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共感で人を集める

データに頼らない2人が考える、これからの都市と地方とは

2016217日(水)、タイムアウト東京が主催するトークイベント『世界目線で考える。「場」をつくる編』が開催された。今回は、東京を中心に約100店舗の飲食店を経営するカフェ・カンパニー代表取締役社長の楠本修二郎と、雑誌『自遊人』を発行し、宿「里山十帖」を経営する自遊人代表取締役、クリエイティブ・ディレクターの岩佐十良の2名が登壇。第1部では、今まで取り組んできたプロジェクトをそれぞれが発表し、2部では、タイムアウト東京代表の伏谷博之が聞き手として参加し、2人が考える人が集まる仕組み、データの必要性、地方創生、インバウンドなど、多岐にわたる話題で熱いトークセッションが行われた。

楠本:みなさん、こんにちは。はじめまして。カフェ・カンパニーというか、一応カフェをやっております。会社自体は2001年に創業しましたが、僕自身は1995、96年からなんとなく飲食店を始めました。97、98年くらいに渋谷と原宿の間にあるキャットストリートというところで、木造アパートを改装してカフェにしたり、そこにクリエーターと一緒にアートギャラリーをつくったり。そんなことを始めたのが、僕とカフェとの出会いです。

『世界目線で考える。』というタイトルになってますけれども、そんな恐れ多いことをやろうと思ったわけではなく。まず僕の学生時代のことを話すと、お店のプロデュースを手伝ったり、ショーパブで働いたり、ブルースのライブハウスで歌ったり、いろんなことをやってました。そういう経験を通して、「場」の持つメディア性というかエネルギーというものを感じました。人がシンクロして共感しあったときにすごい強いパワーが生まれるなと。だから、僕は飲食業をやりたかったっていうより、人が集う場をどういうふうにつくるか、それこそが地域を元気にすることじゃないかっていうふうに思い始めたのが、今に繋がっているんだと思います。

当たり前じゃねえかって思われるかもしれないですけど、僕の学生時代はちょうど85年のプラザ合意があって、急激な円高とグローバルマネーが日本に入ってきた頃でした。日本の地価がバンバン上がって、日本の土地は下がらないって信じられてた時代でした。買って売ったら利益が上がるのは当たり前みたいな。ただ、僕は「そんなわけなかろうもん。もっと人が集まるみたいなことが本質じゃないか」と思い始めたのが、創業のきっかけです。だから、チェーンストアオペレーションのお店にも興味はありませんでした。1個1個地域を作っていく、土地の記憶を大事にして、その地域の表情を、カフェっていう風景をつくることによって盛り上げていこうみたいな、ことを考えました。

現在、社員は300人弱くらいになりました。店舗数は3月で100店舗になろうとしております。ただ「目指せ何百店舗!」みたいなふうには全く考えていません。なるべく1個1個、カスタムメイドでカフェをつくろうと思って、がむしゃらにやってたらこんなふうになっちゃったっていう、全く無計画な会社でございます(笑)。

カフェ・カンパニーには、「Community Access For Everyone(=cafe)」という造語があります。僕たちのライフワークは、とにかくコミュニティをつくることです。さっきも申し上げましたが、飲食店の役割は地域の表情をつくることだと、1にも2にも思っています。そういった化学反応を起こす場所、それがすなわちカフェであるということです。

「カフェのある風景をつくることで、感性豊かなライフスタイルを創造し、活き活きとしたコミュニティ型社会を実現する」(スライドより)こんなことを創業の時から言っておりましたが、なんとなくそんな時代になってきたかなっていうふうに思います。お隣にいらっしゃる岩佐さんのご活動をめっちゃリスペクトしてるんですけど、そういう地域の魅力をみんなで盛り上げていこうっていう、ある種の社会運動みたいになっていくんじゃないかなって思って創業しました。そして今では僕の想像を越える勢いでどんどん「だよね!」っていう感じになってきて、楽しいなと思っています。

カフェについていろんなことを語っているんですが、よく「縁側」または「ちゃぶ台」という言葉を使います。この写真(上)みたいに、サザエさんとタラちゃんが縁側でほっこりしてたら、豆腐屋さんに会っちゃったみたいな、。この写真を撮った人がすごいですよね。「この瞬間になんでいたの?」感じですが(笑)。こういった縁側を作っていこうということですね。カフェっていうのは街の縁側になっていくという意味合いであります。

「サードプレイス」っていう言葉はなんとなく聞いたことあるかもしれないですけど、なんで「3rd」がひっくり返っているのかは後でお教えます。80年台後半に、レイ・オールデンバーグという社会学者人が、「成熟した都市社会にはサードプレイスが必要になる」っていうことを提唱しました。つまり、家でもない、職場でもない、第3の場所が成熟した都市社会には必要であると彼は言ってるんですね。

たとえばロンドンはパブとかがサードプレイスでしょうし、パリだと当然カフェがサードプレイスになります。スターバックスのハワード・シュルツが「アメリカにはサードプレイスがないから、俺らはアメリカのサードプレイスで出すんだ」っていうふうに創業されたってのは有名な話です。で、なぜ僕はその「3rd」を逆さにしているか説明します。僕はとにかく、濃いコミュニティを作りたかったので、「家でもない職場でもない」ではなく、「家でもあり」「職場でもある」場所を作りたいと思いました。つまり、リビングでもキッチンでもダイニングでも、ワークスペースでもあるみたいなところを作っておいたほうがいいんじゃないかと考えたんです。そんな感じで始めた活動の結果、僕の場合はカフェが増えちゃったんですが。当時の仲間たちは、リノベーションしてシェアオフィスやシェアハウスを作ったりしてます。この流れって加速してますよね。僕はサード・プレイスの概念のなかで、いろんなイノベーションが起きているっていうことかなと勝手に理解しています。


「そもそもなんでカフェやってるんだろう」という疑問に対する僕の答えは、「好きなことを商いにしないとあきまへん」です(笑)。僕は博多出身のミーハー者なので、飽きっぽいです。新しいものにすぐ飛びつこうとしちゃいます。でも、商売(=商い)は「飽きない」ですから、「サステイナブル」という意味で飽きることがない。自分にとっての商いってなんだろうなって考えたらこうなっちゃいました。
僕のなかでの原理原則であるカフェ曼荼羅みたいなものがあります。中心にはカフェと、僕が大好きな食べることと、旅をすることあります。そこにいろんなものを掛け合わせていくんです。例えば文化、暮らし、デザインだったり、または、僕はトライアスロンをやるんですが、それと関連して健康やスポーツ、医食同源みたいなものだったり。そういう掛け合わせのなかで新しいライフスタイルが生まれたりするんだと思います。最終的には地域の生産者と、都市生活者がどういうコミュニケーションとコミュニティを作っていくかみたいなことが、僕の最終的なライフワークだろうなって思っています。まぁそんな活動もちょろってやってるんですけど、岩佐さんの活動がすご過ぎるので、このへんは自遊人さんにお任せしたいなという感じでございます(笑)

