リニューアルした京都市京セラ美術館で見るべき5のこと

ガラス張りのエントランスや杉本博司、作品にちなんだ和菓子など

テキスト:
Sato Ryuichiro
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京都市美術館が2017年から3年におよぶ改修工事による閉館を経て2020年5月26日に京都市京セラ美術館としてリニューアルオープンした。同館は1933年に開館し、公立美術館として現存する最古の建築であることでも知られる。本記事では建築だけでなく、中身も新しくなった同館の見どころを紹介していく。

1. 新旧が調和した建築を体験する。

今回のリニューアルは主に建物で、その基本設計者は青木淳、西澤徹夫設計共同体だ。その後館長に就任した青木は「建築を見、経験する人々が心に写しとる建築の像は、時とともに変化する。建築とはこうして、多重露光された像が幾重にも折り重なり、豊かな襞(ひだ)が作られていくものだ」という。

最も目立つのは、エントランスが1階西玄関からその地下に移動し、ガラスのファサード「ガラス・リボン」を挿入した点だろう。この新たな空間はミュージアムショップやカフェスペースとしても機能する。

京セラ美術館
撮影:来田猛

また、「西側、神宮道側の前広場を広場として残すことと、この建築がもともと持っている西玄関から東玄関を貫く軸線を強めること」を意識して、地下エントランスを直進した先に大階段を新設し、中央ホール(旧大陳列室)、東玄関、さらにその先の東山を望む日本庭園につながる一直線の軸線空間を生み出したという。 

京セラ美術館
ザ・トライアングルの上部 北西エントランス撮影:来田猛

また、北東部の増築部である収蔵棟があった空間には「東山キューブ」と呼ばれる新たな展示スペースが増築され、本館の北西には、京都ゆかりの新進作家の作品を展示する新設の展示スペース、ザ・トライアングルも設けられている。

杉本博司
《硝子の茶室 聞鳥庵》 2014年 京都市京セラ美術館での展示風景撮影:小野祐次 ©Hiroshi Sugimoto Architects: New Material Research Laboratory / Hiroshi Sugimoto + Tomoyuki Sakakida. Originally commissioned for LE STANZE DEL VETRO, Venice / Courtesy of Pentagram Stiftung & LE STANZE DEL VETRO.

著名な庭師、小川治兵衛が関わったとされる庭園では、園内の池には現代美術作家、杉本博司が制作した『硝子の茶室 聞鳥庵(もんどりあん)』が日本初公開中(2021年1月31日まで展示)。

2. 歴史を鑑賞する。

現在、同館ではリニューアルを記念して四つの展覧会を開催中だ。中でも、『コレクションルーム』はこの美術館の所蔵品を振り返るという意味で重要。同館の所蔵品は近代京都画壇の日本画の名品が多数含まれる貴重なものであったにもかかわらず、リニューアル前にはこれほどまとまった規模で同館の所蔵品を鑑賞できる機会は多くはなかったからだ。

京セラ美術館
秋期:竹内栖鳳《絵になる最初》 1913年 京都市美術館蔵 重要文化財 期間限定展示:9月26日〜11月29日

この展示は通年を春夏秋冬の4期に分けて開催。2020年9月26日(土)からの秋期展示では竹内栖鳳の『絵になる最初』(1913年)を期間限定で展示予定だ。重要文化財に指定されている同作品は修復後初公開で、女性の着物の抽象的な文様と背景や床の帯の精緻な植物の描写の対比が印象的だ。

ゆるやかに渦を巻いて見える着物の文様が、これから絵のモデルになろうとする緊張や困惑を表しているかのようとも評される。上気して白粉(おしろい)が落ちかけているような地肌と白粉の残る化粧肌が一目で区別できる精妙な色彩の使い方も美しい。

京セラ美術館
曾我蕭白《群仙図屏風》(右隻) 1764年 文化庁蔵 重要文化財 展示期間:11月10日〜15日

さらに、10月10日(土)からは『京都の美術 250年の夢 第1部〜第3部 総集編-江戸から現代へ-』(前期:10月10日〜11月8日、後期:11月10日〜12月8日)も開催される。こちらは江戸後期から現代にかけて、日本画を中心に、工芸家や書家、明治期に登場した洋画家など「京都の美術」の250年の歴史を彩った名品を三部構成で紹介。

与謝蕪村『鳶・烏図』(前期展示、北村美術館蔵)や曾我蕭白『群仙図屏風』(11月10日〜15日展示、文化庁蔵)などの著名な作品も多く展示される。時間が合えば、併せて見ておきたい。

3. 現代アートの最前線も体験する。

新たにできたザ・トライアングルで開催中の『ザ・トライアングル』シリーズ第2弾『木村翔馬:水中スペック』も見逃せない。木村翔馬は、従来の技法による絵画とともに、3DCG(3次元コンピューターグラフィックス)、VR(バーチャルリアリティ)による作品を制作。

京セラ美術館
木村翔馬 《In the Curtains》 2019年 VR映像の一部

デジタル技術は、浮遊する線や色面といった新たな表現の可能性を開く一方、水中での動きづらさにも似た、これまで体験したことのない感覚をもたらした、と木村は言う。「水中スペック」とは、このもどかしさを形容したタイトルだ。本展では、2次元のキャンバスと3次元のVR、その中間ともいえる透明なガラス窓(ザ・トライアングルの地上部分を活用)を支持体とする作品で構成される。

京セラ美術館
木村翔馬 《水中スペック》 2019年 VR映像の一部

この展示で木村が追求するのは、デジタル時代特有の身体的感覚が、画家自身と絵画の在り方に及ぼす影響だ。線や色面に刻まれる木村の動きや色彩感覚にも注目して鑑賞したい。

4. 京都ゆかりの現代アートを体験する。

京都は古都だ。古都といえば、古いものや歴史。そんな連想をある種体現するのが現代美術作家の杉本博司だろう。かつてニューヨークで古美術商を営んでいた際、杉本がしばしば京都を訪れていたというのはよく知られた話だ。その杉本による『杉本博司 瑠璃の浄土』は新設の東山キューブで開催中(〜10月4日まで)。

京セラ美術館
《仏の海 001》 1995 © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

新たに制作された京都蓮華王院本堂(通称、三十三間堂)中尊の大判写真を含む『仏の海』シリーズや、杉本が手がけた江ノ浦測候所で田中泯が踊る映像《泯踊》なども視聴できる。

京セラ美術館
「杉本博司 瑠璃の浄土」展示風景 © Hiroshi Sugimoto 撮影:小野祐次

なお、過去の写真集も会場の特設ショップで販売しているのでお気に入りを探してみるのもいいだろう。 

5. とにかく好きなものを見つける。

館内を一通り巡ったら、最後はミュージアムショップやカフェをのぞいてみたい。図録や洛中(らくちゅう)で人気のさまざまなグッズのほか、『ザ・トライアングル』シリーズ初回を飾った鬼頭健吾の展示に関連して、2種類のカタログ、『active galaxy(2,200円)と『KENGO KITO 2001-2014』(4,950円)も購入できる。

ミュージアムカフェ、エンフューズ(ENFUSE)では、老舗和菓子店の金谷正廣が展示中の作品にちなんで考案した限定の和菓子も楽しめる。

京都市京セラ美術館の詳細はこちら

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