「ワットミュージアム(WHAT MUSEUM)」で、現代日本の絵画におけるリアリズムを牽引(けんいん)する画家、諏訪敦の大規模個展が開催。ヌードと頭蓋骨を組み合わせた初期の傑作、亡き人々を遺族からの依頼で描いた肖像画、自身の家族を見つめたシリーズなど、代表作から最新作まで約80点を通し、画業の変遷を多角的に紹介する。
コロナ禍以降、「人間を描きたいという気持ちを失ってしまった」と語る諏訪。大型絵画の『汀にて』は、新型コロナウイルス感染拡大で、モデルを使った対面の制作ができなくなった諏訪が、家族を介護しながら自宅アトリエで進めてきた静物画研究の集大成だ。古い骨格標本、プラスター、外壁充填材などアトリエで見いだした材料でブリコラージュした人型が描かれている。
また、『汀にて』の制作過程に密着し、記録したドキュメンタリー映像を上映。アトリエの風景や、諏訪の緻密な作画プロセスを美しい映像で鑑賞できる。
さらに、芥川賞作家の藤野可織が、制作に没頭する諏訪のアトリエを度々訪問し、その絵の印象を元に掌編小説を書き下ろした。小説はハンドアウトに印刷して鑑賞者に配布。諏訪が「死んで静まっているもの」と語る静物画たちがどんな物語となるのか、絵画と文芸のコラボレーションに期待したい。
肖像画家が再び人間を描けるようになるまでの、克服の過程を開示する本展。「見ること、描くこと」を己に厳しく問い続けてきた諏訪の、現在進行形の思索と創造を目撃してほしい。
※11〜18時(入館は17時まで)/休館日は月曜(祝日の場合は翌日)/料金は1,500円、学生800円、高校生以下無料



