パターソン

映画, ドラマ
4 5 つ星中
パターソン

ジム・ジャームッシュの新作で、アダム・ドライバーがバスの運転手であり素人の詩人を演じた

独特の世界観で見応えのある作品を発表してきた監督ジム・ジャームッシュが、日常生活を繊細で豊かなエピソードでつづった愛らしい映画『パターソン』とともに戻ってきた。

本作は、詩人のウィリアム・カーロス・ウィリアムズ、アレン・ギンズバーグ、コメディ俳優のルウ・コステロらを輩出したニュージャージー州パターソンで生まれ育ったバスの運転手であり素人の詩人でもあるパターソン(アダム・ドライバー)の何気ない日常の1週間を記録した物語だ。いつもと変わらないようで少しずつ違う毎日を、平凡ながらも面白いルーティンを続けながら過ごす主人公の生活が描写される。デザイナーでカップケーキ職人、歌手志望でもあるパートナーのローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)の隣で目覚め、イングリッシュブルドッグのマーヴィンと散歩に出かけ、地元に昔からあるバーに立ち寄り、ビールを1杯だけ飲んで帰宅する。彼の仕事は、双子だらけの不思議な乗客たちをバスで運び、彼らの会話を聞くことだ。そして、日々の出来事に基づいた詩を運転中や散歩中に考えている。

ジャームッシュが脚本にひねりを効かせており、フレデリック・エルムズの撮影技術も素晴らしい。3人の主演俳優をはじめ出演者の愛嬌たっぷりの演技は見ものだ。愛犬マーヴィン役のネリーはあなどれず、向上心のあるローラをゴルシフテ・ファラハニ(Golshifteh Farahani)が好演している。何よりもドライバーが物思いにふけりがちで、さりげない思いやりがある主人公を丁寧に演じている。

オクラホマ州出身の現代詩人ロン・パジェット(Ron Padgett)の詩集の中から選ばれた言葉を、ドライバーがためらいがちに言葉の響きを試す場面で、スクリーン上に手書きの文字が映し出される。それらの詩は、まるで着古した愛用のスーツのように、しっくりと役に合っていた。本作は、芸術家をごく普通の人として描いた気取らない肖像と言えるだろう。パターソンが日本の詩人(映画『ミステリー・トレイン』に出演した永瀬正敏)と出会うシーンでは、過去の作品との繋がりを感じられた。本作は「アートとは、まず自分を取り巻く世界に気付き、それと心を通い合わせることだ」と示しており、悲しくて美しいこの世界での友情と愛の重要性を描いている。ジャームッシュによる思慮に富んだ良作がまたひとつ生まれた。

原文:GEOFF ANDREW
翻訳:小山瑠美

2017年8月26(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開

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配給:ロングライド

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掲載日

リリースの詳細

出演者と制作者

監督
Jim Jarmusch
出演
Adam Driver
Golshifteh Farahani
Masatoshi Nagase