市川崑映画祭に向けて復活する、手描き看板の制作現場を訪れた

Mari Hiratsuka
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Mari Hiratsuka
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2016年1月16日(土)から市川崑生誕100年を記念した映画祭『市川崑映画祭‐光と影の仕草』がスタート。開催に合わせ、懐かしの手描き看板が角川シネマ新宿に掲示される。今回タイムアウト東京編集部は、映画看板専門の職人、北原邦明が所属する柏工芸を訪れ制作の過程を覗いてきた。

北原は、手描き看板歴38年のベテラン職人。全盛期には、今はなき名画座シネパトスなどを中心に1年で200作品もの看板を制作していた。そのなかには、映画『タイタニック』、『スターウォーズ』などの作品も。北原が看板職人になったきっかけは、アイデアを出して創りだすというクリエイティブな仕事がしたかったからだそう。 

看板の制作手順は、まずプロジェクターから新聞紙などに使われる薄紙「ざら紙」に宣伝素材を投影させ、下書きのラインを描くことから始める。そして、もとの素材を確認しながら色づけをしていく。色づけが終わると、分割された紙を乾かし、最終的な色の調整を行い、看板用の板に貼付ける。ここまでが北原の仕事だ。制作の行程を見ていて印象的だったのは、北原の迷いのない筆遣いだ。身に付いた感覚が自然と身体を動かし、みるみるうちに立体感や感触まで感じさせる作品に仕上げていった。

しかし、現状ではシネコンの登場やインクジェットプリンターの普及により手描きでの仕事はほぼない。看板職人の技術の継承について北原は、「こういうものが必要になったら、何かまた違うかたちで出てくるだろう」と異なる可能性を語っていた。

市川崑映画祭は、2016年1月16日(土)から2月11日(木)まで角川シネマ新宿にて開催される。大映時代の作品を中心に、映画『雪之丞変化』、『おとうと』、『黒い十人の女』、『犬神家の一族』などの代表作が揃い、岩井俊二監督が手がけたドキュメンタリー映画『市川崑物語』とあわせ全27作品を上映。また、北原の看板は15日から期間中掲示される。古き良き手描き看板の味わいと名作映画をぜひこの機会に見に行ってほしい。

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看板『雪之丞変化』(C)KADOKAWA 1963

作業場に飾られた師匠の作品 

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