2016年の東京を総まとめ、「Love Tokyo Awards」をレポート

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Time Out Tokyo Editors
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ヒカリエホールで2016年12月21日(水)に開催された、タイムアウト東京が主催する『Love Tokyo Awards』。2016年に東京で注目を集めたレストラン、カフェ、バー、ショップ、プロダクトや、東京を訪れる人におすすめしたいアクティビティ、2016年に東京に影響を与えた人物を表彰する同イベントには、国内外から多くの人が駆け付けた。一つ断っておきたいのは、今回の選定基準となったのは、決して「外国人が楽しめる」という趣旨ではないことだ。日本人も外国人も関係なく、間違いなく東京の発展に貢献したと言える店やプロダクト、アクティビティ、そして人物が選出された。ここでは、2016年の東京を代表する、各部門のベストに選ばれた受賞者たちのコメントを紹介する。


Higashiya Ginza 崎浜志津

まず最初に発表されたのは、カフェ、バー部門。ワインレッドのワンピースに身を包んだ、ファッションジャーナリストのミーシャ・ジャネットがプレゼンターを務めた。

東京を代表するベストカフェには、銀座にあるHigashiya Ginzaが選ばれた。日本の伝統的な茶の文化と、モダンで洗練された空間の融合により、人々の新たな憩いの場となっていることが、審査員から高い評価を得た。登壇したヒガシヤの広報を担当する、崎浜志津は受賞について「南青山の和菓子屋HIGASHIYA manと、銀座のカフェを展開するヒガシヤだが、今回は銀座にあるカフェがこのような華やかな賞を授かり、とても光栄に思う。これからも日本文化を現代の暮らしに合うように進化させ、人々に届けていきたい」と、受賞の喜びとともに、今後の意気込みを述べた。

左:ミーシャ・ジャネット、右:東京ステーションホテル濱純子

続いて発表されたのは、2016年の東京を代表するベストバー。パークハイアット東京のピーク バー、芝公園にあるザ プリンス パークタワー東京33階のスカイラウンジガーデン、文豪の集うバー ルパン、銀座にある老舗バー ボルドー(2016年12月22日閉店)など、錚々たるノミネートのなかから選ばれたのは、東京ステーションホテル内にあるバーオークだ。エレガントさと居心地の良さを兼ね備えた店内の温かな雰囲気、そして何よりもバーテンダーの心がこもったカクテルの美味しさが絶賛された。授賞式には、東京ステーションホテル、広報の濱純子が登壇。受賞コメントで以下のように述べた。受賞に対する感謝の言葉とともに、バーの顔であるバーテンダーの杉本について語った。「20歳で上京し、東京ステーションホテルのバーでバーテンダーの道を歩み始めた彼は、75歳近くなった現在もカウンターに立ち続け、常に温かみの溢れるバーを目指している。2017年の冬には東京駅丸の内駅舎前の広場が整備され、バーからの景色は素晴らしいものになるので楽しみにしてほしい」と語った。東京のベストバーとして、ますます魅力溢れる空間となるだろうバーオークに注目したい。

tokyobike代表 金井一郎

続いて発表されたプロダクト、ショップ、そしてレストラン部門では、プレゼンターにモデルのゆうたろうを迎え、ノミネートが読み上げられた後に受賞者が発表された。

ベストプロダクトには、tokyobikeが選ばれた。使い心地の良さを追求した、シンプルで可愛らしいデザインに、世界各国の都市に住む審査員の多くから「自分のライフスタイルに取り入れたい」という声が上がった。授賞式にはtokyobike代表の金井一朗が登壇し、タイムアウト東京とtokyobikeとの親和性が高さ、15年目を迎えたブランド誕生の経緯について語った。「tokyobikeを思いついた当時、世間一般の自転車の選択肢といえばロードバイク、マウンテンバイク、そしてママチャリしかなかった。交通手段として、電車やバスと同列に自転車があってもいいのではないか。それは、かつてSONYの『ウォークマン』が音楽を部屋から街中へ連れ出したように、自転車目線で東京の街を楽しんでほしいという願いが込められていた。ブランド設立から16年目を迎える2017年は、世界中から東京へやってくる人々をターゲットにしたレンタル事業を展開したい。tokyobikeへ行けば東京の情報が得られる、そんな場所を目指したい」と熱く語った。

