ムーンライト

映画, ドラマ
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ムーンライト

この映画こそが、我々が映画を観る理由なのだ。できれば他者に寄り添いながら、理解し、近づき、心を痛めるために

本作は、バリー・ジェンキンス監督が少年の成長を絶妙に描いたドラマであり、数多くの奇跡が詰まった切ない物語だ。主人公の内気なシャロン(アレックス・ヒバート)は、いじめっ子たちに追いかけられ、怯えた目で暮らす10歳の少年。彼の短い少年時代は、混乱と苦悩に満ちていた。心を許せる2人の大人(1人は麻薬ディーラーで、麻薬中毒者であるシャロンの母親に麻薬を売っていた)は、彼の両親ではなかったが、少年が「僕はオカマなの」と問いかければ伝えるべき言葉を知っていた。

2008年に長編デビュー作『Medicine for Melancholy』を発表したジェンキンス監督は、スクリーン上でめったに掘り下げられることのないアフリカ系アメリカ人を取り巻く世界の問題を描き出し詩的な言葉を用いながら、社会文化的な領域まで踏み込んでいる。本作ではマイアミの犯罪が多発する地域が描かれるが、そこは注射針が散乱する薬物の取引場所であり、安っぽいダイナーが立ち並び、夜には熱風が海岸を覆う、私たちがいつも映画で目にするようなイメージとはかけ離れた場所を映し出す。そして、内面で起こるステレオタイプに当てはまらない性的な混乱を明確に表現することで、より革命的な作品に仕上がっている。映画『ブロークバック・マウンテン』や、同性愛を描いたそのほかの作品を受け継ぐわけではなく、フランク・オーシャン(初恋相手が男性だったと告白した若手のR&Bシンガー)が刻むビートの張り詰めた不安が湧き上がるような新しい作品がうまれたのだ。


シャロンは相変わらずいじめられて窮地に立たされる10代の少年(アシュトン・サンダース)へと成長するが、3つの時代に分けて描かれるシャロンはいずれも繊細で陰がある。これらの時代は、劇作家タレル・マクレイニーが書いた自伝的な戯曲『月の光の下で、美しいブルーに輝く(In Moonlight Black Boys Look Blue)』が原案となっており、それぞれの時代による制限を取り外し、劇的な場面によってフランソワ・トリュフォーに通じる感動を描いている。また、サメのように旋回するいじめっ子に合わせてカメラが回転するシーンでは、終わりのないサイクルを示唆する悪循環を恐ろしいまでに表現していた。

最後の時代では、シャロンはかつての男友達(アンドレ・ホーランド)と再会を果たし、ジュークボックスからはロマンチックな曲が流れだす。この章では、戯曲では描かれないエピソードが展開する。本作では、成長に伴う痛みをこらえ、それが硬化した傷跡と個人的な抱擁へと変わる物語が描かれていた。この映画こそが、我々が映画を観る理由なのだ。できれば他者に寄り添いながら、理解し、近づき、心を痛めるために……。

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原文:JOSHUA ROTHKOPF
翻訳:小山瑠美

2017年3月31日(金)TOHOシネマズシャンテほかにて全国ロードショー

配給:ファントム・フィルム
© 2016 A24 Distribution, LLC

掲載日

リリースの詳細

出演者と制作者

監督 Barry Jenkins
脚本 Barry Jenkins
出演 Alex R. Hibbert
Ashton Sanders
Trevante Rhodes
Naomie Harris
Andre Holland
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