あいちトリエンナーレ2019 モニカ・メイヤー《TheClothesline》photo by Akane Yorita

ジェンダー差別を可視化するアートプロジェクト「Our Clothesline with Monica Mayer」

テキスト:
Hisato Hayashi
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あいちトリエンナーレ 2019 の展示風景 モニカ・メイヤー 《 The Clothesline 》 2019 Photo: Akane Yorita

メキシコのフェミニストアーティスト、モニカ・メイヤーの作品『The Clothesline』をもとに活動するアートプロジェクト『Our Clothesline with Mónica Mayerが、2020年度の川村文化芸術振興財団支援助成(※)の対象に選出された。

『Our Clothesline with Mónica Mayer』は、あいちトリエンナーレ2019参加作家のモニカ・メイヤーによるレクチャーワークショップに参加した有志グループによるプロジェクト。フラワーデモ名古屋の参加を筆頭に、メキシコ大使館「移民女性のエンパワーメントワークショップ」、上智大学主催のジェンダー暴力と闘うキャンペーン「Raise Our Voices For Empowerment」など、を日本各地でThe Clothesline』を開催する活動を行う。 

可視化された声なき声『The Clothesline 

あいちトリエンナーレ 2019 の展示風景 モニカ・メイヤー 《 The Clothesline 》 2019 Photo: Akane Yorita

モニカ・メイヤーの『The Clothesline』は、鑑賞者が質問の記載してある小さな紙に回答を記入し、会場の物干しロープ(The Clothesline)に干すというインタラクティブアートの手法をとった作品だ。日常生活の中で感じる抑圧、ハラスメントの経験を紙に書き、物干しロープに展示することで世の中に埋もれていく「声なき声」を可視化し共有する空間を生み出している。

あいちトリエンナーレ2019ではこの作品を通じて、日常生活の中で埋もれている性に関する嫌がらせや暴力、明らかな犯罪的行為が日常的に行われていることを浮き彫りにし、話題となった。また同トリエンナーレを巡る騒動の標的となった『表現の不自由展・その後』の展示中止期間には、物干しロープに干された小さな「声」を引きちぎり『沈黙の Clothesline』と内容を変えた抗議としての展示も行っており、同氏の敏捷(びんしょう)かつアーティストとしての感度の良さが示されていた。

このアート作品の特徴は、紙とペンと物干しロープさえあればどこででも開催が可能なこと。特別な知識や情報必要なく凡用性が高い反面で、アートとしてのレイヤーは多岐にわたる。そのため開催地のコミュニティーグループと協働し、その土地で現在どのような問題が起こっているのか、重要な問題は何かをまずグループ内で話し合い、作品に反映させているそうだ。そして1回の作品づくりでは終わらせずに、その土地で継続していくこと、派生した各地でそれぞれの『The Clothesline』の開催を、作家は希望すると表明している。 

国際女性デーへ向けた取り組み

『The Clothesline』photo by Akane Yorita

本プロジェクトは国際女性デーに合わせ、未だ解消されないジェンダー問題をテーマに東京、名古屋での『The Clothesline』開催を企画。2021年3月8日(日)の開催に向けて、プロジェクトを進めている。また2020年度は、コロナウイルス感染症の影響により、フラワーデモ名古屋のみの開催となる。 

フラワーデモ名古屋 

2020年3月8日(月)17時00分~17時30分

場所:久屋大通公園希望広場/噴水南側
公式Twitter:FLOWER DEMO NAGOYA

※2020年度フラワーデモ名古屋の詳細は、Twitterの公式アナウンスを確認。 

『Our Clothesline with Mónica Mayer』

公式サイト:Our Clothesline

※『TheClothesline』の開催についてはOurClotheslineもしくは、モニカ・メイヤーに直接コンタクトを送ろう。

(※)川村文化芸術振興財団は、2017年から日本初となるソーシャリー・エンゲイジド・アートに対する支援助成事業を開始。第3回目となる2020年度は、インディペンデントキュレーターの窪田研二、アートプロデューサーの相馬千秋、美術家の高嶺格らを迎え、審査員に日本国内外の40件(海外20件、国内20件)の中から公募と審査を経て支援助成を行うアートプロジェクトを選定。

『Our Clothesline with Mónica Mayer』による『The Clothesline』、美術家のきむらとしろうじんじんと、大阪府大阪市西成区にて地域に密着したアートプロジェクトを展開するブレーカープロジェクトによるちょちょまうヴァナキュラー〜にしなり+路上+野点+屋台』の2つのアートプロジェクトへの支援助成が決定した。

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