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ボーダレスな人びと 第1回

杉山文野(Tokyo Rainbow Week 2013 代表)

テキスト:寺田愛

タイムアウト東京とフェアトレード専門ブランド、ピープル・ツリーがコラボレーションし、新しい連載をスタートする。さまざまなジャンルで活躍する8人に、そのボーダレス観をインタビュー。彼らの言葉から見えてくるものとは……?

第1回に登場するのは、性同一性障害をカミングアウトし、講演やメディア出演、さらには4月27日から始まるTokyo Rainbow Week 2013代表として活躍する杉山文野。そんな彼に、ボーダレスなセクシュアリティ観について聞いた。

ー世の中が決めた「男」とか「女」とかそういった便宜上のボーダーを乗り越えたきっかけは?

もともと僕は生まれた時から、そんな線引きのどこにもあてはならなかったんです。だから、越えざるを得なかったという感じでしょうか。越えることによってしか生きるすべがなかったんです。

それって決して特別な何かではなくて、本当に衣食住からなんですよ。体のラインがでるのが嫌でTシャツも着ることができないとか、シートベルトや斜め掛けバッグで胸のラインがでるんじゃないかとか、トイレやお風呂、生理現象なんかも全部引っかかってしまって。

ご活躍されてますねって言っていただくけれど、僕は何かを努力したというよりも日々、普通に生活をしたかっただけなんです。

ー生きていく中では、ただでさえ決まり事が多いですが……。

そもそも、それぞれが持っているボーダーって、生まれながらに与えられているものもありますよね。例えば、日本人で、女性で、杉山家で……僕は女の子っていうカテゴリーを与えられて、でも女の子じゃないよなっていうズレがあったので、すごく考えて生きてきたんです。女ってなんだろう、男ってなんだろう、それを突き詰めると、人ってなんだろう、生きるってなんだろうって。常に問い続けてきたからこそ、そこで自分で考える力みたいなものを鍛えられてきた。

だからこそ、人の意見を否定するのではなく、それぞれの意見を認め合い、共有することを大切にしていますね。

ーいろいろな国を旅されていますが、国によってそのボーダーも違いますね。

そうですね。旅することで、気づくことは多いです。日本の常識は、世界の非常識だったり。

ただ昔は、文化も言葉も越えた自分の知らない世界に、もっと心が楽になる場所があるんじゃないかと思っていたんです。

そんな時に行ったのが、エジプトの砂漠。何にもないだだっ広い、真っ白な幻想的な世界。そこに立った時ですら、自分の体が嫌なんだということに気がついたんです。これはもう逃げ道がないなと。世界のどこに行こうと僕は僕から逃げることはできないって。僕が僕自身を一番認めていなかったんだという事実と向き合いました。

ーたくさん旅をした中で、今、東京を選んで暮らしている理由はありますか?

僕は、新宿・歌舞伎町で生まれて、育ったんです。ここは多種多様な人が集まる、他にはないぐらいのコスモポリタン。自分のセクシャリティのことも含めて、いろんな人がいていいんだよっていう雰囲気が好きですね。特に、歌舞伎町ほど、よいも悪いもいろいろなものを受け止める懐の深い街はないんじゃないかな。

ーそういう意味でもTokyo Rainbow Weekも懐が深いですね。

僕はたまたまセクシュアル・マイノリティ(セクシュアリティにおける少数派のこと)というツールを使って話していますが、いろんなマイノリティに優しい社会を実現したいと思っています。それはイコール、マジョリティ(多数派)にも優しい社会なんだと思うんです。マイノリティっていう視点を使うことによって、何かに行き詰っているマジョリティの人たちに、新しい発見があるかもしれない。

4月28日には東京レインボー・プライドがあったり、5月6日までの10日間毎日、約30ものLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字を取った総称)に関連したイベントが都内各所で開催されます。足を運んでみることで、何か新たな発見があるかもしれないですね。

「性同一性障害、関係ないでしょ!いっしょでしょ!」って言ってくださること自体はありがたいけれど、僕たちにはまだまだ乗り越えなきゃいけない課題がたくさんある。そこを当事者だからとか被当事者だから、というのではなくみんなで一緒に越えていけたらうれしいです。ボーダーがあるからこそのボーダレスを考えていかなければ。



 

 

杉山文野(Fumino Sugiyama)
トランスジェンダー
NPO法人(申請中)ハートをつなごう学校 代表
Tokyo Rainbow Week 2013 代表
1981年、東京都新宿区生まれ。フェンシング元女子日本代表。早稲田大学大学院にてセクシュアリティを中心に研究した後、その研究内容と性同一性障がいである自身の体験を織り交ぜた『ダブルハッピネス』を講談社より出版。韓国語翻訳やコミック化されるなど話題を呼んだ。卒業後、2年間のバックパッカー生活で世界約50カ国+南極を巡り、現地で様々な社会問題と向き合う。帰国後、一般企業に3年ほど勤め、現在は自ら飲食店を経営するかたわら、各地での講演やNHKの番組でMCなども勤める。 
http://fuminos.com

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