ただ、こういう曼荼羅ができると、都市なのか地方なのかとかじゃなく、都市と地方が一緒になってコミュニティ化していくことによって、日本の地域がブランド化されて世界に羽ばたいていけるんじゃないかなと思うんです。創業のときからこの曼荼羅を大切にしてるということであります。

最後に何をやってきたかをざっと説明させてもらいます。一番最初に作ったカフェは、先ほど言った通りキャットストリートにありました。そのあと、東急東横線の高架下で「SUS-Shibuya Underpass Society-」というカフェをやりました。渋谷と代官山の間の最短回遊動線としてのレガシーを残しつつ、その下に即決和解好きのベンチャーがどんどん育成されるような商業の場を作ろうよ、と提案したのが始まりでした。残念ながら高架は取り壊されちゃいましたが…… 今ニューヨークでハイライン(ブルックリンにある、廃線になった貨物線路を再利用した空中緑道)というのが話題になっているのはご存知の方多いと思いますが、この話をすると「ハイラインのモノマネしたんですか?」っていう失礼なやつがいるんです。僕がやったのは2001年で、ハイラインは2006年ですから(笑)。

また、古びた高円寺の倉庫をカフェに変えたり、1965年に建った日産グループのオフィスビルをカフェとオフィスに改造して「CAFE246」というのをやったり。全農やサントリーの『伊右衛門』とのコラボレーション、東急ハンズのカフェのプロデュース、にんべんとお出汁をテーマにしたお店をやったり、そんなことをやってます。設計デザインだったり、商業施設の開発。越谷レイクタウンではコミュニケーションデザインをやらせていただいたり。

うちの会社は消費者という言葉の使用禁止令を出しています。「消して費やす人」と書いてもあまり意味がないんじゃないかと考えているので。今は消費者に向けたマーケティング活動は意味がない時代だと思っています。僕自身、消費者ではなく、「生活者=生あるもの(エネルギー)を活かす役割のある人」でありたいと思います。だから、生あるものを「産む」人と「活かす」人で1つのチームを作って、サプライチェーンじゃなくてコミュニティを作っていこうという発想で地域を盛り上げていくとおもしろいんじゃないかっていうことをずっとご提案しています。

この考えに賛同してくれた人と、いろんなことをやってきました。
高速道路のサービスエリアも生産者と生活者の接点になれるよねってことで、サービスエリア事業をやってます。バンコクで「88食堂NIPPON」という日本食のプレミアムフードコートをやったりしてます。あと、来年ホテルをやります。「WIRED HOTEL」っていうのを計画中です。来月は、新宿でニューヨークウエストヴィレッジのイタリアンレストラン「ROSEMARY'S」と一緒にお店をスタートします。

地域というものは本当に面白いです。鎌倉に僕の先輩が作った「surfers」というお店があります。レストランでもあるし、ライブハウスでもある。サーフィンもできる。でも、「これすごいだろ」という話ではなくて。こういうロケーションの場所は、日本にいっぱいあるんですよね。日本の海岸線は世界で6番目くらい長いんですけど、活用されてないなと思うんです。漁業権の問題とかいろいろあるのは存じ上げてるんですが、もうちょっと生活者に解放されて、漁業関係者の方々と一緒に盛り上げていくみたいな活動が増えていけばいいなと思います。以上です。駆け足だったので、どんなことを考えてるかっていうのはまた第2部で。

岩佐:みなさん、こんにちは。岩佐と申します。「里山十帖」という宿を経営しております。場所は南魚沼市、大沢山温泉という新潟県民も知らないようなところにあります。宿ってお話しましたけど、僕は自分の宿を宿だと思っていません。ここ(スライド)で「ライフスタイル提案型複合施設」っていう、ちょっと小難しい名前で書いていますが、僕は「リアルメディア」という言い方をしております。「里山十帖」に来てくださった方が、実際にリアルな体験をしてそれを発信していく、という流れがあると思います。僕は「ここもメディアだし、人間もメディアであって、どんどん人間によって拡散していくんだ」というような思いでここの施設をつくりました。その考え方が面白いよねってことで「グッドデザイン賞・ベスト100」をいただいたりしましたが、決して、うちの建物のデザインが素晴らしいとか、そういうことでいただいたのではありません。施設をメディアとして考えるということが面白いんじゃないかということでいただいています。

私のプロフィールをお話させていただこうと思います。東京、池袋の生まれで、東京育ちです。大学は武蔵野美術大学というところでインテリアデザインを専攻していました。在学中にデザイン会社を創業したんですが、途中でデザインに才能がないなと思い(大学時代からうすうす気づいていましたが)、封印して編集者に転身しました。
編集者としては、『東京ウォーカー』とか『TOKYO★1週間』という雑誌の、情報誌の特集記事を担当していました。ここでは「いかにして売るか」みたいなことをずっと考えていました。それがつまらなくなっちゃったと言うと、そういうものを今でもやってらっしゃる方に失礼になりますが。どちらかというと、もうちょっと深く踏み込んだものを作りたくなって、2000年に『自遊人』を創刊しました。

その後、2002年に食品の販売を始めました。今では雑誌の出版社が通販をやっていますが、雑誌が厳しいから通販、みたいなところがけっこう多いんですよね。でも僕の場合は、雑誌でどんな美味しいものの記事書くよりも、食べてもらっちゃったほうが早いだろってことで、ダイレクトに食べてもらいたかったんです。だからインターネットでの食品販売を始めました。

そして今から12年前、2004年に東京の日本橋から新潟の南魚沼というところに移転しちゃいました。移転した理由は、お米を勉強したかったからです。うちで扱っている食品のなかで主力にしていたのがお米なんですが、そのお米がどうやって作られているのか、リアルな現場を自分で見たくて、体験したかったので。

当初は2年くらいで戻る予定だったんですが、ずるずると、腰まで入って、ずぶずぶっと田んぼの中に入っていくごとに深くなっていって、2014年にいよいよ宿までオープンしちゃいました。当面新潟から抜け出られないだろういう状態にあります(笑)