伊勢丹新宿本店長 鷹野正明

ベストショップには、百貨店の伊勢丹新宿店が選ばれた。外観のデザインや店内のディスプレイの美しさ、有名デザイナー品から目新しい商品まで置かれた品揃え、そして充実した食品売り場が、一日中いても飽きない店と高く評価された。受賞式には、株式会社三越伊勢丹常務執行役員 営業本部伊勢丹新宿本店長の鷹野正明が登壇。創業から130年を迎えた、日本を代表する老舗百貨店のコメントに注目が集まった。「記念すべき第1回の受賞をとても光栄に思う。1886年に東京の神田で呉服商としてスタートした伊勢丹だが、本店にあたる新宿店は1933年に開業し、80年を超える歴史を持つ。今日、百貨店事業は危ないと言われているが、新宿店は3年前に『世界最高のファッションミュージアム』を掲げ、五感で感じて見て触って楽しんでもらう環境を提供している。2015年には世界120ヶ国の人が来店した。しかし、おもてなしはまだまだ足りない。これからも世界中の顧客に日本流のおもてなしをすることを目指していきたい」。長い歴史を持つ百貨店の誇りと、最先端を追い求めるトレンドメーカーと言われる所以を感じさせるコメントだった。

きた福協同オーナー 中曽根勇一郎


続くベストレストランには、蟹料理専門店の銀座 きた福が選ばれた。生きた蟹が調理される様子を目の前で目撃し、あらゆる部位を様々な料理法で味わっていくという体験が多くの審査員に衝撃と感動を与えた。同店の協同オーナー、中曽根勇一郎は受賞の喜びとともに、開業の経緯について述べた。「開業前に仲間とともに札幌に蟹を食べに通った数年間があった。そこでのある料理人との出会いが、現在のきた福につながっている。目の前で説明しながら蟹を解体し、様々な調理法を提案する大将から蟹の魅力を伝授された。きた福のライブハウスのような調理はここから着想を得ているのだ。蟹料理を寿司に次いで世界に誇れる日本料理にするべく、今後も銀座と赤坂から発信していきたい。今回の受賞はその第一歩として、メンバーとともにこの喜びを分かち合いたい」。蟹料理への強い思いが伝わるスピーチは、会場からの大きな拍手とともに締めくくられた。

星野リゾートCEO 星野佳路

東京の発展に大きく貢献した人物へ送られる「face of tokyo」の部門では、セーラー服おじさんこと、小林秀章がプレゼンターを務めた。

まず1人目の受賞者は、星野リゾートのCEO星野佳路だ。その土地に合わせた独特のコンセプトで数々の高級旅館やホテルを展開してきた星野リゾートは、2016年7月に星のや東京をオープン。都心では数少ない温泉を楽しめる日本旅館を開業し、東京における新たな和のもてなしを始めている。
星野は授賞式当日はトマムにいたため、ビデオメッセージで東京への思いを寄せた。「日本各地でいろんな仕事をしているが、東京から褒めてもらえることが一番嬉しく感じている。これまでは、人がなかなか来ない場所に理由を作って足を運んでもらい、楽しく滞在してもらうことが星野リゾートの仕事だったが、2016年は初めて『東京』というたくさんの人が訪れる場所で仕事をした。東京という日本を代表する場所で、世界中の人々に東京と日本の良さを知ってもらいたいと思っている。開業から半年経ったが、反応は素晴らしい。今後も東京は世界のなかでも競争力のある都市であり続けると思う」。代理でトロフィーを受け取った星のや東京総支配人、菊池昌枝は、「星のや東京は、東京から日本文化を紹介する窓口になりたい。金融の街である大手町で、世界中のお客様をお待ちしております」と述べた。

NPO法人スローレーベル代表 栗栖良依

続いて発表されたのは、NPO法人スローレーベル代表、栗栖良依だ。栗栖は障害の有無に関わらず、パフォーマンスを行う「スロームーブメント」を主宰。2016年の『リオパラリオンピック』の閉会式のステージアドバイザーを務めるほか、『六本木アートナイト』でもスペシャルパフォーマンスの総合演出や対談イベントなどで活躍していた。セーラー服おじさんに迎えられ登場した栗栖は、以下のようなコメントを残した。「自分のわがままに付き合ってくれる家族、友人、仕事の仲間たちの支えがあってこの舞台に立てている。生まれも育ちも、仕事の拠点もこれまでずっと東京だったが、2010年に大病を患い、右足が不自由な身体障害者となって社会復帰を果たしたとき、東京は住みづらい街だと感じた。しばらくは東京を離れていたが、ここ数年で東京での仕事が続いている。そのきっかけとなったのは、おそらく2012年の『ロンドンパラリンピック』の成功が大きいだろう。来る『東京パラリンピック』への注目が集まるなか、東京を多様な人が住みやすい街にしようというムーブメントが生まれているからではないだろうか。『Love Tokyo Awards』の豪華な顔ぶれのなか、一NPO法人の代表である自分が混ざっていることが、そういう街になりつつあることの証明だと思っている。これから東京は、多様な人が活躍する、最先端の街にマイノリティの個性が反映され、いろんなアクティビティが掛け合わされてワクワクする素晴らしい街になると思う。世界には東京に、日本に注目してほしい」。授賞式で最も大きな拍手に見送られながら、栗栖はステージを後にした。

