ヴァンパイア・ウィークエンドに聞く

タイムアウト ニューヨークによる新作「コントラ」についてのインタビュー

ヴァンパイア・ウィークエンドに聞く

「ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでレンジャーズの試合を観戦していたら、タイムアウト中に僕たちの『Mansard Roof』が流れたんだ」。ホッケーのユニフォームに身を包んだヴァンパイア・ウィークエンドのベース、クリス・バイオは、すね当てをはぎ取りながら、彼の音楽キャリアにおいて最も奇妙な経験を思い出していた。メンバー4人はインタビューのためにここに集まっていた。ホッケーのユニフォームを脱ぎ捨てながら、他の3 人のメンバーはそれぞれお気に入りのアリーナ曲を教えてくれた。

世間一般ではホッケーの試合で流れる曲といえばクイーンの『I Want to Break Free』だが、バンドのボーカル、エズラ・クーニグはオニキスの『Slam』、子供の頃の夢が“アリーナでのオルガン奏者”だったというキーボードのロスタム・バトマングリはThe Outhere Brothersのヒット曲『Boom Boom Boom』が一番だという。バンドメンバーは上機嫌だ。Time Out New York の撮影用に、彼らがリクエストしたボロボロで不格好なホッケー選手の衣装を着れたことに満足しているようだ。セカンドアルバム『コントラ』のリリースを機に、デビューからついてまわる「良家のお坊ちゃんバンド」というイメージを壊したかったのだろう。「最初の頃のレビューはどれも俺たちがコロンビア大学の卒業生で、アフリカ音楽に影響を受けていると書き立てていたからね」とクーニグは言う。「その後に出る記事はどれもその二つの要素が必ず盛り込まれるようになった。今回のアルバムで俺たちの音楽にその二つの要素だけじゃないってことを証明したい」。

ヴァンパイア・ウィークエンドは、デビュー当時からサハラ以南のフォークテイストを取り入れた名門アイビーリーグ系インディー・ロックバンドの系統に分類されていた。その分類は遠からずも外れてはいない。4人はニューヨークのマンハッタンの高級住宅街であるアッパーウエスト出身で、シンコペーションのリズムに乗せてニューイングランドの風習を歌にし、PVではカントリークラブ風のライフスタイルを登場させた。おまけに人気トーク番組『レイト・ショー・ウィズ・デイヴィッド・レターマン』で演奏した際には、クーニグはテリアが刺繍されたセーターを着ていた。クーニグは作り笑いを浮かべながら、「俺たちのスタイルはアメリカのセーター製造者たちのテクニックの進化にかかってるんだ」と言う。

ヴァンパイア・ウィークエンドの進化はそれなりのものだ。ザ・ストロークス以来6年ぶりの注目株として音楽シーンに衝撃を与えた2007年以来、彼らはスカやレゲエ、バイレ・ファンキ、中東のスタイルや、悪名高いオートチューン加工を取り込みながら、グローバルな音を独特なエレガントなポップとして生き返らせてきた。そして、ヴァンパイア・ウィークエンドの持ち味を失うことなく、さらに複雑なアルバムを仕上げた。デビューアルバムが評価されると、そのアーティストの2作目に対する世間の目はより厳しくなる傾向にあるが、彼らはそのプレッシャーの中でセカンドアルバム『コントラ』を巧妙に完成させたと言っていいだろう。

クーニグは、「ヴァンパイア・ウィークエンド は外部の評価をまったく気にせずにこのアルバムを作った」と話したが、彼らの出身についてあれこれ詮索する世論への反発が歌詞の中に見え隠れする。スカ風のシングル曲『Cousins』では、激しい軍隊風太鼓とギロの音が彼らの思いを代弁しているように聞こえる。『生まれた時から財産を与えられていたら、あとはそれを増やし続けるだけ』とクーニグは歌う。

上流階級のイメージは彼らの成功に付いて回り、米国で人気のブログ『Stuff White People Like』の運営者で同名の本の著者であるクリスチャン・ランダーは、彼らを『最も白人的な』バンドと呼んだ。この称号については彼らも不満があるようだ。イランから移民した両親を持つバトマングリは「彼のコメントは自意識過剰の多文化主義に向けてのものだ。僕に言わせれば多文化主義はもっと偶発的なものだ」と言う。クーニグもクリスチャンの書き方には不服なようだ。肩をすくめながら「本屋で手にしたけど、あまり笑えるもんじゃないね」と言った。

クーニグは、バンド結成以来ずっと付いて回ったカテゴリー分けに対する自然なリアクションとして、『コントラ』が生まれたと説明する。「物事には必ず対立や衝突がある。でも人々は全てを二者択一で片付けようとする。“こっち”か“あっち”のようにね。僕たちに言わせれば、音楽はそれだけじゃないんだ」。例えば『California English』で使用されているオートチューンは、クーニグの正確かつ早口のボーカルに対して真逆の効果を生んでいる。「よく耳にするエフェクトなんだけど、普通じゃない扱いをすることで、それが斬新になるんだ」。他のメンバーも賛同するように頷く。

彼らの美学の鮮度を保つための方法がひとつあるとしたら、それは、音を(セーターも)通常の文化的脈絡から外すことなのかもしれない。

原文へ(Time Out New York / 746 : Jan 14–20, 2010 掲載)

ヴァンパイア・ウィークエンドは2010年1月17日にThe United Palace Theaterで、18日にWebster Hallで、19日にはBowery Ballroomでライブを行った。

動画
・Bowery Ballroomでのライブの様子

関連リンク
「コントラ」日本語情報サイト(Hostess)

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翻訳 佐藤環
原文 クリスティーナ・ブラック

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