ネットとメディアの未来を考える、動画サイトPLAY▶TOKYOが始動

テキスト:
Time Out Tokyo Editors
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2016年4月で7周年を迎えたタイムアウトカフェ&ダイナー。そのスペシャルイベントの一貫として、タイムアウト東京が主催し、毎回様々な分野のエキスパートを招くトークイベント『世界目線で考える。』のスペシャルバージョン、『世界目線ラウンジ』が開催された。第2弾は、『世界目線ラウンジ ガイドは動画にする。』と題し、2016年2月に動画ガイド『PLAY▶TOKYO』を3社共同で立ち上げた博報堂ケトルの嶋浩一郎、TUGBOATの川口清勝、タイムアウト東京の伏谷博之の3人がパネラーとして登壇した。2020年を見据え、スタートしたプロジェクト『PLAY▶TOKYO』。その立ち上げの背景には、伸び続ける訪日外国人観光客数と、ネット環境のさらなる発展があった。トークはまず、それぞれのインターネットについての考え方を語るところから始まった。

 

川口はまず、広告代理店のインターネットに対する考え方に問題があると指摘した。インターネットの広告費はラジオ、雑誌を抜き、ついには新聞をも抜いてしまった。にもかかわらず、いまだに広告代理店の営業はテレビコマーシャルを売りたがり、ネット広告は儲からないと考えている。川口は広告代理店を不動産屋にたとえ、高く土地を買ってくれるなら家はサービスで建てる、というシステムで成り立っているビジネスなのだと言う。たとえば多くの人が見る月9のドラマの枠にCMを流すことは、1度で大多数にメッセージを届けることを意味する。同じ時間を共有することに価値を見出し、企業はそれをリーチ数として換金するシステムを採用してきた。それはテレビなら視聴率であり、新聞なら部数、そしてネットならPV(ページビュー)という形で表されてきた。

しかし、今後は「Relevancy」、つまり「適合性」が重要視されると川口はいう。従来の「1 to Many」から、「1 to 1」へ。自分に合った、自分に向けられたコンテンツに課金するシステムが求められる。その例として挙げたのはマガジンハウスの雑誌『BRUTUS』やラジオの投稿など、少数ながらも確実に対象に対して興味を持ち、熱量を持ってコンテンツに向き合っている人々がいるメディアだった。そして、今後のネットはそういう場所になるべきであると語った。

嶋もまた、ネットの問題点として真っ先に価格破壊を挙げた。現状としてデジタルコンテンツは「1PVあたり何円」、という換金システムで扱われる。しかし、インターネットの本質が民主主義にあるとはいえ、たとえば素人ライターの記事と大手新聞社の海外派遣記者が書いた記事が同じ収入システムで扱われるのはおかしいと語る。新聞社のようなコンテンツホルダーが売りにすべきはそのクオリティであり、問題は取材コストの捻出方法にある。適した相手にコンテンツを発信し、ユーザーはそれに見合った対価を払う。世界共通のインターネットの世界に必要なのは新しいマネタイズの発明であると説いた。

そして、 いよいよ話題は『PLAY▶TOKYO』に移る。川口は訪日外国人観光客は2016年4月には2000万人を超え、2020年には4000万人を超えると言われている今、向こう10年のうちに日本国内で経済を回すことのできる「アクティブ」な人の数は、外国人が日本人を上回るだろうと予測する。このまま国内のコミュニケーションにだけ対応していてはまずい。来る逆転に備え、今からやるべきことがあるのではと感じたのが2年前だったという。かねてから嶋の立ち上げたケトルと仕事がしたいと思っていた川口は、『PLAY▶TOKYO』でそれを実現することになった。

『PLAY▶TOKYO』のコンセプトは「A VIDEO MAGAZINE OF THINGS TO DO IN TOKYO」、東京を雑誌のように編集する動画メディアだ。目標は2つ。1つは、『You Tube』などのユーザーが投稿する動画メディアでもなく、また30秒の動画に数千万円をかける広告でもない、「ミドルクオリティー」の動画メディアを目指す。そして、そのコンテンツを作る企画、取材、撮影、編集までをこなす「Videographer(ビデオグラファー)」という職業を定着させ、動画で食べていける人を育てることを目指す。

動画にこだわった理由を、「さらに高速化するネット環境を見越し、スマートフォンという手元にあるデバイスありきの企画を作る」とさらりと川口は語ったが、これこそがこれからのメディアが目指すものではないだろうか。『PLAY▶TOKYO』のこれからに注目したい。

『PLAY▶TOKYO』の詳しい情報はこちら

川口清勝(かわぐちせいじょ)
アートディレクター

1962年12月14日生まれ。
85年多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。
同年(株)電通入社。
99年クリエイティブ・エージェンシー「TUGBOAT」を設立。

2006年、企画、制作、運営をTUGBOATが行う雑誌ポータルサイト「magabon」をオープンさせる。同発起人であり、編集長を務める。
2008年、オンラインメディア「X BRAND」を立ち上げる。同編集責任者。
同年多摩美術大学客員教授に就任。
同年KIDS SAVER PROJECT(2009年9月よりNPO法人KIDS SAVER)を立ち上げる。同代表。
東京ADC会員。NY ADC会員。LONDON D&AD会員。NY ONECLUB会員。

嶋浩一郎(しまこういちろう)
博報堂ケトル代表
編集者・クリエイティブティレクター

93年博報堂入社。CC局配属。企業のPR活動に携わる。01年朝日新聞社に出向「SEVEN」編集ディレクター。02~04年に博報堂『広告』編集長。04年、「本屋大賞」設立に参画、現在NPO本屋大賞実行委員会理事。06年既存の手法にとらわれないコミュニケーションを実施する「博報堂ケトル」設立。ザ・プレミアム・モルツ、浦沢直樹『ビリーバッド』、KDDI、J-WAVE、資生堂企業広告、三越伊勢丹企業広告などのキャンペーンを担当。カルチャー誌「ケトル」編集長。2012年東京下北沢に本屋B&Bを開業。編著書に『嶋浩一郎のアイデアのつくり方』、『企画力』、『このツイートは覚えておかなくちゃ。』、『ブランド「メディア」のつくり方』。

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