TOKYO MUSIC BOX #22 バレアリック飲食店

テキスト:
Time Out Tokyo Editors
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in collaboration with KKBOX 

バレアリック飲食店

値段:¥¥

音量:

照度:★(ランチは明るい)

ポイント:南の島の郊外に佇む大衆食堂や酒場を彷彿させる店内

この一杯:季節に応じた大衆的サワーカクテルや酎ハイ

テキスト:高岡謙太郎 

 

定番スポットや老舗バー、注目の新店まで、魅力的なミュージックスポットを、店主、スタッフがセレクトしたミュージックプレイリストとともに紹介する連載企画『TOKYO MUSIC BOX』。

今回紹介するのは、2015年4月にオープンしたバレアリック飲食店。小田急線の豪徳寺駅から世田谷線沿線を歩くと、線路沿いの一角に「Ballearic」と鮮やかに輝くネオン管が看板になっている飲食店が目に入る。白を基調とした店内にはたくさんの観葉植物が配置されており、南国のリゾート感溢れる爽やかな内装。波の音が聞こえてくるかのようだ。

店長の國本は、松陰神社前駅のカフェSTUDYを立ち上げた元店長。それ以前にDJ活動をしていた國本は、約10年前からバレアリック、コズミック、イタロハウスなどのジャンルに傾倒。自分の好きな音楽の要素を含めつつ、より潜んだスタンスで飲食店を運営したいと思い、昨年春に開店したという。

まずは國本に店のコンセプトと密接な曲を選んでもらった。なかでも『ノスタルジア・オブ・アイランド』は、店を象徴する1曲だという。「細野晴臣さんなどが参加した企画コンピレーション『PACIFIC』の1曲です。山下達郎はすごい好きなんです。終盤に一瞬だけコーラスが入るんですが、達郎さんの曲でインストって珍しいですよね。この曲は店のイメージにぴったりで、むしろこの曲に似合う店をやろうと思ったくらい」。

バレアリック飲食店という一風変わった店名。その由来を聞いてみると「エゴイスティックな店をやろうと思ったので、店名からそれを表したくて。そもそもお店の名前なんてなんでもいいと思っているのですが、自分らしい要素は入れたいなと。『バレアリック』って国民の9割以上が知らない単語だと思うけれど、だからこそ先入観がないし、変わった名前でも根付いてしまえば問題ないかなと。飲食店という単語も、店名で使ってるとこ珍しいし、ちょっとミステリアスな印象でいきたかった(笑)」とのこと。

約30席ほどの店内を包み込む音響は5.1チャンネル。日中はBluetoothから音源をスピーカーに飛ばしている。DJブースは店の奥にある。

店を始めるとなかなかパーティーに繰り出せないため、逆にDJを呼びよせて週末を中心にプレイしてもらうようになった。日中はオンライン上にあるDJミックスや、店でのDJプレイを録音した音源をBGMに使うことが多いという。

一般的にはあまり浸透していないバレアリックという単語。國本の「バレアリック」の捉え方が店の雰囲気に反映されている。

「約10年前、シスコハウスやディスクユニオンでよくレコードを買ってたのですが、特にシスコハウスのバイヤーだったDr NishimuraさんやDubbyさんといった方達が紹介してたコズミック、バレアリック、イタロハウス周辺のダンスミュージックにズッポリはまっていたのが出会いです。最初はスペインのイビサで生まれたなんでもありのダンスミュージックの形態のようですが、近年はチルアウトなニュアンスが強いと思います。厳密な定義がなく、すごくアンニュイなジャンルで、どういうものがバレアリックかと言われても言葉にするの難しいですよね。ジャンルというより空気感とか情景だったり、南国的な開放感っていう印象はあります」。

話を聞いているうちに、DJ活動をしていた時代の思い出話も。

「DJを始めた20代前半の頃は、井上薫さんのパーティーによく行っていました。僕のなかでバレアリックのイメージが強いひとりです。そこから”RAWLIFE”や”mixrooffice”周辺、特にクリスタルさんやCOS/MESが出るパーティーにはよく遊びに行きました。2008年くらいから薫さんと岩城健太郎さんのパーティー『Floatribe』で一時期レジデントでDJしていたという縁もあって、このあいだ行った1周年パーティーは薫さんにDJをしてもらったんです。最近レコードは専ら買えていませんが、オンラインサイトで色んな音源はチェックしています。DJをすること自体は今でも好きなので、誘われて隙があればDJもしたいですね」。

國本が作成してくれたプレイリストには、クラブシーンに身を置いていたことで出会った楽曲も多い。

「ドリアンとは以前からよく一緒にDJパーティーをしていました。このアルバムを聴いた時は「ドリアンやるな〜」って思いましたね。昨年末にうちで披露してくれたライブは店の雰囲気を意識してくれたセットですごく良かったんです」。

「Gabby and Lopezは超好きですね。ファーストアルバムが一番好きなんですけれど、あえて今回はセカンドアルバムから浮遊感のある1曲を選びました」。

「2004年に出たForce of Natureのセカンドなんですが、ちょうどバレアリック、イタロ、コズミックに傾倒していた僕にはドンピシャなアルバムでした。BPM遅めのダンスミュージックを好むようになったきっかけと言っても過言じゃないかもです」。

音楽だけでなく、食事やドリンクのクオリティにも定評のある同店。フードメニューは当初、イタリアン、メキシカン、ハワイアンを謳っていたが徐々に無国籍化。南の島イメージだけに魚介を使ったメニューが多い。いち推しは具沢山のブリトーと豊富なパスタメニュー。音楽イベントなどに出店する際は、目の前でブリトーを巻く演出を心がけている。昼は地域のママと子ども、夜は近所の方や音楽好きの常連で賑わうが、時々音楽会的なイベントも行われる。これまで、エマーソン北村やラヴミーテンダー、ちなぼん、ビデオテープミュージック、ベイパナ、ドリアンなどが出演してきた。8月の後半からは、日本のバレアリックサウンドの第一者Calmの作品をデザインしてきた山本真紀子による、トロピカルでガーリーなイラスト展が予定される。

早くも世田谷区周辺のDJや音楽好きたちのコミュニティスペースとして浸透しつつある同店。店の前をのんびりと行き交う世田谷線を眺めながら、バレアリックなゆるさに身を委ねてみては。

 バレアリック飲食店のプレイリスト『Trip to Optimistic Resort』はこちら

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