オフィスはなんにもないところにあります。僕は自分でやらないと気が済まないタチなんです。人から話を聞いてもやってみないと分かんないじゃん、なんでもやってみたいっていう感じです。だから「あなたの仕事なんなの?」と聞かれると、編集者といえば編集者なんですが、デザインをする時はデザインをするし、企画のプランニングもするし、農業もするわけです。僕にとって1番重要なことは「伝える」ということです。雑誌も米作りも、物販も、味噌も作ったり、宿をやったり。これは全部「伝える」っていうキーワードで私の中で繋がっているんですね。

雑誌の話に戻ると、たとえば特集を読んだ方に何を感じてもらって、どうやってライフスタイルのなかに新しいものを取り入れてもらうかっていうことを考えながら作るわけです。それと同じように食品を作ったり、企画したり、宿をしたりしているんです。業態が変わっても新しい価値観をどうやってみなさんに知ってもらうか、ということです。

僕がやっていることは、簡単に言うと「世の中にあるモノとモノ、人と人を繋いで、新しい価値観をつくること」です。僕はこれを「ソーシャルラインデザイン」っていう呼び方をしています。最近イノベーションを起こさなければいけないみたいな話があちこちあって、そのなかに必ず出てくるのが「ICT」とか「新技術」とかですよね。でも、僕は意外とモノとモノが、そこにいる人と人の技術を結びつけたりとか、知識が結びついたらいろんなモノができちゃいますよねっていうことを話しています。ソーシャルをデザインするっていう話ではなく、その間を結ぶだけなんです。結んでいったらけっこうできますよね、それを再構築していくことが重要なんじゃないんですかっていう話をしたりしてます。

僕は20年以上ずっと雑誌を作ってきましたが、雑誌の伝える力が弱まっていると感じています。リアルな場の方が、食べちゃえとか、感じさせちゃえとか、ダイレクトに伝える力が強いと感じていて、僕はそれをずっとやりたかったんです。

ただ、実は旅館だけはやるまいと思っていたんですよ。旅館って24時間ずっとやっていなきゃいけないから。まわりに旅館をやってる人がたくさんいて、いかに大変かっていうことをよく見ていたというのもあって……でもたまたまお話をいただいて、急遽やることに決めたんです。そして、この後めちゃめちゃ大変なことが起こるんですよ。僕の本を読んでいただいた方はわかると思うんですけど、こっちがダメになり、あっちもダメになり……お金が次々とかかるわけなんです。これをお話すると、もっとリサーチをしておけばいいんじゃないとか言われるんですが、僕はそういうのをあんまりしないタイプなんです。なんでかっていうと、予備調査とかすると怖くてできなくなっちゃうんですよ。で、つまんなくなっちゃうんですよ。だから思っていいと思ったときはやっちゃえ。やった後でつじつまを合わせればいい、と思っています。自分ではつじつま合わせの天才だと思っているんですけど(笑)

「里山十帖」について、よく「十畳間なんですか?」「お部屋が十畳間なんでしょうか?」って聞かれるんですけど、十畳間の「畳」は字が違いますから(笑)。十帖の帖は10の物語、10の折本という意味です。スライドを見ていただくとわかりますが、例えば『自遊人』でいうと食の特集であり、健康特集であり、住の特集であり芸術特集である。「里山十帖」はそれらを実際に体験することができる施設なんです。

オープンから1年半ちょっとしか経っていないのに「なぜ話題の宿になったのか」。よく「雑誌を持っていたからこんなにお客さん入ったんじゃないの?」と言われます。私が言うのもなんですが、雑誌1冊では、わずか12室の客室を埋めることは不可能です(昔だったら十分埋められたんですが)。さっきお話ししたように、雑誌の部数が出なくなったからではなく、雑誌1冊では効果が見込めないんです。今は雑誌だけの情報、テレビだけの情報ではお客さんは動きません。僕は「共感の連鎖」「今は共感マーケティングの時代だ」といった話をよくさせてもらっていますが、要するに「雑誌からは共感がなかなか得られなくなった」ということです(雑誌だけでなく、他のメディアもですが)。じゃあ何で動くのか。今1番共感を得られるのって、おそらくSNSとかでチェックした「誰が行った」みたいな情報で、それを見た人が「じゃあ行かなきゃ」って動き出す。このスピード感はすごく早いです。今ってSNSで会社が潰れちゃう時代ですよね。逆に言えば、会社が潰れる代わりに、お客さんも動く時にはものすごく動く。今のうちの現状というのは、共感してくださった方がすごい勢いで広がって、うちに来てくださった、ということです。

今までの普通の旅館とかホテルって、最大公約数を狙っていて、どこに行っても金太郎飴みたいな同じようなことしかできなかったわけです。でも、僕らは全員に来てもらいたいと思っていません。一部のいいねって思ってくださる方だけに来てもらえればいいと思っているので、それが全然違ったのかなと。

「里山十帖」の周りには何もありません。何もないけど、美味しい店がある。綺麗な山がある。なんでもない風景がある。僕らが重要視しているのは、なんにもしないで過ごしてもらった時に、何を感じてもらうかっていうことです。たとえば、「里山十帖」にはスリッパがありません。なんでかっていうと、床材を6種類くらい使っているんですが、この6種類の床をどうやって感じてもらうか。僕らはわざわざ説明しないんですが、意外と「杉のこんな厚みの板はすごく感じがいいね」と言ってくださるんです。そういういろんな仕掛けがたくさんあります。たとえばベッドも、硬さや使っている布団が全部違うとか。

「食」に関してはすごく重要視しているので、契約栽培を進めています。今はどこでも契約栽培って言われていますが、実際のその地域で契約をして、生産者の生活まで責任を持って契約栽培をしているところってなかなかありません。うちはできる限りそれを進めていきたいと思っております。そうなると、料理は当然野菜中心になってきます。「里山十帖」が野菜ばかり出す理由というのは、野菜の美味しさとか、バリエーションの多さとか、本来持っている土地の力みたいなのを感じてもらいたいからです。僕が野菜が好きだっていうのもあるんですけども(笑)。でも1番には地域のものを、またその地域の底力、土の力みたいなものを知ってもらいたいということから野菜を中心にしています。あと、ご飯がメインディッシュなんです。旅館っていうと、牛肉とかがメインディッシュになるわけですが、1番最後に召し上がっていただく「ご飯」がメインディッシュなので、量も全体的に少なめになったりしてます。(最後のご飯のまえにお腹がいっぱいになってしまって、「ご飯はもう入らない!」ということが起きないように)

