「東京都美術館」で、大正末期から現在に至る国内の5人の刺し手たちの活動を見つめる「上野アーティストプロジェクト2025 刺繍―針がすくいだす世界」を開催。布地などに針で糸を刺し、縫い重ねる手法によって形作られた多彩な造形と表現に注目する。
針を布の表裏に通す反復の中で自分だけの世界に潜り込み、安らぎや解放をもたらす行為といわれる刺繍(ししゅう)。同時に、補修や装飾、信仰などを通じて各地で育まれ、異なる時代や土地の人々の暮らしを想像させる手わざでもある。
刺繍職人の家に生まれ、伝統の技に革新を重ねた平野利太郎(1904~1994年)。尾上雅野(1921~2002年)は、羊毛の糸で絵画的な刺繍を展開し、岡田美佳は記憶の風景を自由なステッチで描く。
また、自分の奥底に流れる時間や感覚を確かめるかのように、日々糸を刺し続ける伏木庸平。そして望月真理(1926~2023年)は、古布の再生と祈りから生まれたベンガルの針仕事「カンタ」に共鳴した。
それぞれが手を動かし、布の上にすくい上げた「かたち」と向き合うことで、シンプルな道具とともに続けられてきた刺繍の意味と可能性について考えらされるだろう。
※9時30分~17時30分(金曜は20時まで)/入室は閉室の30分前まで/料金は800円、65歳以上500円、学生・18歳以下無料




