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慰めと励ましの民族音楽クンビア

オランダ人音楽家ディック・エル・デマシアドが南米の音楽に取り組む

テキスト:大石始

南米コロンビアで生まれた民族音楽、クンビアは、今や中南米を代表する大衆音楽として、現地では欠かせないものとなっている。日本ではまだまだ知られていないクンビアだが、この音楽に取り組む奇天烈オランダ人音楽家、ディック・エル・デマシアドは日本でもカルト的人気を集めている。昨年に続いて来日を果たした彼に直撃インタビューを決行。謎に包まれたその世界観に迫った。

前回の来日時は東京を回る時間は取れたんですか?

D:忙しかったんであんまり時間は取れなかったんだけど、明治神宮に行ったのと、隅田川の花火大会も少し見られた。明治神宮は酒樽が積み上げられた参道に感動したよ(笑)。手を清める儀式も面白かったし、全体的に静けさを重視してるところが印象的だったよ。それと東京全般で驚いたのは、街全体がすごく静かだったことだね。スペインとかだとみんな車のクラクションを鳴らしてるし、中南米の国々だと喋る声も馬鹿デカイからね(笑)。東京は電車のなかもすごく静かだし。

ご出身はオランダですが、今はどこに住んでるんですか。

D:オランダとアルゼンチンを行ったり来たり。今はオランダで過ごす時間が長くなってるんだけど、それは造形美術家としての仕事が多くなってきてるからなんだ。アルゼンチンではミュージシャンとしてしか知られてないからね。小さい頃、アルゼンチンに住んでいたことがあるから、あの国に対しては感傷的な感情もあるんだよ。幼い頃、向こうの人にとても親切にしてもらったし、親しみもある。それとアルゼンチン人の物の考え方はすごく柔軟なんだ。

ディックさんはクンビアのどういうところに面白さを感じているんでしょう?

D:クンビアはものすごくハッピーで祝祭的な音楽なんだ。それでいてサルサみたいに熱狂的なものじゃなくて、落ち着いたところもある。あと、私には“人生をこれからも続けていこう”っていう前向きな部分も感じられるね。クンビアのステップは足枷を付けられた奴隷のダンスが元になってるわけで、そういう意味でも慰めとか励ましっていう部分があるんだよ。

では、オランダ人であるディックさんがクンビアに取り組む理由とは?

D:クンビアはアルゼンチンに住んでいた時からよく耳にしていた音楽だったし、音楽的にもいろんな可能性があると思っていた。ただ、私の場合はミュージシャン的発想からクンビアをやり始めたのではなく、ドミノのようにいろいろなものが展開していって、最終的にクンビアに繋がったんだ。

歌詞も独特ですが、どこからインスピレーションを得ているんですか?

D:私は5カ国語(英語、スペイン語、フランス語、オランダ語、ドイツ語)を喋るんだけど、それぞれの言語がどのように誤解されるか理解してるんだ。だから、言葉を使って遊ぶ楽しさも分かっているし、美術作家としてもたびたびテキストを用いているんだよ。

ダブルミーニングみたいなもの?

D:イエス。それと、例えば、とある国の言葉をそのまま別の言語に直訳したとしても、まったく違う意味を持つこともある。日本語をそのままスペイン語に翻訳した場合、スペインの人たちにとっては新鮮な意味を持つこともあるんだよ。

今取り組んでいるプロジェクトは?

D:最近はハイライフ(西アフリカの民族系ダンスミュージック)を聴いてるんだけど、子供の頃から好きだったんだよね。父親が聴いてたし……“ララララウウウ~”(と歌う)って感じでね。ハイライフの何が好きかって、1曲が長いんだ(笑)。今はクンビアの曲をハイライフみたいに長くできないか考えてるところでね、そうすることでオーディエンスと徐々に盛り上がっていくこともできると思うんだ。私はアフリカという土地をリスペクトしているし、もしも向こうから呼ばれることがあれば、アフリカでもクンビア楽団を作ってみたいね(笑)。

ディック・エル・デマシアドは現在日本をツアー中。2010年8月12日(木)に大阪Shangri-Laでライブを行うほか(競演はオオルタイチ、ALTZ、neco眠る、BIOMAN)、13日(金)は東京・新代田FEVERでもライブが予定されている(競演はドラびでお、オオルタイチ、ヤマベケイジほか)。また、8月14日(土)までは幡ヶ谷のFORESTLIMITでディックのドローイング展が開催中。最終日にはクロージングパーティーも行われる。詳細は特設サイト(utakata-records.com/dick2010)まで。

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