最後に「里山十帖」で、僕らが何をしたいかお話させてください。「里山十帖」っていう施設が真ん中にあって、都市に住む人と地元の住民と、地方の観光資源があり、僕らの商売は都市に住む人を集客して、地元の人を雇用して、地域の潜在的な観光資源をプロデュースする、ということです。重要なのはこの外側の繋がりです。都市に住む人と地元の住民の交流を進めること、そして、そこに移住を促進していくこと。今は人口がどんどん減っていく時代で、「地方創生」とか言われているわけですが、1番のポイントは「どうやって地方と交流して都市からの移住を促進するか」ですね。

だいたい自治体のやる政策っていうのは、第2子を産んだら10万円とか、第3子を産んだらいくらとかですよね。お金っていうエサをぶら下げたって、お金が目当ての人しか来ないですから。そんなことをするよりも、「いいね!この土地気に入った!」って言ってくださる人を連れて来ないといけません。そのために僕らは施設として何ができるかっていうことを考えます。

それから、潜在的な観光資源でもなんでもない棚田や山、水とかを観光資源にしていくこと。それによって「ラグジュアリーって本当はそういうことだよね」っていうような人たち、なんでもない景色、日常にあるなんでもないものを気持ちいいねって感じてもらえる人たちを引っ張ってくることによって、交流と移住の両方ができる。

さらに重要なのは、「うちの田舎なんもないじゃない。」と思っている地元の人たちに、「大沢山温泉なんて知らなかったけど、意外とあの辺いいみたいよ!」とかそういうことを感じてもらうことによって、故郷への自信が生まれて、そこで新しい産業とかも生まれる可能性があるんですね。僕らはそんなことをやりたいと思っています。
旅館に何ができるのか。観光に何ができるのか。といったことを考えながら里山十帖という施設を運営しています。これから僕たちは、楠本さんの100店舗とか全然及びませんが、10年間のなかで10拠点という、(これは数値目標ではないんですが)、それくらいを目標にしておかないと5拠点はできないんで(笑)それぞれの土地の魅力をつなげて再編集して発信するような施設を作っていきたいと思っております。以上です。ありがとうございました。

伏谷博之:僕のなかでは、想いを形にする二大巨塔のような存在の、楠本さんと岩佐さんに来ていただきました。実は今日初めてお会いになったそうですが、お2人の本を読まれた方は分かると思うんですけど、非常に似てる、共通項を感じます。まず、2人とも「うわ!やるぞ!」ってなっちゃうタイプだと(笑)。今までやってきたことを振り返ってみて、「ここがポイントだった」みたいなものってありますか?

楠本:僕は物件を自分から取りに行くタイプじゃないんですよ。剣道を昔からやってたんですけど、飛び込み面とか自分で飛び込むのは得意じゃありませんでした。来たのを、たとえば出小手とか抜き胴とか、せこい技が好きなんですよ(笑)。だから合気道みたいな、来たものを返すのが好きです。キャットストリートもそうなんですが、「どうしようかな」とか言われるとけっこう楽しいんですよね。

伏谷:なるほど。

楠本:そこからまず妄想がスタートします。そのときに僕がやるのは(今はもうあんまりやんないけど)、その土地の前にずっとしゃがみ込んで、人を見ます。だからたぶん変態と思われてたと思うんですけど(笑)。その人がどこから来てどこに向かおうとしていて、その人とある人がどういうふうに出会って、どんなご飯があったらハッピーな会話になるかなって。会話をイメージするっていうようなこととかですかね。だから、店前歩行量を調べたりはしません。そういう消費者発想はやらない。

伏谷:じゃあ街で楠本さんが2時間くらいしゃがみ込んでるの見かけたら、そこにカフェ・カンパニーが何かつくるかも?

楠本:やろうとしてます!間違いない(笑)。

伏谷:岩佐さんはどうですか?

岩佐:僕もどちらかというとご縁ですね。「里山十帖」のお話をいただいて、近くから見える山の風景が素晴らしかったので、「この山の風景すごいな」「ここでやりたい!」と思った。それだけですね。どんな施設にするかは、あとから考え込むみたいな。そういう感じですね。僕は座らないかもしれないですけど(笑)。

伏谷:なるほど。たぶんお2人の会社のスタッフの方々は、きっと「また思いついちゃったの?」「また引き受けて来ちゃった?」とか思ってるんでしょうね、猫拾って来ちゃったみたいな。

楠本:大変だと思います……。確実に就職はおすすめしないです(笑)。

岩佐:同じようなこと、よく言われます(笑)。

伏谷:岩佐さんの場合、さらに魚沼に事務所を引っ越しちゃったわけですが、その時のスタッフのリアクションってどうだったんですか?

岩佐:いやいや、真っ二つですよ。移転しようっていうタイプと、絶対にヤダっていうタイプとで。今でも東京に事務所はあるんですけど、自然減で減っていっています。僕は好きなとこで仕事すればいいかなくらいに思ってるので、絶対来なきゃクビだとかはないです。

伏谷:岩佐さんの『情熱大陸』とかを見て、みんな『自遊人』に憧れて編集者になろうと思って入社したのに、新潟のど田舎に引っ越したり、農作業手伝ったりとか(笑)。

岩佐:そうですよね(笑)。結局モノをつくるためにうちに来てるっていう学生とか、新入社員が多いので、そんなに大抵抗はないですけど……まあちょっとあるかな。

伏谷:岩佐さんはちょっとあるかなって思ってるようですが、いかがですか?

女性社員:抵抗はなくもないんですけど。一応「なんでも現場でやってみてからモノを言うようにしよう」という会社の教えがあるので、とりあえずやってみようかなと。 

伏谷:やっぱり、お2人ともいいスタッフに支えられてますね。

風景が明確に見えれば、人は来る。

楠本:岩佐さん、さっき「リサーチしたのか」って言われたっておっしゃってたじゃないですか。僕もよく言われます。高円寺のカフェをやる時に、ちゃんと歩行者調査したのかって言われて。実際1時間で3人しか歩いてないわけですね(笑)。カチャカチャの意味すらない。だけど、岩佐さんがさっき山肌がすごくきれいだっておっしゃってましたけど、そういうことがすごい大事なんです。風景が明確に見えれば、人は来るんですよ。共感する人は絶対にいます。つくるものはカフェでもなんでもいいんですけど、妄想して見える風景がリアルだとオッケーです。集っている人の会話とか、ご飯の食べ方とかがリアルにイメージできたらいいと思います。もしそれが曖昧なまま、僕の場合だとチェーン店発想で「WIRED」がここいけたからこっちもいけるだろって感じで出店するほうがリスクだと思います。

伏谷:まず場をイメージして、作りましょうってなった次のステップは、それに共感してくれる人に集まってほしいってことですよね。そういう人たちにどうやって「ここ来ない?」って情報を伝えていくんですか?

