1. 世界目線で考える。特別編 〜生成AIにしかできないこと〜
    Photo: Keisuke Tanigawa
  2. 「世界目線で考える。特別編 〜生成AIにしかできないこと〜」
    Photo: Keisuke Tanigawa
  3. 「世界目線で考える。特別編 〜生成AIにしかできないこと〜」
    Photo: Keisuke Tanigawa
  4. 「世界目線で考える。特別編 〜生成AIにしかできないこと〜」
    伏谷博之(Photo: Keisuke Tanigawa)
  5. 「世界目線で考える。特別編 〜生成AIにしかできないこと〜」
    Photo: Keisuke Tanigawa

生成AIを無意識に使用する時代へ、メディアにとって脅威かチャンスか?

上杉隆と竹中直純が登壇、「世界目線で考える。特別編 〜生成AIにしかできないこと〜」レポート

編集:
Genya Aoki
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OpenAI社が2022年11月に公開した対話型AI「ChatGPT」の登場により、「生成AI」に対する人々の認識は大きく変わった。生成した文章の自然さや人間味のある回答は、もはや人間同士の議論に近い。だが、参照するデータベースは人間一人の脳を軽々と超えているのだ。

対話型に限らず、これからの社会は生成AIを無意識に使用する時代に突入したともいえるだろう。それは、かつてとは何が決定的に異なるのだろうか。使うことで受け取る恩恵と潜在的な脅威とは何か。

これから迎える「生成AIのある社会」について、その可能性と課題を考えるトークイベント「世界目線で考える。特別編 〜生成AIにしかできないこと〜」が、2023年8月22日に恵比寿で開催された。

登壇したのは、2016年に世界に先駆けてAIテレビ®︎「ニューズオプエド®︎」を立ち上げたジャーナリストの上杉隆と、日本のインターネット黎明(れいめい)期からシーンをけん引してきた竹中直純の2人。モデレーターは、ORIGINAL Inc. 代表取締役でタイムアウト東京代表の伏谷博之が務めた。

約1時間半のトークの中では、AIの進化によるメディアが持つ役割の変化、ビジネスモデルの変容、人材削減、生産性向上といった近い将来起こるであろうポジティブな可能性から、危惧、AIと生きる老後、AIは魂や意識を持つかという話まで、幅広く議論された。

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AI活用するメディアと人によるジャーナリズムの時代へ
上杉隆(左)と竹中直純(Photo: Keisuke Tanigawa)

AI活用するメディアと人によるジャーナリズムの時代へ

重点となった議題は、AIとメディアについてだ。上杉が立ち上げたニューズオプエドはAI記者とAIアナウンサーによる、AIによって自動運用されたニュース番組である。従来はGPT2.0という言語モデルを採用していたが、ChatGPTにも導入されているGPT3.5を使用してから格段に成果が上がったと上杉は語る。

また、メディアとジャーナリズムの違いについて説明。AIによる報道の飛躍的な進化によって、記者会見や速記者の役割はAIで代替される可能性があるという。記者は、現場での取材や人へ直接インタビューするなど、伝聞形式ではない一次情報を発信する「本来のジャーナリズムの仕事」に戻るチャンスだと続ける。

AIは理系から文系の仕事へ
Photo: Unsplash/Mojahid Mottakin

AIは理系から文系の仕事へ

また生成AIには、回答を促す「プロンプト」と呼ばれるコマンドが必要だ。ChatGPTにおいては自然言語での質問のことである。この言葉選びの巧みさによって、回答の質は変化するのだという。「AIはエンジニアやプログラマーのものから、一気に文系の仕事になったんです」(上杉)

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生成AIは人生のパートナーになり得るか
伏谷博之(Photo: Keisuke Tanigawa)

生成AIは人生のパートナーになり得るか

常にAIと会話し、互いに学習し合いながら何年間も過ごせば、自分一人では実現できなかったことができるようになるのではないか、と伏谷は新たな議題を投げかけた。上杉は、性の方面では十分に起こり得ることだと言う。すでに「AIグラビア」などでは顕在化しており、VRやAR空間の中でさらに過激なことをして自己完結する人は出てくるのではないだろうか。

竹中は、固有のサービスに委ねる危うさについて指摘する。「もし自分の人格のほぼ全てを注いでいて、例えば8年後にOpenAIがサービスを終了してしまったら、人生のうちの何年間かは全く失われてしまう」と懸念点を挙げた。

