「神奈川県立近代美術館 鎌倉別館」で、川口起美雄の半世紀に及ぶ創作の軌跡をたどる回顧展「川口起美雄 Thousands are Sailing」が開催。初期の代表作から初公開の最新作まで、新作10点を含む約40点の絵画とオブジェを一堂に展観する。
川口は、目に見えるものを描き、誰も見たことがない風景を現出する作家。ウィーンで学んだテンペラと油絵具の混合技法による作品は、独自の質感と寓意(ぐうい)が交錯し、その詩的な世界観は文学者や詩人にも高く評価されている。
1970年代以降、川口は「故郷を喪失したものたち」の旅の記録者として作品を描いてきた。その背景には、ウィーンで出会った国を追われた学生たちや、国内外の不安定な政治情勢があるという。居場所を求めてさまよう人々のために描かれた景色は、個人の記憶を超え、誰もが心のどこかに抱える懐かしさを呼び起こすだろう。
広大な幻想風景から、動植物をモチーフとした自画像、そして写実的表現。川口は作風を変化させながら、あまたの人々とともに旅を続けてきた。会場で新たな詩情を紡ぎ出す絵画世界を堪能してほしい。
なお、2025年11月3日(月・祝)は無料で鑑賞できる。
※9時30分~17時(入館は16時30分まで)/休館日は月曜(祝日の場合は開館)/料金は700円、20歳未満・学生550円、65歳以上350円、高校生100円、中学生以下は無料
