日々の暮らしの中には、言葉にならない記憶や、使い古された道具や布に宿る気配が静かに息づいている。婦木加奈子は、生活の風景や人の営みの痕跡を主題に、身近な素材と手芸的な手法を用いた彫刻作品を発表してきた。「大阪府立江之子島文化芸術創造センター(enoco)」で開催される本展「縫い継がれるものたち」では、滞在制作から生まれた作品群と、その背景にある時間の積み重ねを紹介する。
滞在期間中には、子どもから大人まで誰もが自由に参加できる縫い物の遊び場「縫の場(ぬのば)」が開かれた。素材をつなぎ合わせ、ほころびを繕い、糸で線を描く──「縫い物でつくる」という緩やかなルールの下で手を動かす時間が重なり、そこから新たな物語が立ち上がっていった。
本展では、日々の暮らしの中で使われてきた布や旅の記憶を宿した断片が、時を経て別の営みの中で仕立て直されていく過程をたどる。滞在中に出合った記録や対話、ワークショップを通じて育まれた関係性が作品へと結実し、鑑賞者それぞれの日常や記憶とも響き合う。
※10〜19時/休館日は月曜/入場は無料