潜在的な脅威について
Photo: Keisuke Tanigawa

潜在的な脅威について

現在世界中で、人間が今まで作った著作物をどう守るかという議論がなされている。2023年8月にアメリカの連邦裁判所では、AIが作り出した芸術作品はアメリカ国内で著作権が保護されないとの判決が下った。

逆に日本では、AIの機械学習に関しては著作権法を問題視せず、規制緩和を行っている。このAI開発における先進的ともいえる優遇策は、海外のニュースでは大きく取り上げられた。今後世界がどういった方向に動いていくのか、動向に注目したい。

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魂や意識は宿るか
Photo: Keisuke Tanigawa

魂や意識は宿るか

来場者からは「GPTには魂みたいなものが宿るか」という質問が寄せられた。

現在のGPT3.5とGPT4は、パラメータ数を膨大にすることで精度を向上させたものだ。しかし、パラメータ数の増加と精度の向上にどのような因果関係があるのかはまだ未解明な部分が多い。「これから5、6とさらに天文学的な数の大規模モデルにすることで、自己修復や自己保存のようなことが起これば、人間は勝手にその中に魂を感じるかもしれない」と竹中は答える。「魂があるような状態を、受け取り側が魂があると決めてしまうかどうかです」

上杉は、魂に対応するツールになり得るかもしれないと語る。感情に作用し、感動を促すような音楽や物語を作り出すAIはすでに存在しており、次に生まれるのは宗教ではないかという。

また、伝統的ないくつかの宗教は実践哲学であり、アルゴリズムにユーザーの性格や経歴などの情報を覚えさせ、その人にマッチングするような実践哲学を作り出せば、「そういう意味での人類の悩みには貢献できるかもしれません」(上杉)と話す。

人間の未来は……
Photo: Keisuke Tanigawa

人間の未来は……

ChatGPTの飛躍的な進化は、今は人間の役割だと思われている論理構成、人間自身がどんな情報を取得するかについてのフィルター、さらに生活上、新たなテーマを設定したりすることすら、全てAI任せになってしまう怖さがある、と竹中は語る。

「生成AIが当たり前になった世の中で、人間には一体どんな情報が必要になるのか、見てみたい気がします」(竹中)

「北欧諸国における『ベーシックインカム』の社会実験のように、AIが人間に代わって従来やっていたことを完全に行えるようになったとしても、人は生きる存在理由を求めて、必ず新しいものを見つけてくるのではないでしょうか」と、上杉は人間の可能性を肯定した。

登壇者プロフィール

上杉隆

東京都出身。株式会社AIソリューション京都ほか、24社の設立に関わったシリアルアントレプレナー。1999年、ニューヨークタイムズを皮切りに世界中でジャーナリズム活動を開始する。ベストセラー「官邸崩壊」など著書多数。テレビ・ラジオでレギュラー出演も多い。僧侶、プロデューサーなどマルチに活動する実業家でもある。2012年、AI関連情業などを展開する企業、NOBORDERの代表を務め、各国の最新AIトレンドもいち早く発信している。X(旧Twitter)のフォロワー数は28万人。

竹中直純

福井県敦賀市出⾝。ソフトウエアプログラマー。1997年にdigitiminimi社を設⽴、ネット初期に坂本⿓⼀とのネットライブ、村上⿓とのウェブ⼩説配信を⾏い、2000年代には⾳楽配信、電⼦書籍、テキスト検索、電⼦通貨の技術開発と構築した。2010年代以降にはそれら事業会社(OTOTOY,BCCKS,Brazil)の発展的運営を⾏っている。近著に村井純との共著「DX時代に考えるシン・インターネット」がある。

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伏谷博之

ORIGINAL Inc. 代表取締役、タイムアウト東京代表

島根県生まれ。関西外国語大学卒。大学在学中にタワーレコード株式会社に入社。2005年 代表取締役社長に就任。同年ナップスタージャパン株式会社を設立し、代表取締役を兼務。経て2007年にORIGINAL Inc.を設立、代表取締役に就任する。2009年にタイムアウト東京を開設。観光庁アドバイザリーボード委員(2019〜20年)のほか、農水省、東京都などの専門委員を務める。

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