すべてのものごとには「終わり」がある。人の一生も、自然も、文明も、そしてこの宇宙でさえも。しかし忙しい毎日、そんなことを考えている余裕はなく、また考えたくもないと思っているかもしれない。
2011年3月11日、未曾有の大地震が起きた。私たちの“今”を支えているものがいかにもろく、あやういものかが如実になったできごとだった。「すべてはいずれ終わる」という必然を踏まえて、人はなにを未来に残すことができるのだろう。そして生きることへの希望に対し、科学技術にはなにができ、なにができないのだろう。
終わりを知ったうえで、それでも続いていく“生”への希望を見出していく。それが生きている者の使命だからこそ、私たちは遠ざけてきた問題と今こそ向き合わねばならない。震災から一年を迎える2012年春、本展を訪れるすべての人のなかに、「終わり」から始まる新たな希望のものがたりが生まれることを願いつつ、本展を開催。
「生きているってなんでしょう?」「世界の終わりとは、なにが終わることなのでしょうか?」。
会場に一歩足を踏み入れると、次々に「問い」が現れる。これらをめぐる道すがら、科学の視点、あるいは科学以外の視点が、回答の手がかりとして提示される。一問一問について自分の胸に問いかけたり、その場で回答を書き出したり、ほかの人々の考えをのぞき見たり、あるいはともに訪れた友人や家族と語らったり……森の中をさまようようにゆっくりと会場を歩き、自らのなかにある答えを探す。自分が生きるうえで大切にしたいものはなにか、そしてどんな未来をつくりたいのか。
会場内は4つのセクションに分れている。起点となるのは今ここにいる「わたし」の存在。自分自身の終わりから自分をとりまくものの終わり、そして世界の終わりへ。会場空間を進みながら次第に視点を外部へと広げていく。