真珠のボタン

映画, ドキュメンタリー
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真珠のボタン

今作は、ドキュメンタリー映画のエキスパートであるチリ人監督パトリシオ・グスマンが、広大な砂漠と宇宙を舞台に、ピノチェト政権下で行方不明となった政治犯たちと、知を追い求める者を見事に繋げた映画『光のノスタルジア』に続く、哲学的で壮大な歴史ドキュメンタリーだ。地球や惑星の水の性質へ静かに思いを馳せるところから、行方不明となった1000人を超すチリ人の記憶へと、ストーリーは巧みに展開していく。行方不明者の遺体は、1970年から80年代のピノチェト政権により無残にも飛行機から海へと落とされたのだ。

 途中グスマンは、今は離散してしまった、チリ南部に位置する西パタゴニアの水の放浪民の運命にも目を留める。外界との接触がなかった彼らは、植民地主義と近代化に屈するまでの何百年もの間、僻地の川や大海原を木をくり抜いて作った船で移動する生活を送っていた。ここで、ジェミー・ボタンと呼ばれていた先住民の少年が、イギリス人の商人により19世紀のロンドンに連れて行かれ紳士に成長し、後に故郷に戻るが、どちらの文化にも属することができない。という映画のタイトルとなったストーリーが登場する。

 後半でグスマンは、ダイバーたちが近年、鉄道の枕木を探し始めた話題に触れる。この枕木は、ピノチェト政権下、チリ人の遺体を水中の墓場へと捨てる際に遺体に縛っていたものだ。ダイバーの一人が腐った枕木から、今ではすっかり錆に覆われた白く光るボタンを見つける。こういった神秘的で意味深い繋がりが、いつも驚きと想像が詰まったグスマンの映画を見ごたえのある作品へと昇華している。『光のノスタルジア』に比べると、少々不自然でまわりくどい点もあるが、作品全体のパワーは強烈だ。

2015年10月10日(土)岩波ホールほか全国順次公開
 (c) Atacama Productions, Valdivia Film, Mediapro, France 3 Cinema - 2015
 
 
テキスト:Dave Calhoun

掲載日

リリースの詳細

出演者と制作者

監督 Patricio Guzman
脚本 Patricio Guzman
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