臼井はこれまで、私たちの身近にあるものを主役に、すでに存在するものの「見方」を変える、現代版「見立て」ともいえる作品を発表してきた。3年ぶりとなる本展は、2011年に開催した個展「encounter」で発表された写真シリーズ「Forgotten Liquid」の流れをくんだ新作を中心に構成される。
路上に放置されたプラスチック容器を撮影した前作「Forgotten Liquid」で臼井は、誰かによってぽつんと置き去りにされたペットボトルや空き瓶などに、都市で生活する人々の姿を重ね合わせ、一種のポートレート作品としてとして提示した。本展ではその視点(視線)をもう一段階押し進めるように、その姿を「彫刻」としてとらえペットボトルなど市販のプラスチック容器の形態をガラスで制作した彫刻作品を展示。一見、工芸品と見まがうような本作品は、ガラスの重みや感触とは裏腹に、そこにあるのはやはり我々にはおなじみのプラスチック容器であり、それは生活の中にある何気なさ、や、あたりまえ、であることの象徴のようにも見えてくる。
また、ベニア板の上に素材が並んだペインティング「何つくろう」の新作も発表。このシリーズは、描かれている素材で「何ができるか」、鑑賞者に想像の中で完成してもらう作品となっている。その他にも「こんにゃく」でかたちづくった、へんてこ彫刻を「Soft Sculpture」として写真におさめた小冊子(ZINE)も展覧会に合わせて発行する予定。