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インタビュー:楳図かずお

The Hot Seat:楳図かずおインタビュー

イラストレーション:Haruna Nitadori

恐怖漫画からギャグ漫画まで、つねに新しい表現方法を築き上げ、「グワシ!」といった強烈なパンチラインを持つキャラクター“まことちゃん”などを生み出してきた楳図かずおは、間違いなく日本が誇る巨匠の一人。彼のリミットレスで自由な右脳は漫画だけに納まることはなく、音楽からタレント業まで、つねに日本のメディアを刺激し続けるBUZZとして最重要視され続けてている存在である。

1975年にリリースされた、楳図かずお初のソロアルバム『闇のアルバム』は“ミュージシャン楳図かずお”の存在を示した一枚であったが、2005年に画業50周年記念として紙ジャケット版でこの作品が再リリースされた事実はファンだけでなく日本のカルチャーシーンにおける一つの事件であり、さらに新たなコアなファン層が誕生した瞬間でもあった。1970年代から80年代にかけて、バンド『スーパー★ポリス』を組んでツアーまで行っていた楳図であるが、ファーストアルバム『闇のアルバム』に納められた、バンド名と同じ題名の曲『スーパー★ポリス』は、既に楽曲として高純度に結晶化されたマスターピースであり、滑り落ちるような高速なシンセロックのポップなフローは聴く人をヤミツキにしていた。まさにNHKの音楽番組で、銀色ラメのピッタリパンツに銀のロンドンブーツというド派手な格好で「ビチグソ・ロック」を歌っていた楳図全盛期の強烈な姿が脳裏に蘇るような一枚として、時代を超えて多くのファンのハートをわしづかみ。それが今から5年前の話であった…。

そんな楳図が、なんと『闇のアルバム2』の製作に入っているという。これに先立ち7月27日(水)には楳図かずおのシングル「新宿烏」もリリースされる。『闇のアルバム2』は、ある意味2011年のベスト盤になることが運命付けられたような、そんな匂いさえ感じさせられる作品だ。

ちょうどレコーディングが始まったばかりの楳図に、ほんの少しだけ時間を割いてもらい、過去の名作から最新作の話まで時間の許す限りインタビューを敢行。最後にはお気に入りのレストラン情報まで聞いてしまった。美味しそうに真っ赤なトマトジュースを飲む先生を前に、興奮を抑えきれず前のめりになりながらホットシート・インタビューが始まった…。グワシ!

ついにあの『闇のアルバム』のセカンドがリリースされますね…!

楳図:最近、わりとライブをやってるもんだから、目を付けていただいたんですね。それで作ることが決まりました。今回は聴かせる歌も多いですが、色々なパターンがあります。演歌もタンゴもプログレもありますし、童謡のような曲もあります。8月31日(水)にアルバムが発売になります。8月11日(木)にはタワーレコード新宿店、8月27日(土)にはアニメイト横浜、9月に大阪でもリリース記念ライブをやります。

前回の『闇のアルバム』は、ジャケットアートが女の子のイラストでしたが、今回は?

楳図:今回も可愛らしく、女の子のイラストでいこうと思っています。前回のイラストは作品『洗礼』からのイラストでしたが、今回は最近起きている出来事も意味しているような一枚にしようと思っています。キャラクターがいて、花が背景いっぱいにあるんですけど、殺伐とした風景で…。

歌詞の世界が深いですよね。今回もこだわっているんでしょうか?

楳図:ドラマやストーリーがある歌詞から出発することが多いんです。歌詞も曲もどっちもストーリーがないといけないと思うんですよ。最初は詞を作り、それにあわせて曲を作ることが多いです。

先生の歌い方は独特ですが、どなたかに影響を受けていますか?

楳図:特に勉強をしたことはありません。ビブラートのような歌い方は、歌の内容に合わせて出しているんです。今回は演歌の歌い方を研究しているんで、演歌風に歌っているものもあります。誰かに影響を受けているということはありませんが、美空ひばりさんはいいですよね。演歌の持っている“くさーい部分”ってすごく好きなんですよ。「自分にとっての演歌というのはこういうもの」という風に歌っているつもりです。

天才的な飛躍を全ての作品に感じるんですが、このアルバムはどうでしょうか?

