TOKYO MUSIC BOX #8 江古田 フライングティーポット

テキスト:
Kunihiro Miki
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※プレイリストは記事下部
in collaboration with KKBOX 

江古田 フライングティーポット

値段:

音量:★★★

照度:★★★★

出会い:

ポイント: インプロビゼーションを中心としたライヴイベント、展示、豊富なディスクガイドが並ぶ書棚

この一杯:シナモンやアニスなどのスパイスティー

テキスト:高岡謙太郎

定番スポットや老舗バー、注目の新店まで、魅力的なミュージックスポットを、店主、スタッフ、常連客がセレクトしたミュージックプレイリストとともに紹介する連載企画『TOKYO MUSIC BOX』。

第8回は、学生街でもある江古田駅にあるプログレ喫茶、江古田 フライングティーポット(Cafe FLYING TEAPOT)。プログレッシブロックを中心に19年前から始まり、音楽、漫画、アートを嗜好するこの街周辺の客が集い、ジャンルを横断した交流が行われる場となっている。

副都心線や大江戸線に接続できて交通の便や住み心地が良いが、それほど知られていない街、江古田。駅から徒歩5分ほどの商店街の一角に、フライングティーポットは店を構える。地下1階の店内は、一見すると普通の喫茶店に見えるが、バーカウンター向かいの棚に数えきれないほどのCDとレコードが積め込まれていて圧巻。本棚には各ジャンルごとのディスクガイドの書籍が揃えられ、知識の蓄積が確認できる。

また、音楽だけでなく壁面ではアート作品の展示も行われ、月ごとに作家が入れ替わり、目を楽しませてくれる。アートブックや写真集、漫画が並ぶ書棚もあり、前衛的なものをすべて受け入れる店長の寛容な性格を感じさせる。

店名である「フライングティーポット」の由来は、60年代から活動するプログレッシブロックバンド、Gongのアルバムタイトルから名付けられた。この店の特徴は、ほぼ毎日店内でライブイベントが行われていること。即興演奏やノイズなどの実験的な演奏をするミュージシャンが、プログレッシブでエクスペリメンタルな音を夜な夜な奏でる。70年代からのノイズミュージシャンや、フリージャズを演奏する60代の先輩に、20〜30代が交じることもあるという。

過去にライブした著名アーティストのメンツも個性的だ。フォークロックバンド、たまのメンバーだった石川浩司や、ノイズバンド インキャパシタンツのT.美川、若手では、ギタリストの康勝栄、インディーロックのトクマルシューゴ。海外からは、アバンギャルドロックバンド、Henry CowのメンバーChris Cutler、カンタベリー系バンドのCaravanのRichard SinclairとDave Sinclair。そして今年はGongのデイヴィッド・アレン(Daevid Allen)本人が来店する予定だったが、病気で永逝してしまい残念ながら会えなかったそうだ。

一昔前までは、前衛的なアーティストたちにとって、演奏をさせてくれるライブハウスを見つけることが難しかったが、最近はこの店に似た実験的で自由なブッキングを行う店舗が都内で増えている。「他の国から見ても特異なくらいですよ。知られてないと思いますが、インプロやアヴァンギャルドなどの演奏をこんなに毎日どこかでいくつもやっている国はないですね」と店長は語る。この店で流れる個性的な音楽を求めるリスナーは、イベントスケジュールが掲載されるサイト『ト調』や、海外からであれば『Tokyo Gig Guide』などをチェックしてから来店するそうだ。

小学校から約45年間、この街が地元という店長は、「近くに大学がいくつかあるので、多少大きい音を出しても怒られないのがこの街の魅力です」と教えてくれた。音楽大学と日本大学の芸術学部があるので、駅前で弾き語りをしている人がいたり、楽器の練習をしていてる人がいても全然苦情が来ないそうだ。また漫画家や演劇関係者、画廊も多く、文化に対して寛容な街ならではの店の雰囲気だ。店内で漫画家がラフを描いていることもあるとか。

店内イベントは音楽だけでなく短編映画の上映会もある。上映会『融解座』は、18年前から毎月第1日曜日に無料で行われ、短編であれば何でもありで規模や経験を問わず参加可能。ここから映画監督やAV監督になった参加者もいて盛況だそうだ。「昔からの付き合いのある上映会の主催者は毎月1本は映像を作っているので、日本で一番短編映画を作っているんじゃないですかね(笑)」。

最後に店長に店のこだわりを聞くと「お客さんにやりたいことをやってもらいたいですね」と微笑みながら答えてくれた。そんな江古田 フライングティーポットのプレイリストは、プログレやアヴァンギャルドロックなどをセレクトした強烈な曲が並ぶ。

3月16日更新分のプレイリストのテーマは「<飛茶瓶洞的日常その4 不思議のヒットパレードの巻>」店長目黒からのコメント「「不思議のヒットパレード」とは、ケヴィン・エアーズのアルバムに付けられた邦題ですが、今回は耳に馴染みやすいのに何処か奇妙でちょっと不思議なテイストの小曲を集めてみました」。

プレイリストリンク 先:KKBOX

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1月13日更新分のプレイリスト飛茶瓶洞的日常その2は現代のアーティストにスポットライトを当てた10曲「21st Century Schizoid Man、といえばキング・クリムゾンの名曲ですが、いつの間にか我々も21世紀の真っ只中。現在もそんな先達に影響を受けた多くのミュージシャンが活躍しています。今回は、そんな21世紀のロックバンドを紹介してみましょう。どんなバンドに影響を受けているのかを思いながら聴くのも楽しいでしょう」

 

 

 

12月18日更新分のプレイリストのタイトルは「飛茶瓶洞的日常その1Daevid Allenの巻」。「店名のフライングティーポットは、デイヴィッド・アレンのバンドGONGのアルバムタイトル曲から頂戴しました。デイヴィッド・アレンは1960年代から世界中を駆け巡り活躍したミュージシャン、詩人で2015年3月13日に惜しまれつつ他界。ジャズ、ロック、フォーク、サイケデリック、アンビエント、トランス、ヒップホップなどなどを積極的に取り入れて千変万化の世界を表出し続けた、知る人ぞ知るロック文化の重要人物です。日本にも1990年代末から毎年のように訪れていました」。

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