C-GRAPHIC/TAIPEI 2020年代台北のグラフィックデザイン
「Recall Unfit Legislators」 
Echo Yang
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大阪、11月に行くべき無料のアート展8選

予定のない日こそ、アートに寄り道を

Chikaru Yoshioka
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秋の気配が濃くなる11月、大阪や京都のギャラリーやアートスペースが一斉に色づく。印象が弾けるグラフィックデザイン、呼吸するような線が走るドローイング、奇妙で愛しいイキモノたちの陶器、そしてパフォーマティブな彫刻作品。感性をくすぐる展示が、街のあちこちで始まっている。

ふらりと立ち寄って、思いがけない出合いを持ち帰ろう。

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  • アート

SUCHSIZE」で、チ・L・グエン(Chi L. Nguyễn)と野村在を迎え、記憶の共有と継承を探求する展覧会が開催。普段交わらないはずの他者の記憶に触れたときに起こる、記憶の想起や認識の変容についての可能性を探る。

両アーティストは、個人や家族など私的な記憶から作品を構成しつつも、記憶が個人だけに帰属することはまれであることを示唆する。そして、記憶が世代を超えて伝達されていることを思い出させてくれる。

ベトナム人アーティストのグエンは、口承の伝統や工芸との対話を通して「継承された記憶」を探り、伝承や歴史がアイデンティティーを形作る過程を考察。ライスペーパーの上に家族の記憶や植民地時代の記録を思わせるイラストを描き、何世代にも及ぶ歴史の視覚言語を重ね合わせ、記憶の境界を曖昧にする。

アメリカを拠点とする野村は、失われた記憶の継承をテーマにしたパフォーマティブな彫刻作品を発表。本作は、わたあめ製造機能を備えた彫刻と、認知症の人が所有する過去の写真が印刷されたあめを中心に構成される。鑑賞者はあめを選び、それから制作される「記憶のわたあめ」を食べるという体験を促される。

本展では、これら他者の記憶や物語に触れる作品を通して、多文化が共生する大阪市西成区の社会構造に語りかける芸術交流を生み出していく。

  • アート

「京都dddギャラリー」で、「C-GRAPHICTAIPEI 2020年代台北のグラフィックデザイン」が開催。漢字文化圏で活動する現代グラフィックデザイナーを紹介した書籍『C-GRAPHIC INDEX』を出発点に、台北を拠点とする10組のデザイナーの言葉と作品を空間化する。

国際的なデザインシーンで存在感を増す中華圏のデザイナーたち。そのビジュアルはSNSを通じて広く共有されているが、その背景にある文化や思想はまだ十分に語られていない。『C-GRAPHIC INDEX』は、漢字文化圏のグラフィックデザインを新たな視点で整理し、その現在地を示そうとした試みだ。

繁体字を使う台北に焦点を当てる本展では、198090年代生まれのミレニアル・Z世代のデザイナーたちによる、文化·芸術分野のグラフィックデザインを紹介する。

彼らがどこで学び、何に影響を受け、どんな思想で制作しているのか。誌面では伝わらない実物展示を通して、その背景と、台北のデザインが映す時代と文化を体感できるだろう。

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  • アート

Yoshimi Arts」で、日本独自のサブカルチャーを媒介とした美術作品を制作し始めた世代の一人、西山美なコの個展「西山美なコ ~destiny of Sugar Rose~」が開催される。

西山は、等身大の「リカちゃんハウス」を思わせる『ザ・ピんくはうす』など、少女文化を援用した立体作品で注目を集めた。『♡ときめきエリカのテレポンクラブ♡』と『もしもしピんク~でんわのむこう側~』における1990年代日本の風俗産業をモチーフにしたプロジェクトでは、少女文化と性風俗の象徴でもあるピンクの持つ二面性が、消費文化と交差していたことを物語る。

また、砂糖や卵白といった菓子の材料を用いて作った王冠『Sugar Crown』やバラなど、甘くはかない作品を制作。時とともに姿が変化していく様子を捉える。

本展では、2000年代から砂糖で制作している『Sugar Rose』を展示。20年あまりの時を経たものから現在までの本作を一堂に揃え、おのおのがゆっくりと移ろっている姿とともに時の流れを可視化する。

  • アート

NEW PURE +」で、ユニークで愛嬌(あいきょう)のある架空の「イキモノ」をテーマに、独自の世界観で器や置物などの陶芸品を生み出す陶器作家・廣田哲哉の展示販売が開催される。

作品に関して、廣田は以下のように言葉を残す。「自分から生まれてくる想像のイキモノをモチーフにした器を制作しています。形を作るのも楽しいのですが同時に窯の中で起こる色の変化も僕は魅了されています。釉薬(ゆうやく)が溶けていくときに色が出るのです。シャッターチャンスのようなその綺麗な一瞬を切り取りたいと思い繰り返しているんだと思います」

