デンマークと東京のコーヒーカルチャーが交差する、P.N.B. Coffee

テキスト:
Yukako Izumi
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おそらくこの店ができるまで、東京でデンマークのロースターのコーヒーを口にするのは難しかっただろう。2015年10月、池尻大橋、神泉、中目黒などの駅から徒歩10〜15分ほどの住宅街に、P.N.B. Coffeeがオープンした。この住宅街のなかにある隠れ家のようなコーヒーショップを営むオーナーである、デンマーク出身のピーター・ブル(Peter Buhl)に話を聞いた。

「2014年に旅に出て、最後に訪れたのが東京。デンマークは小さな国だから、大都市で暮らしてみたいと思っていたんだ。東京は少し慌ただしいけど、ここでの暮らしは気に入ってるよ」

 

P.N.B. Coffeeという店名は、ピーターのイニシャルから

コーヒー豆はすべてデンマークのロースターのものを使用している。ひとつはコペンハーゲンの『コーヒー・コレクティブ(Coffee Collective)』。デンマークで最も有名なロースターだ。もうひとつは『ラ・カブラ・コーヒー(La Cabra Coffee)』で、デンマーク第二の都市であるオーフス発。どちらのコーヒーも日本で、さらに言うなればアジアで飲めるのは、ここP.N.B. Coffeeのみだ。ピーターがこの2つのロースターを選んだのは、もちろん彼がデンマーク出身だということがあるが、決め手となったのはどちらのロースターもコーヒー豆の生産者とダイレクトトレード(直接取引)をしているということだ。フェアトレードのさらに25%の金額を上乗せしていることが特徴で、バイヤーが年に一度は生産地に直接赴いているのだという。

 

「スペシャリティコーヒーはポピュラーになってきているけれども、普段コーヒーを飲むときに、今自分たちがコーヒーを飲んでいる場所のことだけでなくて、どこでコーヒーが作られているのか、誰がコーヒーを作っているのか、もっと生産者のことを考える文化になっていったらいいと思うんだ」

 

そう語るピーターが差し出すドリンクメニューに書いてあるのは、いさぎよく『コーヒー』のみ。『コーヒー』のなかからはロースターや産地などを選べるのだが、ラテやカプチーノは提供していない。どちらのロースターも浅煎りのコーヒー豆が特徴で、ミルクを合わせるよりもそのまま飲むほうが向いているからだ。淹れ方は、カリタのハンドドリップか、北欧を中心にメジャーとなっているエアロプレスから選ぶことができる。自分でリクエストしてもいいし、豆にあった淹れ方を聞いてみてもいい。ピーターいわく、カリタのほうが少しすっきりとして、エアロプレスはもう少しアロマティックだという。

 

 

とはいえ、ドリンクメニューはコーヒーのみ、と記載するのはやや語弊がある。メニューの2枚目には、同じくデンマークブランドのミッケラーのビールが並んでいる。店は18時までなので仕事の後に飲みにいくには向いていないかもしれないが、休日の昼間にコーヒーとビールというのも贅沢だ。 

コーヒーカルチャーが発展している北欧からやってきたピーターが東京をどう思うか気になるところだ。

「東京のコーヒーカルチャーはサードウェイブが台頭しているという点では、北欧やそのほかの都市と同じだと思う。東京では、若い人たちがコーヒーに情熱を注いでいて、コーヒーの文化や知識をもっと広めたいという熱い思いを感じるね。この店には、ほかの店のバリスタもよく訪れているよ。休憩しにだったり、デンマークのコーヒーを試してみるためだったり……。喫茶店?この前銀座にある店に友達を連れて行ったんだ。あの有名なところ……カフェ・ド・ランブル!オールドスクールで、サードウェイブのコーヒーショップとはまったく違うよね。すごくノスタルジック。あとは前に広島で飲んだコーヒーも印象に残っている。丸眼鏡のおじさん2人が、サイフォンでコーヒーを淹れてくれたんだけど…今まで飲んだコーヒーのなかで一番思い出深いかも」 

この数年で東京にスペシャリティコーヒーの店が増加し、コーヒー好きにとっては行きたい店リストが増えるばかりだが、そこにぜひP.N.B Coffeeも加えてほしい。

P.N.B Coffeeの詳しい情報はこちら

店内で520円~、テイクアウトで470円〜

北欧らしいインテリアで、自然光が心地よい空間。コーヒーを淹れているところが見られるように、カウンターはオープンだ

『コーヒー・コレクティブ』の『カラゴト』。250g、2,500円

『ラ・カブラ・コーヒー』のコーヒー豆で、どちらもコスタリカ産。左から『アルトス』(250g、2,400円)、『ハニーネリー』(250g、2,000円) 

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