岩佐:共感してくれる人たちというか……今みなさんスマホ持っていて、いろいろなSNSを使ってるじゃないですか。今って共感は勝手に広がっていく時代なんで、なんにもしないでいいと思ってるんですね。強いメッセージを伝えれば勝手に広めてくれるし。逆に広まらないってことはメッセージ性が弱いってことじゃないかって僕は思うんですよね。それが強くて、みんなが求めているものであれば勝手に広がっていくし、求められていないものは広がっていかないからダメなんだっていう単純なことなのかなと考えてます。

さっきの話に戻りますが、定量分析やマーケティングといった話がいろいろあるわけだけど、それで成功するんだったら世の中に失敗する店なんてないだろって思うんですよ。みんなやってるけどみんな失敗してる。失敗すると必ず理由つけますよね。あのデータ上では失敗が見えていたとか。僕はそれよりも自分がいけるかなとか、自分がここいいなって思う感覚の方が重要なのかなって気がするんですよね。

楠本:そうですよ。だからね、ビッグデータとかいらんとですよ。だってビッグデータって全部過去のものじゃないですか。飲食店でいうと、POSレジによってabc分析ができます。WIREDではほとんど見ないですね。だからダメ社長なのかもしれないけど(笑)。データっていうのは過去のものなんですよ。今後、新しい産業を生むことって、たとえばロボット技術で肉体労働とか、知的労働はAIが、とかありますよね。でもエモーションなことって絶対人間じゃないとできないんですよ。デザインだったり、エクペリエンスだったり。
だから70年代にPOSレジなんてないんですよ。70年代の原宿のファッションとかってめちゃめちゃですよね。あのデザイナーたちの奇天烈さ加減っていったら、凄いことやってたんですよね。だからこそ、そこにパッションが生まれる。たぶん本田宗一郎さんもクリエイティブディレクターの役割を果たされていたと思うんですよね、流線型のボディデザインにすごいこだわるとか。そういうことってなんのデータベースもないわけですよね。美しいデザインでいくんだって、思ったからやるってことですよ。
直感っていうのは脳の中にあるシナプスの連動によって記憶中枢が動くことなんですって。僕たちの記憶のなかには直感のデータベースがいっぱいあるわけですよね。さっき編集者の方が農作業されてるってことでしたけども、そういう「体験」を通して自分の中にデータベースができていくから、編集ができるっていうことになるんじゃないかなって思うんですよね。

伏谷:なるほど。どうですか、岩佐さん?

岩佐:僕はやらないと分からないっていつも思っています。農作業にしても、雑誌編集にしても。インターネットで、たとえば『Google Map』とか、『ストリートビュー』とかを見れば、その場所がどんな場所で、どんな人がいそうで、どんな建物で……検索していくと写真もたくさん出てくるし、行った気になってしまうんですよね。だからインターネット上で調査をしてると、絶対失敗しないし、すべて掴めるような気がするんですけど、現実って全然違いますよね。やっぱり現実のなかでどうやって生きていくのかっていうことを、こういう時代だからこそ野生の勘じゃないですけど、自分の勘とか、そういうもの大事にしたいと思っています。

楠本:だから、みんながやめとけって言ったやつはやったほうがいいんですよ。その逆も然りかもしれないけど。そこから一応考えてみるほうが近道かもしれない。

岩佐:みんながいけるものって大体ダメですよね(笑)。

楠本:ビッグデータ上ではオッケーじゃない?とか言われたらすごく気持ち悪くなっちゃいますね

岩佐:それもう遅いし、やめたほうがいいでしょ。きっとつまんないと思うよってね。

伏谷:楠本さんはトライアスロンをやってらっしゃいますが、野生の勘みたいなものって研ぎ澄まされていくのを感じたりしますか?

楠本:そういうとめっちゃかっこいいですね!(笑)ただ、地球と一緒に遊んでもらってるという感覚。本にも書いたけど、地球と同期するということを、感じられているってすごいことだと思うんですよね。僕は自分の里山原体験というと、(トライアスロンを)始めた時に、朝焼けのなか、成田の農道を走り始めたんですよ。まだ日が昇る前、微妙に明るくなってくる頃から、実は土って温度を感じ取ってるんです。ぶわーっと湯気が出てくるんですよ。まだ日が昇る前にですよ、明るくなっちゃうともう遅いんです。「なんだこりゃーー!」って思って(笑)。そういう体験ってすごくないですか?そこで大地を感じました。食べ物も美味しいし。岩佐さんからしたらそんなの当たり前だろって話だと思うんだけど。
あとは、出張に行くと必ず走ります。だいたい人口100万人くらいの都市でも、2時間くらい走ると街が分かります。大事なのは高低差とかで、それを知る感覚とか、街の匂いとかを知る感覚って車で移動してたら感じないですよね。あと、行動範囲が狭すぎるから歩いてもダメです。だから、ランニングはおすすめですね。

伏谷:岩佐さんも走ったりしますか?

岩佐:僕は山登って滑るくらいしかしないですね。「里山十帖」の近くにはトライアスロンができるところがなくて。

岩佐:楠本さんもおっしゃってましたけど、自然の景色って毎日違うんですよ。毎日、毎時間違うんですよ。東京の景色って、たとえば夜景っていつも一緒じゃないですか。でも自然の景色って24時間違うし、365日全部違うんですよね。新緑、紅葉一緒じゃないかって思うんですけど、新緑と紅葉は日1日全部違うんですよ。さらに晴れ、雨、風とか、鳥の声とか虫の鳴き声とかが加わり、全部違うんです。未だに僕はずっと感動していますね。飽きない。

楠本:くどいんだけど、そういうことってデータベース化にはないじゃないですか。ビッグデータには(笑)。だから「体感」っていうのが1番の価値なんですよね。僕は頭の中は真空管みたいに空っぽです。だからこそ、すごい響きあうんです。そう考えると、響きあうって、さっき「共感マーケティング」ってお話されていましたけども。僕も「共感共鳴共振」って言うんですけど。感じて、お互いに鳴って、共振っていうのは、なんかアクションが起きるってことですね。共感からアクションまで全部一緒にやろうよってなると、その繋がりってすごく強いコミュニティになるんです。そこから経済価値って生まれるんですよ。

