新宿にキャバレー文化を。生声にこだわったシャンソンライブが毎月開催

テキスト:
Time Out Tokyo Editors
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掲載日:2015年8月12日

世紀転換期のパリ、ベルエポックの空気に憧れたことが一度でもある人なら、エリック・サティやパブロ・ピカソよろしく、キャバレーでシャンソンやアルコールに耽溺したいと夢想したことがあるだろう。日本でも「シャンソニエ(本来は、歌を作り歌う人の意)」と呼ばれるライブハウスが一世を風靡したが、美輪明宏を輩出したことでも名高い銀座の「銀巴里」が1990年に閉店したことにはじまり、次々と有名シャンソニエが廃業を余儀なくされ、シーンを気楽に享受するのが難しくなった。2015年の8月から12月にかけて新宿にて毎月開催される『Le Monde de Seiji ~聖児の世界~』は、そんな東京人にとって閉ざされつつあるシャンソンの世界への扉を、慎ましくも確かに開くものとなるだろう。

聖児

主役となるシャンソン歌手の聖児は、国内はもとより、本場パリでもホール、劇場公演を成功させてきた実力派だ。いわゆるシャンソン界のみならず、ピチカート・ファイヴの高浪慶太郎や野宮真貴、ムーンライダーズの武川雅寛、ピエール・バルーら幅広いアーティストたちがレコーディングに参加してきた。また、女優の松田美由紀や、寺山修司の演劇実験室「天井桟敷」出身の蘭妖子など、強烈な個性との共演でも注目を集めている。


フランス文学者で作家の堀江敏幸が「甘やかにざらつく」と賞した声で、人生の悲喜こもごもを美しく激しく歌い上げる聖児は、その厚い交友録からも分かるとおり、各界に多くのファンを持つ。三菱商事初の社内ベンチャーから独立し、PASS THE BATONSoup Stock Tokyoなどユニークな店舗展開で知られる会社、スマイルズの代表を務める遠山正道もそんな1人だ。

歌が、大きなかたまりのまま、口から入ってくる。
咽喉につまって、涙がでる。
胸につかえて、パンパンになる。
他人に気付かれぬよう、あごの滴がかわくまで、前を見つめている。
いっつも、そうなる。
遠山正道

聖児


会場となるバーtoiletもまた、スマイルズから社内ベンチャー第1号として立ち上がった店舗だ。看板ひとつない入口から木造家屋の細い階段を上ったところにあるこのバーは、アルコールランプの柔らかな光と、静かに温かい音楽で、夜ごと様々な人々を迎え入れる。店内奥にある猫足のバスタブや、ライアン・マッギンレーのオリジナルプリントがキラリと光るセンスをうかがわせる。

toilet店内風景
toilet店内風景


「ささやかなこの空間にアーティストやクリエーター、感度の高い人たちが集まる様は、パリで現在もなお営業を続ける老舗キャバレー『オ・ラパン・アジル』を訪れた時に夢想した、エディット・ピアフが唄い、画家のピカソやユトリロ、マティス、詩人のアポリネールらが通った頃の本当のシャンソニエの空気を感じる」と、聖児は言う。大きなコンサートホールや劇場ではなく、あえて新宿の小さなバーを会場に選んだのには必然的な理由があったのだろう。どんな情報でも即座に手に入ってしまう現代においては、音楽すら情報として簡単に消費されてしまう傾向にある。だからこそ聖児は、ピアノの生音、マイクなしでの生声での歌唱にこだわった。緊密な空間での濃密な時間を、ぜひ体験してほしい。

『Le Monde de Seiji ~聖児の世界~』の詳しい情報はこちら
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toiletピアノ
toiletワイン

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