ウィーン国立歌劇場が来日公演を行う。上演される2つのオペラのうち、今回紹介したいのはリヒャルト・シュトラウス作曲の『ばらの騎士』だ。
舞台は18世紀のウィーン。元帥夫人(マルシャリン)のマリー・テレーズは年下の青年伯爵オクタヴィアンと恋仲だが、自身の衰えを感じ、彼がやがて自分のもとを去って若い恋人を作るだろうと予感する。さて、金目当てで新興貴族ファーニナルの若い娘ゾフィーと婚約したいとこのオックス男爵から、婚約者に銀のばらを届ける使者を紹介してほしいと頼まれたマルシャリンはオクタヴィアンを推薦。するとオクタヴィアンとゾフィーは恋に落ちて……。
自身の老いを悟り、悲しみながらもそれに耐え、若い恋人たちのために毅然(きぜん)とした態度で一肌脱ぐマルシャリンの姿は胸を打つ。若い女性がヒロインとなることも多いオペラの中で、人生の曲がり角を迎え、それを受け入れていく彼女は、極めて特別な魅力を持ったキャラクターだ(もっとも劇中の彼女は30代なのだが)。
今回、そんなマルシャリンを歌うのは、カミラ・ニールント。新国立劇場の2007年の『ばらの騎士』でもこの役を演じ、2016年の『サロメ』の題名役も務めた。この2つの舞台で見せた卓抜した表現力と存在感は忘れ難い。同歌劇場の音楽監督フィリップ・ジョルダンの指揮、古き良きウィーンを描いたオットー・シェンクの演出。チケットは高額だが、一生の思い出の代金としては決して高くない。
※開演は15時(26日のみ14時)から/チケットは26,000円から(席によって異なる)
テキスト:高橋彩子