都市と地方という対比をやめる

伏谷:楠本さん書籍でも、この間の梅澤(高明)さんとの対談でも言われてましたけど、いわゆるステレオタイプのマーケティングじゃない、マーケットって言うのはおかしいかもしれないですけど、街をA面、B面で見るっていう話をされましたよね。

楠本:そうですね。裏側から見るっていうだけなんですけどね(笑)。都市ってなんだろうという話です。ポストシティってものを考えたりもするんですけど、今までは権力があるところに情報があって、そこにお金が集まるっていうのが都市の形成の根幹だったと思います。けど、インターネットの発達によってそういったことが全部、相互に行き渡るようになってきた。そんななかで、次の都市ってなんだろうって思うわけです。インフォメーションに代わって重視されるのはエクスペリエンスとか、人肌感とか。「体感の近さ」みたいなことが価値になってくると考えてます。僕はA面的な開発を否定するわけじゃないんです、やっぱり都市間競争ってあるんで。丸の内のあり方、渋谷の再開発、それから六本木の開発、いろんな開発があって、東京がビッグシティになって、ワクワクする街になっていくというのはすごい大事だとは思います。一方で、界隈性というか、さっき縁側という話をしましたが、どんなところで、ヒューマンスケールの人の出会いが生まれて、そこにかつてからの匂いみたいなものが担保されるか。そこがB面の重視するポイントだと思います。だから、Bから見てAを見たり、あるいはA面発想だけじゃなくてB面を残したり、みたいなことがけっこう大事。

伏谷:なるほど。岩佐さんはさきほどのプレゼンのなかで、都市と地方という形で見ていらっしゃる感じでしたが、楠本さんのA面B面っていうお話を伺っていかがですか? 

岩佐:都市と地方とかっていう話ではちょっとないんですけどね。最近日本のなかで、これってどうなのかなって思うことが1つだけあります。白黒つけたりする風潮があるじゃないですか。僕は街も人もいろんな価値観があるのが、人間だし街だし田舎だしって思うんですよね。どっちでもいいじゃん、どっちも正解だよっていつも思うんです。

その流れで、都市と地方みたいな話をすると。ちなみに「里山十帖」をつくり始めたときって、地方創生の「地」の字もなくって、地方はどん底に沈みつつあるときだったんですよね、原発事故後、震災後ということもあって。その時に僕は(「里山十帖」を)始めたわけです。地方が沈んでいくから助けなきゃいけないのではなく、地方をどうやって魅力的な街にしていくかっていうことをみんなで考えることが僕は重要だと思うんです。東京と地方はすごく面白い関係性にあると思います。ここにいらっしゃる方はたぶん東京の方が多いと思います。東京の方はどちらかというと「自分たちが地方を助けなきゃ」って思っていると思うんですよ。東京の知識をなんとかして地方に移植して、なんとか地方を盛り立てようって。でも地方の人ってそんなことまったく思っていないんです。たとえばうちの魚沼の人たちからすると「東京がそんなに地方を見捨てるような発言をするんだったら米出さねーぞ」とか言うわけですよ(笑)。僕は、東京と地方のどちらが正しいのか、または東京基準で地方を考えるとかではなく、いろんなものがあるんだから、お互いの価値観を認めた上でやっていこうぜっていうような世の中にならないといけないと思います。じゃないと新しいものがプラスに生まれなくなってしまう。

楠本:そこ本質ですよね。要するに、価値ってそういうふうに生まれるってことです。僕たちの脳も、いろんな断片のシナプスが繋がって直感と思うわけで。都市か地方かじゃなく、そういう断片的な繋がりがあちこちに張り巡らされているんですよね。たとえば今日いらっしゃる皆さんがワッて繋がってあたらしい価値が生まれる、そういうことが同時多発的にいろんなところで起きるとめっちゃ元気になるわけですよね。そいういうアイデアの布石みたいなのをポンポンポンといろんな地域に落としていくことができたらいいですね。

やっぱり岩佐さんすごいなと思うのは、地域を変えるのはよそ者、バカ者、若者だってよく言いますよね。要するに、斜めの目線で地元に入っちゃうってことですね。僕も、博多にこの度やっと初出店できるんですけど。博多のことはよう分からんですよ、地元すぎて。だからやっぱり斜め目線というか、サードビューがいるんですよね。つまり、縦、横、斜めの掛け合わせのネットワークこそ価値を創造していくっていうことだと思うし。だから、A面もB面もそういう意味なんだろうなと。

インバウンドは黒船

伏谷:タイムアウトは、「世界目線で見た日本、あるいは東京」みたいなことをテーマでやっているんですが、せっかくなので楠本さんと岩佐さんに聞いてみたいのが、お2人の目線で見たグローバルに通用する日本の魅力やその市場はありますか?楠本さんは最近タイにも出店されていますよね。

楠本:2つくらいあります。うちは一応、食の担当の会社なので、食的にいうと「今こそ日本の食を海外へ売り込むぞ」っていう発想は僕にはないです。そうではないところに日本本来の良さってあると思うんです。「和をもって尊しとなす」っていう聖徳太子の言葉は「ハーモナイズをもってリスペクトする」ということですよね。つまり、それがおもてなしなんです。どういうことかというと、奈良時代は黒潮にのって、アジア中の多様な文化が日本に集まってきました。その流れ着いちゃったところが奈良なんです。つまり、奈良は天然の編集場所だったということです。だから、アジア中の多様な文化をハーモナイズして、リスペクトした。八百万の多様な文化、すべてのものを受け入れたということだと僕は思いたいです。それが解釈として正しいかどうかはわかりません。でも僕はそう思ってます。だから、日本の食っていうのは、今こそ海外へっていうよりも、もう1回地球中をハーモナイズしていくOSのような役割、共感が広まっていくOSのような役割になって、結果的に世界中の人たちと食を中心としてシナプスで交流していくようになっていったらいいんじゃないかなというふうに思ってます。あれ?2つって言ったけど1つになっちゃいました(笑)。