楳図:難しい質問ですね(笑)。チキンジョージの歌なんか、変拍子を使っている感じが面白いですね。僕の場合、鍵盤を叩いて音を出したときの感覚で作っているので、そういう意味では、音の面白さがチキンジョージには入っているかもしれません。

先生は、もう漫画は描かれないんですか?

楳図:はい、漫画はもう描かないんです。弟子をとることにも興味ないです。成り行きが大事だと思うんです。菅さんも同じようなことを言っていましたが…(笑)。菅さんに同じこと言われちゃってちょっと嫌な気分になったんですけど(笑)。今回も、無理矢理ではなく、成り行きの中でアルバムの話が生まれたんですね。

誰かが、成り行きで「弟子にしてください」ってお願いにきたら弟子に取る可能性はありますか?

楳図:それでも、やっぱりとらないですね(笑)。

『スーパー★ポリス』の中に、「とととととととすてててててって…」と、とても長いフレージングがありますが、個人的にあれは凄いと思うんです。

楳図:僕もあれが一番好きなんです。「スーパー★ポリス」というバンドをやってたんですけど、そのバンドの安西さんがアレンジをしてくれたんですが、安西さんは「あのフレーズは長過ぎるよ」って言ってたんですけど(笑)。今回のアルバムは、そういった言葉遊びよりも、聞かせるものが多いかもしれません。『大阪の女』はロック歌謡、『14歳』はノリのいい感じです。『ひとりたび』は、曲の中でどんどん世界一周していくような、大げさになっていくような物語です。日本から出て行って世界を旅する。この辺って、自分自身の心情を歌っているんで。そういう意味では、『海賊ロック』も自分自身が好きな赤白のシマシマ(楳図先生は赤白のシマシマの服がトレードマーク)についての歌ですし。

日本に住んでいる外国人に、聞いていただきたいという部分はありますか?

楳図:外国についての曲は「自分の中にある外国」というものを大事にして作っているんです。『私は慎吾』の時もロンドンが出てくるんですが、それも自分の想像のロンドンなんです。どれだけリアルに描くかではなく、自分の中の風景が大切なんです。

確かに、『私は真吾』に出てくる佐渡島からロンドンって展開は凄かったですよ。あれは天才です。

楳図:あ、そうですね(笑)。最初に世界が固まっちゃっていたら、話の世界は広がっていきませんからね。描いた時点では分かっていなくても、現実に似たことが起きはじめていますね。バチカンの場合、もちろん写真は少しは見ますが、中に入ったことはないので、ほとんどは想像なんです。東京タワーの上の方もよくわからないので、想像で。東京タワーの場合は、双眼鏡で見に行ったんですが、ずっと見てると船酔いみたいにクラクラしてきて(笑)。

『私は真吾』で、真吾が四角から三角、三角から丸に変化していくシーンを表現したビジュアルが凄すぎですよね。まさに芸術です。

楳図:あれは、僕もうまくできたなあって思っています。宇宙の基本って形と方向だけなんじゃないかなって、描いているうちに気が付いたんです。生物なんかも、それで形が決まってくるし、方角云々があっていれば、それ自体の形も変わってくる。

現代物理学ができていないことが、楳図先生の漫画には詰まっているんです。

楳図:まあ、適当に描いているんですけど、描いている話の方向があっていれば、だいたい嘘でも本当に近い感じになってきます。考えながら書いているところもありますが、全体の骨組みは、ちゃんと最初に考えています。

『漂流教室』は映画化もされた日本漫画誌の傑作のひとつですが、同じようなテーマで『漂流ネットカフェ』など、若い作家によってどんどんと作られています。楳図先生が注目している若い作家はいますか?

楳図:えーと、分かりません。全く見ていないんです。絵柄的に近い作品も少ないですし。あまりアンテナは張っていません。

作品『私は真吾』は楽曲になっていませんが、それはどうしてでしょうか?

