1924年、当時28歳の詩人アンドレ・ブルトンは、パリで「シュルレアリスム宣言」を発表、20世紀最大の芸術運動の口火を切った。シュルレアリスムは、偶然性、夢、幻想、神話、共同性などを鍵に、人間の無意識の世界の探求をおこない、日常的な現実を超えた新しい美と真実を発見し、生の変革を実現しようと試みるもので、瞬く間に世界中に広まる。そんなシュルレアリスムの影響は、たんに文学や絵画にとどまらず、広く文化全域に、そして広告や映画などの表現を通じて21世紀に生きる私たちの生活の細部に及んでいる。
シュルレアリスムの中核を担った詩人や芸術家の多くにとって終の住処となったパリの中心部に位置する国立ポンピドゥセンターは、この運動についてのもっとも広範で多様なコレクションによって知られている。膨大なコレクションの中から、絵画、彫刻、オブジェ、素描、写真、映画などの作品約170点に、書籍や雑誌などの資料を加え、豊かな広がりを持ったこの運動の全貌をつぶさに紹介する展覧会が実現した。20世紀の芸術の流れを変えたシュルレアリスムを体験する絶好の機会といえるだろう。