齋藤貴弘

続いて受賞が発表されたのは、タイムアウト東京のイベントでは常連と言っても過言ではない、弁護士の齋藤貴弘だ。ダンス文化と経済、双方の発展のために風営法改正運動を先導した。2012年からロビー活動を始め、国会議員や業界団体、事業者らと協力し合いながら、2016年6月、ついに法の改正を実現させ、東京のナイトシーン発展に向けて大きく貢献した。齋藤は「弁護士は裏方の仕事だが、このような賞をいただき光栄に思う。授賞式の冒頭でタイムアウト東京の伏谷さんが『開かれた街を作る』と述べていたが、その反対を行く風営法という法律によって、日本では深夜12時以降のダンスが禁止されていた。ナイトライフは都市にとって重要なコンテンツだが、ダンスだけではなくエンターテインメント全般が夜11時以降は許されないという状況だった。これをタイムアウト東京が紹介するなどしたことで、法改正が大きなムーブメントとなり、2016年6月の改正によって、深夜12時以降のダンスは許可制だが可能になったのだ。日本、特に東京には面白いエンターテインメントがたくさんある。風営法の次に変えたいのは就労ビザだ。海外からいろんな人が東京で活躍できる人材、クリエイティブ人材を呼び込めるよう、面白い街づくりのために弁護士として、いろんな業界を巻き込みながら法的なインフラ作りに力を注ぎたい」。

続いて、日本人の8人に1人は観たと言われている劇場アニメーション『君の名は。』の監督、新海誠の名前が発表された。美しい映像と切ない恋愛のストーリーにより、アニメーションをより幅広い年齢層に届け、世界でもアニメーション映画としての歴史を塗り替えつつある同作。続々と世界各国で公開されており、本人は多忙のため欠席だったが、同映画のプロモーションムービーが流れると、来場した外国人も熱心にスクリーンを見ていた。

次に発表されたのは、ミュージシャンの椎名林檎だ。シンガーソングライターとして20年近く活躍してきたが、2016年の『リオオリンピック』『リオパラリンピック』の閉会式の五輪旗引き継ぎ式にてクリエイティブスーパーバイザーとして音楽監督を務め、世界の舞台で東京の魅力を発信したことが、受賞の理由だ。当日は創作活動中で多忙のために欠席だった。

左:セーラー服おじさん、右:村上隆

最後に発表されたのは、アーティストの村上隆。彼の創作活動の紹介映像が流れた後、本人が登場すると、会場からは拍手とスマートフォンのシャッター音が鳴り響いた。

森美術館での『五百羅漢図展』で30万人以上の来場者を動員、横浜美術館ではご自身の膨大なアートコレクションを一挙公開した『スーパー・フラットコレクション』を展示し、2016年の東京アートシーンを盛り上げた。日本のファッションブランド、『クリスチャンダダ』の背広に、大きなサンバイザーのような帽子という出で立ちの村上は、衣装について述べたあと、タイムアウト東京との馴れ初めについて語った。「2016年はタイムアウト東京マガジンの表紙を飾らせてもらった。撮影は自身がカフェやギャラリーを展開する中野ブロードフェイにて。残念ながら、自分にとって東京という街はアウェイだ。アメリカやヨーロッパでは評価してもらっているが、日本では非常に評価が低いのが現状だ。こういう外国人向けの雑誌で紹介してもらい、自身の作品を見ても問題ないと日本人に伝わったら嬉しい」。笑いと拍手に包まれながら、村上はステージを降りた。

2016年に東京で注目を集めたレストラン、カフェ、バー、ショップ、プロダクト、そして人物が選出された『Love Tokyo Awards 2016』。日本中、世界中から情報と人、物が集まるこの街から「ベスト」と呼べるものを選ぶのは、1年という期間を設けてもとても難しいものだった。今回セレクトした項目は、大都市東京のほんの一部でしかないのだ。タイムアウト東京は、今後もローカルエキスパートとして日々変わっていく東京という街を追いかけ、その発展に貢献したいと思っている。2017年、『Love Tokyo Awards』はより大きな、より意義深い賞となり、この地に戻ってくる予定なので、楽しみにしていてほしい。

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