な来訪者を受け入れるために3つの基本方針を打ち出している。

・人と文化の交流によるとしまの魅力の創造(I 観光資源魅力向上・創出戦略)

・訪れたくなるとしまの国内外への発信(II 情報発信・誘客戦略)
・多様な来街者のためのとしまの環境整備(III 受入基盤・観光推進体制強化戦略)

これらの取組みを推進する一方で、実際の現場ではまだまだ課題も多い。特に、観光案内所はスマートフォンを通じて最新のガイドや情報収集が主流となった現在においてはその存在意義が問われている。


世界目線からコンテンツを引き出す

伏谷博之(タイムアウト東京)

伏谷は、そもそもインバウンド・ツーリズムの拡大で何を目指すのか、という初歩的な観点から話し始めた。観光案内所については、スコットランドの事例を紹介。観光客が増加する地域でも、観光案内所は減少していることを指摘した。ただ、駅や駅周辺という立地の良さや世界のあらゆる地域からの来館者があるなどの利点もあることから、観光案内所を『多様性社会の小さなプロトタイプ』と読み替えて、その新たな可能性と役割について考えてみるのも面白いのではないかと提案した。


口コミランキングから知る、訪日外国人の目線

牧野友衛(トリップアドバイザー)

牧野は、「トリップアドバイザーで知る インバウンドの最新動向」を切り口に、訪日外国人旅行者の目線からコンテンツを見直すことの重要さを伝えた。
世界最大級の旅行プラットフォームであるトリップアドバイザーにおいて、膨大な旅行者の口コミは大きな宣伝効果を持つ。また、近年では日本在住者の口コミ利用数も増え、これらは地元の人々が集うような地域に密着した場所を訪れたい訪日外国人への情報共有にもつながる。
近年では、よりローカルな体験を重視したツアーに人気があり、2019年に発表した『外国人に人気の日本の体験・ツアーランキング』では、20位内に日本の素朴な家庭料理を教える3つの料理教室がランクインしている」(牧野)


続けてローカルな体験が好まれる例として、トリップアドバイザーの口コミから評価する『豊島区で外国人に人気のホテル、レストラン、観光スポット(2019年)』のランキングを紹介した。その中でホテルランキング1位のファミリーイン西向は、少人数で行われる個人経営の庶民的な宿泊所にもかかわらずランキングトップを飾っている。同社からは最も卓越した サービス、品質、お客さま満足度で審査し年に一度授与されるトラベラーズチョイスアワード2019にも選ばれた。このホテルの特徴は、まるで家族のように接してくれるスタッフの温かなフレンドリーさと、真心を込めたホスピタリティーにあるという。

「観光地における訪日外国人への
対応には、語学能力の正確さよりもまず、『受け入れる姿勢』が重要。訪日外国人による口コミランキング上位の共通点は、英語のメニュー対応のほかに、フレンドリーであることも挙げられる。英語が通じる通じないということよりも、間口を広げて対応することが大事。そのことは、観光案内所にも求められるのではないか」(牧野)

 

観光案内所について、現場からの声

大町は、訪日外国人を受け入れる観光案内所のプロとして施設事務局の運営や地域活性化のプロデュースも担う立場から、現場の声や施策を伝えた。日本では認定制度を設けるなど観光案内所を増やす支援をしてきており、2018年末には全国で984カ所まで拡大。2020年までには1500カ所まで増やす予定だという。しかし、訪日外国人数が増えている一方で、観光案内所への来訪者数は微増にとどまっており、実質的には横ばいの現状があると大町は指摘する。来訪者数が伸び悩むのは、手軽に情報を得られるPCやスマートフォンの普及も理由の一つだが多言語に対応できるスタッフの人員不足も挙げられる。日本では近年、特に自然災害が多く、台風などの災害時には、リアルな情報を求める訪日外国人が観光案内所に詰めかけて、対応が追い付かないこともあったという。

大町智美(JTBコミュニケーションデザイン)

「観光案内所はニーズに合わせたコミュニケーションを提供できる場として、多言語での対応が必要。人員不足への対応として、都市の駅構内などではタッチパネルで操作できる観光案内板や、AIロボットの実証実験などの無人化対応が進んでいる。また、東京駅丸の内南口KITTE地下1階にある総合観光情報センターの東京シティアイでは、スタッフが実際に街を歩いて手描きのイラストマップを作成するなど、自らの目線で得たまさにローカルな情報発信を重視するなど、そこでしか得られない情報の充実にも注力している。また滞在の合間に日本文化を気軽に楽しめるように、折り紙や習字体験を提供したり、アレルギーや宗教により食べられない食材がある旅行者のために最適な店の紹介など、小さなところから利用者に寄り添った案内を心がけている」(大町)

 

ローカル目線で考えるインバウンドと街づくり

「インバウンド・ツーリズムとは、観光行動を起点とした新しい市場の形成と、持続的な発展を目指すもの」で外国人旅行者も巻き込んだ街づくりであり、これまで異なるカテゴリーと考えられてきた日本に暮らす外国人も巻き込んだ取組みについても重要さを増してくると伏谷は語る。また、体験価値を重視する傾向が世界に広がる中、観光案内所自体が訪れたい場所として目的地化することが必要であり、観光案内所がトリップアドバイザーのエクセレント認証を受けられるような、そんな場づくりを目指したいとも語った。
2019年12月5日には、伏谷が総合プロデュースを手がけるアートセンター併設型観光支援施設shibuya-sanが開業する予定だが、豊島区でも観光支援機能の強化に取り組むという。観光案内所に新たな役割は見つかるのか。引き続き、追いかけてみたい。

世界目線としま



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