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インタビュー:クエンティン・タランティーノ

10作品を撮り終えたら引退すると表明するタランティーノに迫る

Andrea Raffin/Shutterstock
テキスト:Jessica Hundley
翻訳:小山 瑠美

10作品を作ったら引退すると表明している、クエンティン・タランティーノ監督。最新作の名作西部劇『ヘイトフル・エイト』は、8作目だ。ハリウッドで最も妥協しない男は、本当に監督業から身を引くつもりなのか。

本インタビューが行われたのは、12月初旬のビバリーヒルズホテル。タランティーノは、機関銃のような早口で、最新作について語ってくれた。今作『ヘイトフル・エイト』は、南北戦争後のワイオミング州が舞台の西部劇。猛吹雪の中ロッジに閉じ込められた、カート・ラッセル、サミュエル・L・ジャクソンらが演じる賞金稼ぎを含むクセ者たちを軸に、偏見についてのストーリーが展開する。

2014年初めに新作映画の脚本が流出し、激怒したタランティーノは製作中止を発表。その後、ファーガソンでマイケル・ブラウン射殺事件が起こった。その約2年後に満を持してアメリカの人種にまつわるシーンが書き加えられた本作が公開されることになった。20年以上の映画監督キャリアを持つタランティーノは、計10作品を撮り終えたら引退すると表明しており、本作は8作目だ。こんなに映画を愛している男が、どうして引退することができるだろうか。

 

ーこれまでで最も政治的な映画ということですが。

そうだね。脚本を書き始めた時には、考えていなかったけど。これまでに多くの作品で、多少なりとも黒人と白人についてを描いてきた。アメリカの黒人と白人にまつわる問題や人種紛争を描くことで、自分は西部劇のジャンルに貢献しなければならないと思っている。少なくとも有意義なかたちでは、過去に誰も成し遂げていないからね。

 ーアメリカの人種問題を追求するために、映画『ジャンゴ 繋がれざる者』に続き、西部劇を選んだのはなぜですか。

西部劇は、製作された時代が明確に描かれる。1960年代後期から1970年代にかけての西部劇には、ベトナム戦争やウォーターゲート事件の影響が見られるように。そういう西部劇の大ファンなんだ。だから、作品では、アメリカの時代精神を描くことは欠かせない。今から10年後や20年後にこの映画を観ても、きっと当時のアメリカが抱えていた問題を的確にイメージできると思うよ。

ー計10作品を撮影したら引退すると表明していますが、本作は8作目になります。その考えは変わりませんか。

そういうアイデアだよ。僕は1作品を作るのに大体3年かかるから、あと10年近くはあるね。

「誰かが一緒に仕事したがってる」なんて理由だけで作ることもないし

ーその中にはテレビ作品も含まれますか。

テレビの作品も作るかもしれないな。

ー映画はあと2作品ですね。まだ52歳ですよ!

監督業を一生続ける男になりたくないんだ。終わりはあるべきだよ。全員ではないけど多くの監督が必要以上に続けていると思うんだ。

ー今後の作品は慎重に選ぶことになりそうですね。

映画を作る理由は、より明確になっていくだろうね。離婚の慰謝料や別宅の維持費を稼ぐためでもないし、「誰それが一緒に仕事したがってる」なんて理由だけで作ることもないし。

ー過去の作品では暴力を描いていますが、本作で暴力を抑えている理由はありますか。

今回の作品で学んだのは、いかにして暴力をストーリーに流れる気配に変化させるかということ。まるで「ダモクレスの剣」(常に戦々恐々としている状況の譬え)がキャラクターの頭上に吊るされているようにね。いつ起こるか分からない、でも起こるのは分かる。ただひたすら待つんだ。とても長い構築があって、僕はチェスの駒を置く。全滅させる前に、駒をすべて正しいマスに置かなければならない。いくらか忍耐してもらうことになるけど、その不安を抱くだけの価値があるはずだよ。

ー今後手がけたいジャンルはありますか。

第2次世界大戦とか、格闘技の映画ほど手がけたいジャンルは残ってないね。あるとすれば、ジョン・デリンジャー(1930年代前半アメリカ中西部で銀行強盗を繰り返していた男)みたいな感じの1930年代のギャングを描く映画かな。現代的な感じの映画にも興味あるよ。登場人物が車に乗っていて、ラジオをつけて、クールなドライブをするモンタージュとか。あと、いつも『エクソシスト』みたいな怖いホラー映画を撮ってみたいとは思っているね。僕のユーモア感覚や才能、あるいは時間を最大限に活用できるかは分からないけどさ。

ー笑えないタランティーノ作品を作ることはあり得ないでしょうか。

そういったユーモアを出せているか、全編を通して恐怖を醸し出せているかわからないけど、今作はこれまでで最もホラー映画に近いよ。ほかの西部劇と違って、ジョン・カーペンター監督の映画『遊星からの物体X』から最も影響を受けているんだ。それに、音楽はエンニオ・モリコーネが担当して、カート・ラッセルが主演しているんだ。もちろん映画『レザボア・ドッグス』も、同作から多大な影響を受けていた。つまり、すべてが一周して戻ってきていて、8作目と1作目を結びつける繋がりがこの作品に存在しているんだ。

ー相変わらず映画を作るのが好きですね。監督業で最も好きなことは何でしょうか。

そう思ってもらえて嬉しいよ。特に脚本と監督を手がけられるのは、すごくラッキーな事だと思う。自分で脚本を書いて、映画を作り、編集するのが大好きだよ。自分の仕事が本当に大好きなんだよね。



公式サイトはこちら

映画『ヘイトフル・エイト』は、2016年2月27日(土)から新宿ピカデリーほか全国順次公開。

監督・脚本:クエンティン・タランティーノ 
 
音楽:エンニオ・モリコーネ 
 
美術:種田陽平
 
出演:サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、
ウォルトン・ゴギンス、デミアン・ビチル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、ブルース・ダーン

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