岩佐:僕はけっこう食品をやってるんで。世界のなかで日本の食をどう考えるかみたいなことをすごく考えるんですけど、あんまり難しいこと考えていません。正直10年10拠点のなかに、海外でいくつかやりたいなぐらいのことを考えてはいるんですね。この話をすると、田舎の地方だけなんですよねって言われるんですけど、東京でも京都でも北海道でも、たとえばバンコクでも香港でも全然いいんです。なんでかっていうと、その地域なりの編集で新しい提案をできるし、そこに日本人の僕だからこそできる提案とか、日本人がやってるホテルだからできることって必ずあるんです。逆に日本人がやってるホテルにいろんな国の方々が来てくださって、ここ日本人がやってるからこういうことになってるんだねってなる。そしたら逆に日本にお客さんが来てくれるとかね。実際上海に行った翌日に日本に来たりするわけじゃないですか、海外旅行客って。僕は「なんで日本だけでしかやんないの」って思います。上海がいいんだったら、上海からお客さん引っ張ればいいじゃん、みたいな。あんまりその辺は深く考えてないっていうか。いろんな考え方ができて、むしろ楽しい時代だな、ぐらいな感じですかね。

楠本:2つって言ってたの、1個思い出しました……!人口減ってくわけですよね。人口減るっていうのは、けっしてポジティブには捉えられない話ですよね。でもね、僕はネガティブな話になるのが嫌なんですよ。とにかくポジティブに考えたいんです。人口が半分になってしまったらどうなるのか。まずは生産量、これカロリーベースだから計算方法がいいかは別として、食料自給率って100%に近くなるんですね。もちろん生産が維持できればですが。TPPの問題とかもあるからそこはおいといて。それともう1つは、1人当たりの国土が倍になるんですね。ということは、今までは日本の国土は狭かーとかいろいろ言われてましたけど、そんなことないんです。僕の庭が倍になるんですよ。日本人が遊びの達人になるってことです。それはお金で遊ぶっていう意味じゃなく、自然と遊ぶとか、暮らすとか、そういったことも含めます。それってハッピーに暮らしてて、余裕があることだと思います。食料自給率が高い国って、インバウンドがすごい多いんですよ。北欧、カナダ、アメリカ、それからフランスが1番いい例ですね。人口は7000万人くらいですけど、インバウンドはそれよりも多い。ですから、今日本のインバウンドが2000万人超えたって言われてますけど、人口が減った場合、単純計算で4〜5000万になりますよね。島国なのでフランスと同じには言えませんけど。でも、それくらいの目標設定をたててもいいんじゃないかと思います。

で、もう1つ。日本の地方がどういうブランディングをするべきというか、どういうふうになっていくかって考えると、僕は文脈の近さみたいなのを考えたらいいんじゃないかと思います。海外を見るっていうのはそういう意味でいいなと。たとえば、また東北の話になりますが、会津の赤ベコ。そっくりの木彫りの人形がスウェーデンのストックホルムの郊外のダーラナっていうエリアにあるんですよね。江戸時代に書かれた『北越雪譜』っていう鈴木牧之さんと数人の人が書いた、北陸のライフスタイルの本があります。それを読んでいると、昔の北欧のライフスタイルに似ている点がいっぱいあるわけですよ。なんか近いものを見ると、繋がってるなって元気になりません?だから、僕がポートランドのことをよく紹介するのは、別にポートランド観光大使でもなんでもなくって、あそこでやってるスーパーポジティブな生活って、日本の地方に持っていったら絶対俺とシンクロするやんと思うんです。そういうことがいっぱいあるよっていう意味で言ってるんです。だから、海外との接点、ライフスタイルの接点を作っていくと、みんなこういう方向にもっていけばいいんだなっていうアイデアに結びつけやすいかなって今は思いますね。

 

岩佐:今、鈴木牧之の『北越雪譜』の話がありましたね。まさに『北越雪譜』が書かれたのが我が塩沢町なんですね。山の麓に牧之通りっていうのがありまして。この『北越雪譜』がなんでヒットしたかって、雪国の暮らしがこんな暮らしだなんてありえない、冗談だと思われて大ヒットしたそうです。雪崩とか、雪が何m積もるとかありえないだろって(笑)。

今でも同じことが起こってるんです。うちのエリアに来られる方って、雪の多さにビビるんですよね。本当に4mの雪があるの!?みたいな。こういうものをリアルで見るのと写真で見るのと全然違うんですよね。やっぱりそこに来て、初めて面白い。なんで暮らせるんですかって、みなさん言うんですけど、意外と豊かに暮らせちゃうんですよ。豊かさの理由とか、実際に見てみないと分からないっていうところもあって。世界中の人たちに、それを見て感動してもらいたいなと思うんです。

もう1つ、インバウンドの話だけさせてもらうと、観光の話になると「データ上でいうと」「インバウンドが大事だ」「地方創生もインバウンドしかない」みたいな話になるんですよね。地方の人たちとか観光業の人たちは、インバウンドはホワイトナイトだと思ってるんです。「王子様がやってきて、地方を助けてくれるんだ!」みたいな。けど、実際にはインバウンドって黒船なんですよね。新しい価値観を持ってやらないと、黒船に合わせていかないと、ってなるけど実際にはコテンパンにやられちゃうのが現実なんですよ。なんで僕が10年10拠点でやりたいか、そのなかに海外があってもいいかって考えているか。それは、海外と日本の繋がりをどこに持っていくかとか、海外の拠点で日本の良さを提案するとかを考えないと、黒船に簡単にやられてしまうんですよ。インバウンド6000万人いけるんじゃないか、みたいな話が大きくなってくるなかで、6000万人のパイを取ったのは実は全部外国人でした、みたいな話になりかねないと思うので。そこはやっぱり日本人しっかりやっていかないといけないなって思いますね。

楠本:僕ね、フランスのモデルって10年前から言ってるんです。そういう時代が来ちゃうよ、だからそれに備えようねって。期待の意味で言ってるってのは今は半分ありますけど。そのきっかけが、日経新聞が2000年の1月1日からいきなりはじめた『人口減少社会』っていう特集でした。それを読んで、人口減るんだ、だからチェーン発想だとかなわないんだなっ思ったんです。期待と備えを両方持つって大事だなと。
実はスナック・カンパニーに社名変更しようと思ってて(笑)。スナックで外国人たちとカラオケをやって、海外型のパッケージでいいんで、ここで全部エクスペリエンス済んじゃいます、みたいな。みんなで浴衣で出てきてもらって、スナックで1万円ぼったくられるっていうのも、アトラクションでエンターテイメントだみたいな(笑)。そういうのいいなって思ってます。

伏谷:ありがとうございます。話は尽きないんですが、時間のほうがそろそろ尽きてきちゃいまして。お客さんの中で、お2人に質問ある方いらっしゃいますか?