楳図:あ、そのうち作りたいとは思っていますが、今回は入っていません。とりあえずはそのときの気分でやっているんで。実は、日本ではない歌の方向にも、いつか行きたいって思っていますし、その国の曲はその国の言葉で歌った方がいいですよね。次のアルバムがあればですけど…。

(話は変わりますが)震災のときは、どんなことを感じましたか?

楳図:震災は地球が起こす出来事なので、防ぐことはできませんよね。動物が事前に察知して逃げるとよく言われますが、今回の東日本大震災では動物も全く逃げなかったようなので、そうなると人間にはもっと無理だったはずです。また起きる可能性があるので、とりあえずは逃げる本能をちゃんと身につけるしかないですよね。嫌なのは、やはり原発です。上の人たちが「原発は、はっきり廃止する」といって欲しいですよね。今は中途半端なので、不安な気持ちでいらっしゃる方も多いと思います。ズルズルと方向が出ていない。地球の出来事に方向を出せって言ったって、それに乗っかって生活しているわけですからそれは無理な話です。でも、原発に関しては方向をはっきり出すことは出来るはずです。

振り返ってみると、『漂流教室』とか『14歳』といった作品は、現在の世界を予見させるようなモノだったように思います。文明だけの味方をすること自体が間違いなんです。文明が進めば進むほど、破滅が近づいてしまう。「見たくないものは見ない」という心理なんでしょうけど。触れたくないものには触れないでおこう、という心理。しかし、生きるか死ぬかという状況では、そんなことを言っている場合ではないと思いますね。例えるなら、すごく巨大な隕石がぶつかろうとしているのに、家の中にいるから全然隕石が見えていなくて夫婦喧嘩しているような、そんな状態ですよね。それが今の日本のような気がします。

日本人って他の国と比べると、破滅した状態から立ち上がるのは得意なんだけど、立ち上がってから先の目標がない。経済発展したからって安穏としているのではなく、僕はこういう仕事をしているので、そこから先は芸術に向かってほしいと個人的には思っています。

『漂流教室』では、もうダメだというシチュエーションは何度もありますが、過去の世界のお母さんが送ってくれたものが助けてくれるという「強い思いが生んだ奇跡」というシーンが多くありますよね。

楳図:最後はうまくいってくれないと、生きる希望はないし、楽しく生きていけるようにちゃんと国の方向を決めてもらいたいです。そういうことが言えるのは、上の人だけなんです。

『闇のアルバム2』を買うと、何か希望は得られますか?

楳図:金のグワシカードが当たると、僕の家に遊びに行くことができるんです。日本って家をどんな風に作ろうとかいう考えがあんまりないんですね。この前も麻生さんが漫画の殿堂を作るっていっていましたが、漫画を入れる箱が普通の箱なのでつまらない。やっぱり建物自体が、芸術じゃないとダメだと思うんです。家って大事だと思うんです。僕の家も作品の一つなので。

現在、先生は74歳ですが、楽しく生きるために気を付けていることはありますか?

楳図:楽しく行きていくためには、病気にならないことですね。ご飯は少なめ、好き嫌いは特になし、鶏肉はあんまり好きではありません。生レバーとかはあんまり食べないですね。

オススメのレストランなどはありますか?

楳図:よく行くのはイタリアンレストランです。吉祥寺でよく食べにいくのは、『トラットリア ラ・クレアトゥーラ』というお店。リゾットが好きですね。イタリアンのお店は内装がキレイに作ってあるので僕は好きなんです。店内の雰囲気も気分転換になりますね。スイーツも好きですがいっぱい食べないですね。どっちかというと、寅屋みたいなアンコ系が好きです。

今では吉祥寺の街も変わってしまって、残念ながらそんなにオススメのお店はないんです。僕はただ、ブラブラとデパートを歩いているのが好きです。特に何かを買うわけではないのですが、丸井や東急をブラブラ歩くことが多いです。この前は、赤と白のシマシマのバッグを見つけたので帰りに買おうと思っていたら、もう誰かに買われてしまったんです…。


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