不思議なイキモノが形作られた食器や花器。この機会に廣田の作品世界に触れてほしい。

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  • アート

「エースホテル京都」のロビーギャラリーで、画家・ジミー大西のスピンオフ展「もうひとつのホームタウン」が開催。2026年冬に開催予定の展覧会「ホームタウン」に先駆けて実施される展覧会で、代表作12点を展示する。

1992年、テレビ番組の企画をきっかけに本格的に絵を描き始めた大西。芸術家の岡本太郎から「四角い枠を気にせず、キャンバスからハミ出しちゃえばいいんだ」という言葉を受け、本気で画家を志した。

お笑い芸人を辞め、最初に選んだ行動はスペインへの移住。そこで創作スタイルを大きく変化させた後も、世界各地を旅しながら多彩な作品を生み出してきた。

本展では、創作活動を通じて出合った世界の場所に焦点を当て、その土地から生まれた作品を紹介。また、京都を「もうひとつのホームタウン」と位置づけ、描き下ろしの新作を初公開する。

33年の画業を経てなお進化を続ける大西の、「色と場所の物語」を目撃してほしい。

  • アート

「京セラギャラリー」で、「EXPOSING」が開催。京都市立芸術大学大学院を修了し、一線で活躍するアーティストの新平誠洙、寺岡波瑠、肥後亮祐の3人が結集する。

本展では、「2025年日本国際博覧会」の開催を一つの契機として、現代社会における「展示」という行為の本質を再考。単なる陳列ではない「展示」がどんな新しい価値や関係性を生み出しているのか、その仕組みを深く掘り下げていく。

建築家の寺岡は、これまで世界の諸相を建築的な構造によって解釈しながら、アレゴリカルな装置へと置き換えることで、暗黙のものとされている世界の不条理を提⽰してきた。

相いれないはずのイメージを重ね合わせる仕方で絵画を描く画家の新平は、⾮決定的で曖昧な像を画⾯上に浮かび上がらせることで、対峙(たいじ)する者の「⾒る欲望」を刺激する。そして美術家の肥後は、地図や辞典、測定器といった私たちが盲⽬的に基準としているものの根拠をたどり、史実に潜むそれらの虚構性を明らかにしてみせる。

若き才能が織り成す作品群を通じ、「展示」という行為に隠された奥深さを体感してほしい。

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  • アート

宮城県を拠点に活動し、ドローイングや、建築素材を用いたインスタレーションを発表してきた菊池聡太朗の個展が、「千鳥文化」で開催。「余り」の土地に宿る時間や記憶をテーマにしたドローイング作品を中心に紹介する。

菊池は、主に荒れ地をテーマとしながら、風景や場所の痕跡、身体的な経験、人間とのつながりについて考察した作品を制作。また、空間や什器(じゅうき)の設計・制作、森林環境や木材に関するリサーチプロジェクトを共同で行うデザインチーム「建築ダウナーズ」、出版やキュレーションを共同で行う「PUMPQUAKES」のメンバーとしても活動する。

本展では、東日本大震災の津波の後に残った宮城県沿岸部の松林を継続的に観察しながら描いたシリーズや、当時の地震による崖崩れを覆うブルーシートが今も残る風景を描いた作品群を展示。作品は、時間の経過の痕跡、目の前の風景の現れから見えてくる社会や人間とのつながりについて描いている。

また、戦後に植林されたが、使われていない宮城県丸森町の山をリサーチし、林業や木材との関わりをもとに描いた新作も出品する。

会期中、作家在廊時には、空き地や荒れ地に生息するセイタカアワダチソウを煎じた茶を振る舞う。作品を前に、土地や風景とのつながりを鑑賞者とともに考える場となるだろう。

  • アート

「大阪中之島美術館」で、関西ゆかりの若手アーティストを個展形式で紹介する展覧会「Osaka Directory 10 Supported by RICHARD MILLE 光男」が開催。(パラフィン)とシルクスクリーンを組み合わせた表現で知られ、近年は大型の立体作品にも取り組む、素材と表現の可能性を拡張する作家・金光男に焦点を当てる。

温度によって溶けたり固まったりし、その過程で透明と不透明を行き来するの変化や、音階を自由に行き来するスライドギターの音色。金は、これらを複数の場所やアイデンティティーの間で揺れ動く人間の在り方に重ねる。

本展では、それらを通じて、越境する人々の生き方に思いを馳せる空間を創出していく。気軽に足を運んでほしい。

※10〜17時/休館日は月曜、11月25日(11月24日は開館)入場は無料

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毎年、タイムアウトで発表している世界で最もクールな街」ランキング。世界中のライターや編集者により推薦されたエリアは、文化・コミュニティー・住みやすさ・ナイトライフ・飲食・街のにぎわいなどの基準で評価される。2025年度版では、東京・神保町が堂々の第1位に輝き大きな話題となったが、大阪・中津も世界ランキングで8位に躍進し、その魅力が世界に認められた。

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