質問者:私はインテリアのデザインをしていて、ホテルやカフェとかに興味があるので聞きに来ました。お2人とも、デザイナーとかと一緒に組んで設計とか空間を提案する際にたとえば、デザイナーなり一緒にやる人に求めていることがあれば教えてもらいたいです。

楠本:うちは一応、一級建築士事務所なので、100店舗のうち、97、8%くらいは自前で設計をやってます。だからどうだって話ではありませんが、やっぱり僕が知らないエクスペリエンスを聞きたいかなって思いますね。今ってデザインのためのデザインじゃない時代だと思うんですよね。僕がデベロッパーに勤めていた頃は、デザイナーズマンションっていうのが、付加価値だったんです。価値は付けるものだって。でも今は価値は付けるものじゃなくて、本質的な価値の時代になっています。だから「付加価値」って言葉はもう死語かなと思うんですが。デザインのためのデザインじゃなく、生き様のための知恵みたいな、モノがデザインとしてにじみ出るとか、風景としてできあがるとか。そういったものをみんなで、アイデアフラッシュしていきながら作っていくみたいなのが、たぶん今後のデザインのあり方なんじゃないかなと、僕は勝手に思ってます。

岩佐:僕の場合は、ディスカッションして楽しい人と仕事をしたいですね。話してて、話が盛り上がる人。デザインに関してもそうで「これもいいけどこっちもいいよねー」みたいな話のなかで、「絶対これじゃないと!」っていう人もいたりするじゃないですか。僕はどちらかというと、「これもいいよね、こっちもいいよね。どっちにする?」って悩みながら、「でもこっちだよねー!」みたいなディスカッションをしながら決めていけるような人。複合的に積み重ねてモノをつくっていける人と仕事をしたいなと思ってますね。

伏谷:それでは最後にお2人のこれからの野望、展望を一言ずづ伺いたいです。

楠本:海外行くぞー!みたいな話じゃなくて、普通に海外でやる。店舗数増やす。今、香港でやってるんですけどホーチミンとかアジア、あとアメリカはやろうと思っています。あと、最後に思い出したんですけど、申し訳ないんですけど、AかBかって決断ね、僕はしなくていいと思うんですよ。本にいっぱい書いてあるんですよ。「立派な経営者は決断が大事だ!」って。あと「整理整頓術」とか。整理整頓とかやらないほうがいいですし、決断とか無理無理!(笑)だって、断りを決めるんですよ。断じるんですよ、ギロチンですよ。優柔不断の術っていうんですけど、優しくて柔らかくて断ったりしないって。これ接客の基本ですから。いろんな人がいて「はい、今行きます!」って答える。矛盾だらけじゃないかって言ってたら接客にならないんですよね。だから、いろんな人たちのために、あれやこれや汗かいてやるっていう、いろんな人たちのためにあれやこれややるっていう。矛盾とか関係ないみたいなのがいいんじゃないかと僕は思います!ありがとうございました!

岩佐:僕は……来年10年10拠点の1施設ができあがってるということはありえないんで、建物なんでね。なんかいいご縁があって、この手の話、ほんとご縁なんで。いろんなご縁があるんですよ。そのなかで、ひとつのご縁を大切にしながら広がるような状態に1年くらいでなってればいいな、ですね。でも、よく言われるんですけど、10年10拠点って言ったら、1年1拠点やらなきゃいけないじゃないですかって言われるんですけど。5年何もやらないで、5年後にいきなりやったっていいしみたいなところがあるし。それは別に焦ってなくて。ご縁が1個くらいあって、前に進みだしたらいいなというふうに思ってます。どうもありがとうございました。

伏谷:ありがとうございました!本日はカフェ・カンパニー代表取締役社長の楠本さんと、自遊人代表取締役クリエイティブ・ディレクターの岩佐さんにお越しいただきました。

次回の『世界目線 民泊、ホステルと街づくり編』は3月1日(火)開催です。

楠本修二郎(くすもとしゅうじろう)

カフェ・カンパニー株式会社代表取締役社長
1964
年福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルートコスモス入社。93年大前研一事務所入社、平成維新の会事務局長に就任。その後、渋谷キャットストリートの開発などを経て、2001年カフェ・カンパニーを設立、代表取締役社長に就任。コミュニティの創造をテーマに商業施設などのプロデュースにも従事。20116月に東日本の食の復興と創造の促進及び日本の食文化の世界への発信を目的として発足した一般社団法人「東の食の会」の代表理事を務め、2013年より東京発の収穫祭『東京ハーヴェスト』を開催している。また、日本の文化・伝統の強みを産業化し、それを国際展開するための官民連携による推進方策及び発信力の強化について検討するクールジャパン戦略推進会議に参加している。一般財団法人Next Wisdom Foundation代表理事。趣味はトライアスロン。著書に「ラブ、ピース&カンパニー これからの仕事50の視点」(日経BP社)がある。

カフェ・カンパニー株式会社公式サイトhttp://www.cafecompany.co.jp/

 

岩佐十良(いわさとおる)

クリエイティブ・ディレクター
自遊人代表取締役
1967
年、東京・池袋生まれ。武蔵野美術大学四年在学中に現・株式会社自遊人を創業。2000年、ライフスタイル雑誌「自遊人」を創刊。2002年、雑誌と連動した食品のインターネット販売を開始。2004年、新潟県南魚沼に事業の本拠地を移す。食のプロデュースや農業問題のアドバイザーとして、行政府などが招集する委員を務める。20145月に、クリエイティブ・ディレクターとして全デザインを担当した、ライフスタイル提案型複合施設『里山十帖』をオープン。持続可能な民家保存というコンセプトと斬新な手法が評価され、「Singapore Good Design Award 2015」受賞、EU7カ国で発行される建築デザイン誌「AD」に紹介されたほか、NHKワールドの「DESIGN TALKS」に出演。国内では「グッドデザイン賞」のBEST100に選出、中小企業庁長官賞も受賞した。主なテレビ出演は、TBS系「情熱大陸」、テレビ東京「ソロモン流」ほか。主な著書は「一度は泊まりたい有名宿覆面訪問記」(KADOKAWA)、「里山を創生する『デザイン的思考』」(メディアファクトリー)など。

「里山十帖」公式サイト http://www.satoyama-jujo.com/
雑誌「自遊人」公式サイト http://www.jiyujin.co.jp/

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